万葉集その百四(堅香子の花)

堅香子(かたかご)とはカタクリの古名です。

冬が去り大地を覆っていた雪が消えるといち早く地上に芽を出し
可憐なオペラ色の花を咲かせます。
晴れた日に朝日を受けて開き、花片を極端に反り返らせ、
さながらイナバウァ-のようです。

夕暮れにはその花を閉じ、雨や曇りの日には開かない
お天気次第の気難し屋でもあります。

「 もののふの八十娘子(やそおとめ)らが汲み乱(まが)ふ
       寺井の上の 堅香子の花 」   
             巻19-4143 大伴家持


( 泉のほとりへ美しい乙女たちが三々五々、水桶を携えて集まってきます。
  そのかたわらにカタクリの花が咲き乱れて-- 何と美しいことよ )

雪国は長い冬からようやく待望の春を迎え、その喜びに溢れんばかりです。
こんこんと湧く清泉、入り乱れる乙女、群生する美しい花。
乙女たちの笑い声や水の音まで聞こえてくるような気がいたします。

カタクリの蜜は虫たちの大好物です。蜜蜂と共に蝶たちも群れ集まります。

「 はつ春の 蝶の舞ひゆく 森かげに
      さやかに咲ける かたくりの花 」    高橋達明


カタクリの命は短く、一ヶ月余り経つと花も葉も茎も跡形なく消え去ります。
そして次の春まで地下で眠りこけ
「春のプリマは眠り姫」と形容した人もいる(梶井重雄) そうです。

古代からカタクリ(片栗)は葉も花も球根も大切な食料とされてきました。
とりわけ片栗粉は現在でも料理の必需品とされていますが、その地下茎は
深く潜っていて大量の球根を掘り出すことは不可能なのです。

そこで同質の澱粉をもつジャガイモが代用され、片栗粉の名で売られております。

 「 片栗や 自づとひらく 空の青 」    加藤 知世子 

以上
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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:23 | 植物

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