人気ブログランキング | 話題のタグを見る

万葉集その百二十二(星の祭典)

東北三大祭の一つ「仙台七夕」は八月六日から三日間行われます。
今年の立秋は八月八日。
「七夕や 秋を定(さだむ)る 夜の初(はじめ)」 (芭蕉)  
と詠まれているように七夕は元々夏と秋の行合いのお祭りでした。

「 夕星(ゆふづつ)も 通ふ天道(あまじ)を いつまでか
      仰ぎて待たむ 月人壮人(おとこ) 」 
            巻10-2010 人麻呂歌集


( お月さん! 夕星はもうとっくに天道を往き来して光り輝いていますよ。
 牽牛織姫の逢瀬を見たくて先ほどからじっと上を仰いでいるのに
 一体何時まで待たせるつもり?
 早く気を利かせてその天道を渡ってあげなさいよ!)

「夕星」とは夕方にひときわ明るく輝く金星で「宵の明星」ともよばれています。

「月人壮士」は月を若い男に見立てた言葉で、月が天道(星が往来する道)を渡ると
二星の逢瀬が始ると考えられていたのです。

「 星はすばる。牽(ひこぼし)。明星(みやうじょう)。ゆうづつ。
   よばひ星をだになからましかば、そして。」 
              (枕草子 204段 清少納言)


よばい星とは流れ星のことです。

「婚ひ星」とも書き、夜、女性の寝所に忍び込む「夜這い」をもさしている
せいでしょうか?「よばひ星だけがなかったなら なお一層よいのに」と
清少納言は流れ星があまり好きではなかったようです。

「昴(すばる)」は一つにまとまる「統る(すべる)」からその名があります。

「肉眼では数個しか数える事が出来ませんが、実際には百数十個からなる不規則な
星の集合体で散開星団とよばれ、秋風が吹く頃小粒のダイヤモンドをばら撒いたように
見えます。太陽は生まれてから50億年、昴は生まれてまだ数千万年の宇宙に漂う
星の子供たちです。」
        (海老名博、えびなみつる共著 「メロスがみた星より」要約抜粋)

星の歌といえば「星空賛美の歌人」建礼門院右京太夫

「 何ごとも かはりたてぬる 世の中に
    ちぎりたがはぬ 星合の空 」 七夕歌集五一首の一 


「星合」という美しい言葉は牽牛、織姫の逢瀬から生まれました。

栄華をきわめた平家滅亡を目のあたりに体験した作者は二度と会うことが
出来ない恋人、平資盛(すけもり)を偲びながら過ごしています。

年に一度の短い逢瀬、普通ははかない契りだと思われていますが、
作者にとってそれすらも確かな約束事に思われるというのです。

「 星の恋 空には老も なきやらん」 
        蘭庚(らんこう:江戸中期の俳人)

by uqrx74fd | 2009-03-08 11:41 | 自然

<< 万葉集その百二十三(雲三態)    万葉集その百二十一(よせる波 ... >>