万葉集その七十七(撫子:なでしこ)

「なでしこ」はその清純で可愛い姿が「愛すべき子供を撫でる心地がする」
 といったところからその名があります。 古くから 

「 草の花は なでしこ 唐のは さらなり 
 大和のも いとめでたし 」(  枕草子)


とあるように日本原産のものを「大和撫子」「河原撫子」、
中国伝来の石竹を「唐撫子」と呼んで区別していました。

 「 野辺(のへ)みれば なでしこの花咲きにけり
     我(あ)が待つ秋は 近づくらしも 」 
             巻10の1972 作者未詳


( 野原を見ると撫子の花がもう一面に咲いています。
  私が待ち焦がれている秋がすぐそこまで来ているようです )

 「 なでしこが 花見るごとに娘子(おとめ)らが
      笑(え)まひの にほひ 思ほゆるかも 」  
           巻18の4114 大伴家持


(なでしこを見るたびに あの愛しい娘子の笑顔の
 あでやかさが思われてなりません)

妻を都に置いてきた家持が越中の屋敷になでしこや
百合の花を植え、それに重ねて妻を偲んだもの。
 「にほひ」とは笑顔の匂い立つような美しさをいいます。

「大和撫子」が優しい中にも芯の強さを秘めた日本女性を表徴する
言葉となるのはずっと後のことで江戸中期以降のようです。

撫子の属名は「ダイアンサス」といい聖なる花を意味します。
ヨーロッパでは古代ギリシャ時代から栽培され、
教会の飾り花に用いられました。

近代になり日本や中国原産の種子とヨーロッパ原産の種子との
勾配が重ねられ、遂に19世紀、今をときめくカーネーションが
誕生しました。

「 撫子や ちひさき花の けだかさよ 」 
                  上村 白之 

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by uqrx74fd | 2009-03-08 10:56 | 植物

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