万葉集その六十九(浜木綿:はまゆふ)

浜木綿は茎の先に咲く白い花が神に祈る時に使う木綿の幣(ぬさ)に
似ているところからその名があります。

柳宗民氏によると

「祖先は氷河時代の生き残りの植物でアフリカ大陸に生き残ったものが
多種分化したもの。
その果実はコルク質に覆われていて水に良く浮き海流に流されアフリカから
インド洋へ。 まず辿り着いたのはオーストラリア、さらに北へ流され
東南アジアから太平洋の島々、ハワイから小笠原諸島そして黒潮に乗って
日本の暖地太平洋岸に居ついたのがわが国の「ハマユウ」である。
なんと壮大な自然が織りなすロマン 」 と述べられています。(日本の花より)

690年 持統天皇は紀伊に行幸され一行は熊野の地にさしかかります。

「 み熊野の 浦の浜木綿 百重(ももへ)なす
       心は思(も)へど 直(ただ)に 逢はぬかも ) 
               巻4の496 柿本人麻呂

熊野:三重県牟婁(むろ)郡

( 黒潮の洋々たる海辺、
  浜木綿の葉が幾重にも重なり合い白い花は実に美しい。
  このような素晴らしい光景なのに私の心は貴女にじかに会えないので
  一向に晴れやかになりません。
  まるで浜木綿のあの大きな葉が重なり合っているような気持ちです。
  貴女に対する熱い想いはあの黒潮の海のように広くて大きいのですが-)

当時、人麻呂は朝廷の美しい官女に恋をしていたようです。

浜木綿は葉が大きく万年青(おもと)に似ているので
「浜おもと」ともよばれ百合に似た甘美な香りを漂わせます。

浜木綿をこよなく愛された犬養孝博士は志摩半島和具の
沖の大島を訪れ次のように書き残されました。

「 ある年の盛夏、島に渡ってみたが、ここは全島二三本の樹木の他は
  すべて浜木綿の自生群落で、うちつづく白花の乱れの間に
  赤い鬼百合の花が点々。
  白花の芳香の花園に一人いるようで、遠く見渡す海の青はいちだんと
  鮮やかであった」  ( 「万葉とともに」より一部要約抜粋) )

   「 暁の 浜木綿の香り 一人占む 」  鈴鹿野風呂 
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by uqrx74fd | 2009-03-08 10:48 | 植物

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