万葉集その八(月の船)

 「 天(あめ)の海に 雲の波立ち 月の船

       星の林に  漕ぎ隠る見ゆ 」  

         巻 7-1068  柿本人麻呂歌集
 

この歌は天を海に、雲をその海に立つ波にたとえ、
月の船がそこを滑るように進み、
やがて輝く星の中に隠れて行くさまを詠んだ歌です。

純然たる天体の光景に想像力の翼を広げた叙景歌ですが、
万葉人はなんとファンタジックな想像をするのでしょうか。

初めてこの歌に出会った時「月の船」とはどんな船かな?と疑問に思いました。
その後、「奈良県立万葉文化館」を訪れ、この歌にちなんだ素晴らしい絵に
出会いました。

上田勝也画伯 (1944生 東京芸大大学院終了 日展会員) の作品です。
 
そこには 星が輝く天空の中、雲の間に三日月が浮かび、その下端に
眼のさめるような貴公子が手に勺を持ち、ゆったりと月にもたれて座っていました。
「ああ、これが万葉人のフアンタジ-だったのだなぁ」と納得したことでありました。

上田画伯は

「この歌に最初に出会った時、すぐ情景が目に浮かび、イメージがどんどん
 膨らんでいきました。
 当時の天空へのロマンが1200年余も後の私を現代の感覚と少しも変わらぬ
 時代を超えた新鮮さで幻想の世界へ誘ってくれました。」 

と述べておられています。

月に因む乗り物といえば、映画「 E.T 」。
少年が大きな月を背景にして自転車で天空を翔る名場面が思い出されますが、
それをはるかに超えた万葉人の雄大な想像力にはただただ驚くばかりです。
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by uqrx74fd | 2009-03-08 09:47 | 自然

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