万葉集その八十(浜の真砂)

「 知らざぁ言って聞かせやしょう。
浜の真砂と五右衛門が歌に残せし盗人(ぬすびと)の
種は尽きねぇ七里ヶ浜 」
 
 「歌舞伎 弁天娘女男(めおの)白波 
 (通称:白波五人男弁天小僧)」


この有名な台詞は石川五右衛門の
「石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の種は尽きまじ 」
を下敷きにしたものです。

五右衛門が多いものの例えとした「真砂」を万葉人は
「まなご」とよび「恋心の無限の激しさ」を表わすのに用いました。

「八百日(やほか)行く 浜の真砂(まなご)も 我(あ)が恋に
   あにまさらじか 沖つ島守 」 巻4の596 笠郎女


( 通り過ぎるのに八百日もかかる廣い砂浜だって私の恋の重荷に
  比べればとてもとても敵うまいね。 沖の島守さんよ )

とてつもない数字を引き合いに出して恋の激しさを誇張した歌。
沖つ島守は恋の相手 大伴家持を意識しています。

「 相模道(さがむじ)の 余綾(よろぎ)の浜の真砂なす
      子らは 愛(かな)しく 思はるるかも 」 
           巻14の3372 作者未詳


( 相模路の余綾の浜のような真砂のような子 
  あの子をむやみやたらにいとしく思われてならないよ)

余綾の浜:大磯から国府津にかけての浜辺
ここでの「真砂」はこまかく愛らしい砂と最愛の人を示す
「愛子(まなご)」の意味を重ねています。

「 浜の真砂に文(ふみ)かけば
     また波が来て 消しゆきぬ
     あはれ はるばる我がおもひ
     遠き岬に 入日する  」  
      
       ( 海の入日:木下杢太郎 )

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by uqrx74fd | 2009-03-08 10:59 | 自然

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