万葉集その九十二(野焼き.山焼き)

 「古き世の 火色ぞ動く 野焼きかな」  飯田蛇笏

冬に野を焼き山を焼くことは古代では大切な農作業の一つでした。
人々は枯れた雑草や雑木を焼き払って害虫を駆除し、
残された草木灰を天然の肥料として蕎麦、粟、稗、大豆などを育てていました。

現在でも一部の地方では焼畑が行われていますが、奈良:若草山の山焼き、
九州:阿蘇の野焼きは早春の風物詩として全国的に知られております。


 「 冬ごもり 春の大野を焼く人は
    焼き足らねかも わが心焼く 」 巻7-1336 作者未詳


( 冬の野を焼く人は、野を焼くだけでは焼き足らないのでしょうか。
  私の心まで焼いてしまって。 あぁ切ないこの心 )

冬は万物が中に籠っていて、春になると自然が一斉に芽吹き出してきます。
まさに恋の季節です。

 「 おもしろき 野をばな焼きそ 古草に
    新草(にひくさ)交じり 生(お)ひば 生ふるがに 」 
              巻14-3452 作者未詳


( 楽しい思い出が一杯つまっているこの野原をそんなに急いで
  焼かないでおくれ。
  それに新芽もまだ出かかったばかりで可哀想ではないか。
  若草になるまで伸びるだけ伸ばしてやろうよ )

作者は古草を見ながら昨年の若草のもとでの楽しい逢引きを
思い出し「おもしろき」と表現したようです。

またやがて芽吹いてくるそのひそやかな命にやさしい目ざなしを
むけています。

「 野火(やか)は焼けども尽きず 春風吹いてまた生ず 」 

      白楽天(古原の草より)

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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:11 | 生活

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