万葉集その七十一(夕立)

「 乾坤(けんこん)に 一擲(いってき)くれし大夕立 」 
               (安積素顔)


ここ一番の大勝負に賭けることを「乾坤一擲」といいますが、
ここでは「天地を一撃」という意味です。

夏の夕方、一天にわかに掻き曇り墨を流したような雲が
空を覆っていきます。
突然稲妻が走り、天を轟かす雷(いかずち)の音。

やがてポツッ ポツッと大粒の雨が降り始めたかと思うと
たちまち滝のような激しい雨が降りそそぎ
乾ききった地面はみるみるうちに洗い浄められていきます。

つかの間の天からの恵みの雨です。

 「 夕立の雨うち降れば 春日野の
     尾花の末(うれ)の 白露思ほゆ 」 

     小鯛王(こだいのおほきみ) 巻16の3819


( 夕立が降ると涼しくていいねぇ。
 でも、あんなに激しい雨に打たれて春日野の尾花は大丈夫だろうか。
 露を含んで頭を垂れているかしら。
 それともかえって生き生きとしているかもしれないなぁ)

 「尾花が末の白露 」はある女性を連想しており、
 「激しく降る雨ゆえに女性を訪れる事が出来ないのは残念だなぁ」
 という気持が込められているようです。

 驟雨一過。暑さでぐったりと頭を垂れていた草花は元気を取り戻し、
 木の葉も緑の鮮やかさを増して喜びにあふれています。

 やがて薄墨の雲は次第に消え去り後には美しい夕焼けの空

「 夕立の雲もとまらぬ夏の日の 
         かたぶく山にひぐらしの声」 

           式子内親王  (新古今和歌集)

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by uqrx74fd | 2009-03-08 10:50 | 自然

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