2009年 03月 08日
万葉集その二十七(雁が音:かりがね)
渡ってくる鳥は色々ありますが特に日本人に印象深かったのは雁でした。
古代の人はその秋、渡ってきた雁の声を聞き漏らすまいと熱心に耳を傾けました。
初めて渡来した雁を「初雁」 その声を「雁が音」という美しい言葉で表し、
そしていつの間にか「かりがね」は雁の別名となったのです。
雁はその名のごとく「グヮングヮン」とか「カリカリ」と心に染透るように鳴きます。
またその整然と空を渡るさまは神々しささえ感じさせ「天つ雁」とか
「遠つ人、雁」とも呼ばれ霊鳥とされていました。
「さ雄鹿の 妻どふ時に 月をよみ
雁が音聞こゆ 今来(く)らしも 」
巻10の2131 作者未詳
「月をよみ」月が良いという意味で
( 皓々と光があたりを照らして 良い月夜だなぁ。
妻を求めて雄鹿が鳴いている。
あれっ 遠くから雁の鳴き声まで聞こえてきたよ。
今年も初雁がやって来たらしいなぁ。
まるで鹿と雁のデユエットだね )
「 さ夜中と 夜は更けぬらし 雁が音の
聞こゆる空ゆ月渡る見ゆ 」
巻9の1701 作者未詳
( 恋しい人のもとへ行きたいと思いながらどうしても行けなかった。
かれこれ思い悩んでいる内にとうとう真夜中になり夜も更けてしまったなぁ。
あぁ鳴き渡っていく雁の声が聞こえる。
空を見上げるとお月さんも西のほうへ渡って行くよ。)
月に雁、この歌を口ずさむと学生唱歌「秋の夜半」を思い出します。
「 秋の夜半の み空澄みて 月の光 清く白く
雁の群れの 近く来るよ 一つ 二つ 五つ 七つ 」
そうそう、この歌の原曲はウエーバの「魔弾の射手」序曲でした。
秋の夜長にオペラでも如何ですか?
by uqrx74fd | 2009-03-08 10:06 | 動物