万葉集その七十四(秋風)

東風(こち)が春 南風(はえ)は夏の風であるように、
秋は西、西南の風が多く「秋の風」「素風(そふう)」「金風」などと
よばれます。

「 秋風は 涼しくなりぬ 馬並(な)めて
   いざ野に 行(ゆ)かな 萩の花見に 」 
            巻10の2103  作者未詳


( 秋風が涼しくなったなぁ。
  さぁ皆さん馬を並べて野に出かけよう。
  萩の花も 今や見頃だろう )

秋風の「涼し」はその風を快く思い
「寒し」はそれをわびしく思う気持を表わします。また

 「 石山の 石より白し 秋の風 」 ( 芭蕉 ) 

のように秋の寂寥感を「白い風」と表現することもあります。

「娘子(おとめ)らが 玉裳(たまも)裾(すそ)引(び)く この庭に
      秋風吹きて  花は散りつつ 」 
          巻20の4452 安宿王(あすかべのおうきみ)


( 乙女たちが美しい裳裾を引いてそぞろに歩くこの庭。
 秋風が吹いて萩の花がはらはらと散り続けています。
 なんと美しい優雅な光景でしょう)

この歌は宮中紫寝殿で天皇、上皇の宴があった時に詠われたもので
玉裳、秋風、花を取り合わせて酒宴を賛美したものです。
宮廷の女官たちが長い裳の裾を引きずるようにして歩く優美な姿は、
男性達をうっとりとさせたことでしょう。

「 秋風の 吹き扱(こ)き敷ける 花の庭
        清き月夜に 見れど飽かぬかも 」 
            巻20の4453 大伴家持


( 秋風が吹きしごいて 庭がまるで花絨毯のようです。
  それに月の光の清々しいこと。
 いくら見ても飽きることがないすばらしい夜ですね )

まさに一幅の王朝絵巻。

九月とは云え日中の暑さは今しばらく続きそうです。

「 あかあかと 日は難面(つれなく)も 秋の風 」   

                  芭蕉

[PR]

by uqrx74fd | 2009-03-08 10:53 | 自然

<< 万葉集その七十五(仲秋の名月)    万葉集その七十三(潮騒) >>