万葉集その百十五(カサブランカ)

 「 カサブランカ 百合の名 それは遠い街 」 金子皆子

この歌の「カサブランカ」には三つの意味が込められております。
「遠い街」はモロッコの港湾都市「カサ・ブランカ」。スペイン語で
「白い家」を意味します。
二つ目は映画の題名の「カサブランカ」。
永遠のスタンダ-ド・ソング「アズ・タイム・ゴ-ズ・バイ」が流れ
イングリッド・バーグマンとハンフリ-・ボガ-トの別れのラストシ-ンが
印象的な不朽の名作。 
そして最後は百合の花の名前です。

日本は百合の王国といわれており世界で約80種ある原種の17%が
日本産だそうです。
中でも古代から自生していて芳しい香りと大輪の花を咲かせる
「ヤマユリ」は世界中で知られており「カサブランカ」はその「ヤマユリ」の
交配種から生まれたものです。

「 道の辺(へ)の 草深百合の 花笑(え)みに
        笑みしがからに 妻と言うべしや 」 
              巻7-1257 作者未詳


( 道端の茂みに咲く美しい山百合の花。その百合が微笑みかけているように
  私はあなたと行きずりに ちよっと微笑かけただけなのです
  たったそれだけのことなのに、もうあなたの妻と決まったような事を
  おっしゃらないで下さいな)

相手が微笑みかけてきたのにつられて、つい微笑み返したことに対する恥じらいと
狼狽も感じられる歌です。

「 我妹子(わぎもこ)が 家の垣内(かきつ)の さ百合花
    ゆりと言へるは いなと言ふに似る 」 
              巻8-1503 紀長臣豊河


( あなたは家の垣根の中で咲いている高嶺の美しい百合の花です。
  求婚しても いつも「ゆり( 後でそのうちにね) 」と返事をするのは
  否だというのと同じことなのですね。でもまだまだ諦めないよ )

万葉集の百合は「ヤマユリ」が多く、他に「ササユリ」「鬼百合」がみられます。

その昔、神武天皇が皇后を選びたいと思っていたところ、百合の花が群生する
川のほとりで美しい乙女と出合い、たちまち一目惚れして結ばれたという伝説が
あります。(古事記)

その故事にちなんで毎年6月17日に行われる奈良・卒川(いざかわ)神社の
「三枝(さいぐさ)祭」は、三輪山から数千本のササユリを採り集めて神前の供え、
巫女たちが百合を頭にかざして舞を奉納するという華やかなお祭りです。

「 谷風や 花百合そ向き ま向きして 」  阿波野 青畝
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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:34 | 植物

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