万葉集その八十三(紅葉狩)

 「 春は萌え 夏は緑に 紅(くれない)の
     まだらに見ゆる 秋の山かも 」 
         巻10-2177 作者未詳


四季とりどりの色合いの変化を身にしみて感じる日本人の
繊細な感性は古来からのものと思われます。
 
濃淡鮮やかな色が織りなす晩秋の秋。さぁ 紅葉狩です。

「 わが衣(ころも) 色どり染めむ 味酒(うまさけ)
     三室(みむろ)の山は 黄葉(もみち)しにけり 」
            巻7-1094 柿本人麻呂歌集


( あぁ- 素晴らしい! 
 神様を祭る三輪山はすっかり紅葉したことです。 
 私の着物も紅葉のような多彩で艶やかな色合に
 染めたいものですね )

 味酒:神酒(みわ)として神に供えることから
     三輪山(三室の山)に掛かる掛詞。
     三輪山(奈良)の神は「酒の神」といわれています。

紅葉狩には酒がつきもの。行く秋を惜しんでの酒宴です。

「 かくしつつ 遊び飲みこそ 草木すら
    春は生(お)ひつつ 秋は散りゆく 」 
             巻6-995 大伴坂上娘女


( さぁ 皆さん 今夜は思う存分飲んで楽しく過ごして下さい。
  草や木でさえ春には生まれ秋に散ってゆくのです。
  我々も短い人生を大いに楽しみましょう )

「 黄葉(もみちば)の 過ぎまく惜しみ 思ふどち
     遊ぶ今夜(こよひ)は 明けずもあらぬか 」 
               巻8-1591 大伴家持


( 紅葉が散ってゆくのを惜しみながら 
  気の合うもの同士で飲む酒の美味さよ。
  実に楽しい夜だ。時よ止まれ!)

「 林間に酒を暖めて 紅葉を焼(た)く 
  石の上に詩を題して 
  緑苔(りょくたい)を掃(はら)う」  白居易


この有名な詩句はよほど日本人に気に入られたとみえ、
古来から愛唱されて謡曲「紅葉狩」や「徒然草」など数多くの古典に
引かれています。
以来、散り紅葉を集めて焚き、酒を暖めるのは秋の風流とされました。

 「 紅葉には 誰が教へける 酒の燗 」 其角
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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:02 | 植物

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