万葉集遊楽その三百七十一(白つつじ)

( 白つつじ 学友 n.f 君提供)
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( 根津神社にて )
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( 同上 )
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( 六義園にて )
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「山の上の 躑躅の原は 莟(つぼみ)なり
     山ほととぎす 鳴くときにして 」 島木赤彦


我国自生の植物である「つつじ」は種類が多く古くは30~50種、江戸時代末期には
盆栽の流行により500種類を超えたとも言われています。(現在は300~350?)
万葉集では9首のつつじ、即ち白つつじ(3首)、岩つつじ(2首)、丹つつじ(1首)、
単なる「つつじ」(3首)が詠われていますが、現在の「どの「つつじ」に当たるのか」を
特定するのは極めて難しいようです。
古代は野性のものばかりでしょうから、「ヤマツツジ」とする説が多く、
白つつじは「ドウダンツツジ」あるいは「シロヤシオ」(白八入)とする説もあります。

「八入」(やしお)は、何度も色を重ねるという意味を持つ染色用語ですが、
「にほえ娘子(おとめ)」と詠われているイメージには小さな「ドウダン」よりも
大ぶりな花を咲かせる「シロヤシオ」の方がふさわしいように思われます。

「 風早(かざはや)の 三穂の浦みの 白つつじ
   見れどもさぶし なき人思へば 」 
                        巻3-434 河辺宮人

( 風が激しく吹く三穂の浦に咲く美しい白つつじ。
 この地で亡くなった女性のことを思うと、いくら見ても心がなごまないよ。)

三穂の浦は和歌山県日高郡美浜町三尾の海岸とされています。
711年、作者は旅の途中、かって美しい娘が溺死して白つつじに
変身したと伝えられている故地を訪ねました。

今も変わらずに咲いている白つつじを見ながら古に思いを馳せている作者。
花の白さと幻想が一体となり、さらに清純な乙女の面影を連想させる一首です。


「 をみなへし 佐紀野に生(お)ふる 白(しら)つつじ
    知らぬこと以(も)ち 言はれし我が背 」
                           巻10-1905 作者未詳


( おみなえしが咲きにおうという佐紀野に生い茂る白つつじではないが
 自身がつゆ知らぬことで、人に言い騒がれたあの方よ )

佐紀野は平城京北あたりの野 
「をみなへし」は「咲く」と「佐紀(さき)」に懸けた枕詞で、
「白つつじ」も「「知らぬ」の「しら」を掛けています。

お互い清い関係なのに周囲からあれこれと噂を立てられている二人。
「あの方はきっと迷惑しているでしょうね」と相手を気遣っている可憐な女性です。
「我が背」と言うからにはその乙女は心の奥底で男に恋心を抱いているのでしょう。

なお、「佐紀野」を「咲く野」と訓む説もあり、この場合は固有名詞ではなく
単に「おみなえしが咲く野の白つつじ」と「知らぬ」に掛かる序になります。

「 白つつじ影かと見えるうす紅の
      ほのかな色に 花々はにほふ 」 片山廣子


『 白つつじは朝の花が美しい。
  咲きたての花に近く眼を寄せてみると、ほのかな紅が芯の深みにひそんでいることがある。
 「影かと見える」という、あえかな色の捉え方も、白つつじのこまやかな
 花の色の、光りへの反応をよくあらわしている。
 咲きたてのつつじの花のつややかな花びらの可憐さを、間近にみるのもじつに美しいのである 。』   
                             ( 馬場あき子 花のうた紀行 新書館より )

「傘ふかう さして君ゆく おちかたは
        うすむらさきに  つつじ花咲く 」  与謝野晶子


ツツジ類は花期が長く、3月にミツバツツジ、4月アカヤシオ、
5月ヤマツツジ、ミヤマキリシマ、オオムラサキ、クルメツツジと
華やかな花の競演を続け、6月のサツキで締めくくります。

( シロヤシオ yahoo画像検索より )
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( ドウダンツツジ 同上 )
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by uqrx74fd | 2012-05-13 18:20 | 植物

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