万葉集その八十二(一夜妻:ひとよづま)

 「一夜妻」とは元々祭りの折に神と聖なる結婚をする舞姫すなわち
 「巫女」をいう言葉でした。


時代と共に「ただ一夜だけ契った女」「七夕の織姫星」「遊女」などを
意味するようになります。

万葉時代の「一夜妻」は男にもこの言葉が使われ「一夜夫」の字が
あてられることもあります。共に「ひとよづま」と読みます。

 「 我が門(かど)に 千鳥しばなく 起きよ 起きよ
       わが一夜妻 人に知らゆな 」 
              巻16の3873 作者未詳


( あらっ もう夜が明けて家の門口近くで沢山の鳥がしきりに
  「オキヨ オキヨ」と鳴いているわ。 
  あなた あなたっ もう起きてちょうだい。 ねぇ起きて。
  そして人に気付かれないよう様にそうっと帰ってちょうだいね )

一時の浮気心から男を引き入れた女が明け方の鳥の声に目を覚まし、
あわてて男をゆり起こしている様子が目に浮かびます。

「当時の生活状態を思わせる傑作」(折口信夫)です。

「 君さらば 巫山(ふざん)の春の ひと夜妻
     またの夜までは 忘れいたまへ」 
                     与謝野晶子


( さようなら あなた 
 巫山の春の故事のように 私は夢の中でのはかない一夜妻でした。
 またの逢瀬は来世ですね。お逢いできるまで さようなら。)
 
「巫山の春」とは楚の襄王が夢の中で巫山の神女と契った
という故事をふまえたもの。

相手は既婚の与謝野鉄幹、所詮かなわぬ恋と思われましたが、
ついに家を出て鉄幹のもとに奔った昌子は「ひと夜妻」ならぬ
正式の妻となりました。

 「 別(わかれ)はの 思ひや 胸の火の車 」 
                   在色(ざいしき)

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by uqrx74fd | 2009-03-08 11:01 | 生活

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