万葉集その百三十三(後の月)

「 秋の月はいうまでもなく美しさ極上。 
それも のちの月ともなれば一際きよく美しい。
ちよっと肌に冷たい夜気、すすきはほうけて みやまりんどうは色が濃い。
おさけのぐんとおいしい季節だし、人も恋しい季候である。」

(幸田文:月の塵より)


本年の後の月は10月23日にあたります。
母が煮る栗あまかりし十三夜」 (一茶)
詠まれているように後の月は「十三夜、豆名月、栗名月」とも
言い習わされてきました。

「 ももしきの大宮人の罷(まか)り出て
       遊ぶ今夜(こよひ)の月のさやけさ 」  
        巻7-1075 作者未詳


( 大勢の大宮人たちが役所を退出して宴を楽しんでいます。
今宵の月はまたなんと美しくさわやかなことでしょう)

さぁ、さぁ 酒盛りを始めましょう!

「 春日にある御笠(みかさ)の山に月の舟出づ
  風流士(みやびを)の飲む酒杯(さかづき)に影に見えつつ 」
    巻7-1295作者未詳


( 月が出た出た 月が出たのヨイヨイ、三笠の山に月が出た。
  あまり下界がきれいので
  さぞやお月さん飲みたかろ、サノヨイヨイヨイ。
  ありゃ! この伊達男の盃にお月さんが!)

 宴も終わり人々は家路につきます。
 皓々と輝く月光の下に見目麗しい貴公子が- -

「 み空行く月の光にただ一目
 相見(あひみ)し人の夢(いめ)にも見ゆる 」

  巻4-710 安都扉娘子(あとのとびらおとめ)


( あの美しい月の光でたった一目だけしか見ていないあの方なのに
 私としたら一体どうしたことでしょう。夢になんかあのお方のお姿を見て)

「花籠に月を入れて漏らさじこれを曇らさじと持つが大事な」 
     (閑吟集310:室町歌謡)


( 花籠に月(ほどにも輝く大切な男)を入れてその光を外に漏らすまい
 (噂にならない)としっかり抱きしめていくのが大切なのよ)

「愛人を花籠に封じ込める」とは美しくも雅やかな発想ですがこの歌謡は
「肉体的な男女間の表現と読むこともできる」 (大岡信) そうです。

  「菊痩せて雁が音ふとる後の月」     森川許六
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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:52 | 自然

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