万葉集その六十七(鳴神)

狂言「神鳴(かみなり)」にはユーモラスな雷公が登場します。

雲から足を踏み外して地上に落ち、ひどく腰を打ったので藪医者に
特大の鍼で治療をしてもらいながら 
「あ、痛い!アイタッ、アイタッ」と泣き出すのです。

しかも「ゴロゴロ」ではなく
「光り(ヒッカリ) ヒッカリ グラワリ グラワリ グラワ ドゥ」
という大音響を轟かせて落ちてきます。

狂言ではこのような愉快な雷さまも古代人にとっては
強い威力、霊力を持った存在で「いかずち」「鳴神」とも呼んでいました。

「 天雲に 近く光りて 鳴る神し
   見れば 畏(かしこ)し 見ねば 悲しも」 
               巻7の1369 作者未詳


( 稲妻がピカーッと光りゴロゴロと大きな音を響かせながら
  雷が鳴っています。 雷さまをじかに見ると怖いなぁ。
  でも見ないと何処へおちてくるか分らないから
  これはこれでまた心配ですよ)

この歌の作者はかなり高貴な身分の男に愛されているのでしょう。
会えば会ったで恐れ多く、逢わないでいたら見放されるそうな
気がするという女心の不安で切ない気持ちを鳴神に重ねて
歌ったものです。

 「鳴る神の 少し響(とよ)みて さし曇り
  雨も降らぬが 君を留めむ」 
            巻11の2513 作者未詳


( 雷がちよっとだけ鳴って、空がかき曇って雨でも降って
  くれないかなぁ。
  そしたらあなたをお引止めできるのに)

雷に事寄せて男に甘えた歌です。

男は「ずっといて欲しいなら雷なんか持ち出さないで
あなたの口から離したくないと言って頂戴」と少しすねた歌を
返しています。

「雷光」を「稲妻」ともいいますが、稲の配偶者という意味です。

雷は稲の結実期に多いので雷光が稲を実らせると信じられていたために
生まれた言葉で 「 稲光は豊年のしるし 」という諺もあります。

「 雷に 水を打たせて 夕涼み 」 
              (江戸時代の川柳)

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by uqrx74fd | 2009-03-08 10:46 | 自然

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