万葉集その七十五(仲秋の名月)

 「 名月を 取ってくれろと 泣く子かな 」 一茶

中秋の名月は陰暦の八月十五日の十五夜、 今の暦でいうと
九月十七日前後になります。

別名「芋名月」ともいい、元はと言えば十五夜のお供えは
芋や農作物の収穫儀礼であり月見の行事は極めて古い農耕文化の名残です。

「 白露を 玉になしたる 九月(ながつき)の
   有明の月夜(つくよ) 見れど飽かぬかも 」 
             巻10の2229 作者未詳


( 月の光が白露を美しい真珠のように輝かせている。
  この美しい月、いくら見ても見飽きないことです。
  とうとう夜明けになってしまったよ。有明の月だねぇ)

夜明けになっても空に残っている月を「有明の月」といいます。

「 月夜(つくよ)よし 川の音 清し いざここに
   行くも 行かぬも 遊びてゆかむ 」 
                巻4の571 大伴四綱


( 月夜も良いし 川の音も清々しい。 
  さぁここで都へ行く人も筑紫に残る人も
  歓をを尽くして心行くまで楽しみましょう )

730年大宰府の長官であった大伴旅人は都に栄転します。
出発前の送別会のことで飲めや歌えの賑やかな宴が想像されます。

「 けふは 仲秋明月 初恋を偲ぶ夜
     われら万障繰り合わせ よしの屋で独り酒をのむ

     春さん 蛸のぶっ切りをくれえ それも塩でくれえ
     酒はあついのがよい  それから枝豆を一皿  」
                 
         (井伏鱒二 逸題より)
 

 註: 「われら」: 「ひとり」のことをユーモラスに言ったもの。 
     「春さん」:  よしの屋の主人
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by uqrx74fd | 2009-03-08 10:54 | 自然

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