万葉集その九十(ほよ:宿り木)

「ほよ」とは「宿り木」のことで冬枯れの木の上に丸い鳥の巣のような
緑の塊を付けています。

クリスマスの飾りにも使われ、この下にいる女性には
キスしてもよいという有難い木です。

一陽来復のきざしを宿す年越しの木(杉本秀太郎)といわれ、
刈り取った木の葉や茎は日増しに金色を帯び、
ゴールデンバウ(黄金の枝)とも呼ばれて世界的にめでたいものと
されています。

「 あしひきの 山の木末(こぬれ)の ほよ取りて
   かざしつらくは 千年(ちとせ) 寿(ほ)くとぞ 」 
       巻18-4136 大伴家持


( 山の梢のホヨを採って髪に飾るのは 
 千年の長寿をお祝いしてのことだよ )

古代人は冬の枯れ果てた中に残っている常緑のものに
永遠の生命が宿っていると信じていました。

宿り木の果実は真珠のように美しく、鳥たちが好んでついばみますが、
粘質の果汁は解けないままに未消化となり糸状で出てきます。

その糸が空中を遊泳しながら下りてきて、やがて木の枝や幹に引っ掛り、
次から次へと繁殖するのです。

世界の民俗を調べたフレーザはその著書「金枝篇」で
アイヌがヤドリギを万病の薬としたと述べており、
我が国の北日本、北陸一帯にかけてその影響が及んでいたのでは
ないか(中西進)と推定されています。

大和から越中にやってきた家持にとって「ホヨ」を頭にかざす習慣は
極めて珍しいものと思われたことでしょう。
 
「 冬のあいだ中 かれ枯れた 楢の樹に
  そのひと所だけ 青んでゐた やどり木の
  いまはこの目に 区別もつかずに
  すっかり すっかり 梢は緑に 燃えている 」

                    (伊東静雄 宿木より)

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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:09 | 植物

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