万葉集その三百九十(土針=メハジキ)

( メハジキ yahoo画像検索 )
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( 同上 )
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古代、土針(つちはり)とよばれた植物は現在のメハジキとされています。
各地の野原や道端に生えるシソ科の二年草で茎は四角。
直立して高さ50㎝~1mに成長し、夏から秋にかけて葉の付け根に紫がかった
ピンク色の唇形の花を咲かせます。

「めはじきや 恋のいろはの 目をつくる 」 椎花 (麻田駒之助)

「メハジキ」は「目弾(はじ)き」という意味で、子供が茎を短く切って瞼の間に
弓のように張りつけ、目を開かせて遊んだことに由来するそうです。

「 我がやどに 生(お)ふる土針(つちはり) 心ゆも
    思はぬ人の 衣(きぬ)に摺(す)らゆな 」
                               巻7-1338 作者未詳

( 我が家の庭に生えている土針よ。
 お前を本気で思ってもいない人の衣の摺り染めに使われてはなりませんよ。 )

土針の葉は緑色の染料に用いられましたが褪せやすいので、移り気が多い男を
連想させています。

母親が娘に
「 浮気心で近づいてくるような男と関係を持ってはいけませんよ。
心からお前を愛してくれる人と付き合いしなさいよね 」と諭した一首と
思われますが、

娘に恋をしている男が
「 遊びで口説いてくる男と関係なんか持ったらだめだよ。
真剣なのは俺なのだから 」と訴えている歌とも解釈できそうです。

「心ゆも」は本気での意。

万葉集での「つちはり」はこの一首のみですが、
古くから難解植物の一つとされ、メハジキのほか ツクバネソウ、エンレイソウ、
レンゲソウなど諸説ありましたが、これらは人家の付近に生える植物ではなく、
摺り染めにも適した花ではないのに対し、メハジキは福島県などで緑の染色に
用いられたという記録があり、また、ツチハリ、ツチウリ、ツチバレ、チチハリと
呼ぶ地方があることから現在では最有力視されています。

「 いかでかは ゆきて折るべき 色いろに
     むらごに にほふ つちはりの花 」  経信母集


「いかでかは」 : なんとかして どうやって
「色いろ」 : 色と 、いろいろを掛ける
「むらご」 : ところどころに濃淡の差がある

( 色とりどりに咲いている土針の花
 香に加えたいのですがどこへ行けば手折れるのでしょうか )

古代の女性は色々な花を乾燥させて混ぜ合わせ、百和香という香料を作り、
衣類に焚き込めたり、匂袋に入れたりしていました。
その花の中に「土針」を加えた珍しい一首です。

なお、「メハジキ」は「益母草(やくもそう)」すなわち「母親に役に立つ草」の別名があり、
葉や茎を乾燥させたものを煎じて、産前産後の婦人用薬や利尿薬として用いられている
漢方の重要な薬草の一つとされています。

「 めはじきの 瞼(まぶた)ふさげば 母がある」 長谷川かな女
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by uqrx74fd | 2012-09-22 19:45 | 植物

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