万葉集その百十七(立山:たてやま)

 「 正面の のびのびと大きいのが立山です
   その石の黒い岩峯の群   
  あれが剣岳
  あそこまで 遥かな山旅ですが
  ゆっくり歩いて行きましょう 」 
      ( 串田孫一 「山頂」より一部抜粋)


立山は古くは「たちやま」とよばれていました。
富士、白山と合わせて日本の三霊山と称される神の山です。

最高峰の大汝山(おおなんじやま:3015m) 主峰の雄山(おやま:3003m)、
富士の折立(おりたて:2999m)の三つの山からなり、雄山の山頂には日本で
一番高いところにある神社、雄山神社が鎮座まします。

 「 立山(たちやま)に 降り置ける雪を 常夏に
     見れども飽かず 神からならし 」 
              巻17-4001 大伴家持


( 今は夏の真っ盛りなのに 立山に降り積もった雪は消えることなく
  美しく輝いています。
 ずっと見続けていても見飽きることがありません。
 流石に神の山といわれているだけのことがありますね )

「神から」とは「族(うから)」「親族(やから)」「同胞(はらから)」などの語と同じく
血の繋がりがあることを示す古語ですが、ここでは真夏に白々と雪がある景色を
神の霊力とみた表現です。

746年、越中国守として赴任した家持は天空に聳え立つ立山連峰を
目のあたりにして その雄大な景色に驚嘆したことでしょう。

なお、深田久弥氏はその著「日本百名山:剣岳」で万葉集の
立山(たちやま)は「太刀山」であり本来は「剣岳」のことであるとされています。

「 立山が 後立山(うしろたてやま)に 影うつす
     夕日のときの 大きしづかさ 」  川田 順


後立山とは立山連峰に並行して黒部渓谷をはさんで連なる山脈で
後立山連峰とよばれ白馬三山をふくみます。
晴天のもと落日を背にして主峰雄山の黒い影が後立山に落ち、
夕日が低くなるにつれてその影は刻々と山の稜線へと伸びていくという雄大な景観です。

作者は1935年54歳の時、生涯の思い出にと日本アルプス登山を試み、途中で道に
迷いながらも苦心惨憺したすえに登頂を果たしただけに感激も大きく、眼前の光景は
到底人間の言語では表現しきれないと述べておられます。

 「 夕焼けて夏山おのが場に聳ゆ 」 飯田龍太               
[PR]

by uqrx74fd | 2009-03-08 11:36 | 自然

<< 万葉集その百十八(蓮)    万葉集その百十六(蓴菜:じゅんさい) >>