万葉集その百九(躑躅:ツツジ)

「ツツジ」は漢字で「躑躅」と書き、極めて難解な文字です。
その由来は「羊この葉を食せば躑躅(てきちょく)として斃(たお)る。 
ゆえに名づく」(和名抄)からきていると言われております。

躑躅(てきちょく)とは「あがく、あしずりする」という意味で、
「羊がこの花を食べると躑躅(てきちょく)して倒れてしまう」

だから皆が有毒だと認識しやすいように
躑躅(てきちょく)=躑躅(ツツジ)としたわけです。

ただ、ツツジはレンゲツツジ以外は無毒なので、当初は同じツツジ科の
馬酔木(有毒)に躑躅があてられ、次第にツツジ類全般を「躑躅」と
するようになったともいわれています。

ツツジは櫻、椿、馬酔木などと共に繁栄と豊穣を予祝する聖なる花とされ、
また
「 つつじ花 にほえ 娘子(をとめ) さくら花 栄え 娘子- - -」
        (巻13-3309 柿本人麻呂集より一部抜粋)

 と美しい乙女をツツジと櫻に重ね合わせて最高の褒め言葉で讃えています。

 「 栲領巾(たくひれ)の 鷺坂山の 白(しら)つつじ
          我れに にほはに 妹に示さむ 」 
                 巻9-1694 人麻呂歌集


(真白なスカーフのような羽の鷺、
 その鷺の名を持つ鷺坂山(京都)に咲く白ツツジの花よ。
 お前の汚れなき色を私に染め付けておくれ。帰ってあの子に見せてやろう)

にほふ(匂ふ)とは「輝くような美しさ」をいいますが、ここではその美しい色を
自分の衣に染め付けて帰りたいとものだと願っています。

栲領巾(スカーフのようなもの)、鷺、白ツツジと純白のものが三つ取り合わされており、
ツツジの美しさとともに、「私も真っ白ですよ。旅の間に浮気などしていませんよ」と
言いたいのでしょうか?

 「 水伝う 磯の浦みの 岩つつじ
    茂(も)く 咲く道を またも見むかも 」 
                   巻2-185 作者未詳


( 水が伝い流れる池のほとり。岩と岩との間に、美しいツツジが咲き乱れています。
  これからは、この懐かしい道を再び見ることがあるだろうか?
  もうないだろうなぁ)

この歌は689年草壁皇子(父:天武 母:持統天皇)が28歳の若さで薨じ、
その一回忌に皇子の側近たちが詠った追悼歌の一首です。

明日香村の皇子の宮所(島の宮)には素晴らしい庭園があり、四季折々に花が
咲き乱れ、池には水鳥が遊び、皇子存命中華やかな宴が催されていました。
往時の賑やかな光景を思い浮かべるにつけ、一層寂しさが募ってきたことでしょう。

ツツジ類は花期が長く、3月にミツバツツジ、4月アカヤシオ、5月ヤマツツジ
ミヤマキリシマ、オオムラサキ、クルメツツジと華やかな花の競演を続け、
6月のサツキで締めくくります。

 「 つつじ燃え 遠(とほ)の白根に 雪残る 」   
                 草間 時光

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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:28 | 植物

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