万葉集その四百七十五(荒れたる都)

(平城京第二次大極殿跡)
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( 同 礎石 )
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( 大極殿鴟尾 )
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( 大極殿から朱雀門をのぞむ )
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( 大極殿前で整列する宮人 )
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(  朱雀門説明板   )
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( 復元された宮内省 )
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( 同 説明板 画面をクリックすると拡大できます )
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( 大極殿壁画  )
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740年、恭仁京遷都の詔が出された翌年、早々と平城京の大極殿解体移設、
東西の市移転、五位以上の貴族全員に対する移住命令と慌ただしく動き、
平城京は瞬く間に荒廃してしまいました。
古代、都や寺社が移転する際には、資材の有効活用と費用節約のため
建物を解体、再使用していたので、その跡地は草茫々、荒れ放題となったのです。

旧都には東大寺、興福寺、元興寺、春日大社などの大寺社。
住人は僧侶、神官、農民、そして官人たちの女子供、老人。
居住施設が整わないので官人たちは単身赴任だったようです。
恭仁京は奈良と京都の境目にあり、徒歩で日帰りが可能な距離でしたが、
宮仕えの悲しさ、そう簡単に帰宅する訳にもいかなかったことでしょう。

「 紅(くれなひ)に 深く染みにし 心かも
   奈良の都に 年の経ぬべき 」
                       巻6-1044 作者未詳


( 紅に色深く染まるように深く馴染んだ気持ちのままで、私はこれから先
 この奈良の都で歳月を過ごせるのであろうか )

都振りの朱色の建物。
颯爽とした貴公子や官人の佇(たたず)まい。 
華やかな衣装をまとった女官たち。
喧噪たる市の賑わい。
職人たちの槌打つ音。
どれもこれもみな消えてしまった。
深く染みこんだ昔の面影を抱いたまま、これから先を生きてゆかなくてはならないのか。

残された老人のしみじみとした感慨です。

「世間(よのなか)は 常なきものと 今ぞ知る 
  奈良の都の 移ろふ見れば 」  巻6-1045 作者未詳

( 世の中は何と無常なものかということを、今こそ思い知った。
 この奈良の都が日ごとにさびれてゆくのを見ると。)

仏教的無常観が生まれていたことを窺うことが出来る一首です。
新都建設のために徴用された労働者は5500人とも言われ、庶民に新たな負担を
強いることにもなりました。
日常の生活でさえ苦しいのに働き手を取られ一体どうすればよいのだろう。
人々の怨嗟の声も強かったようです。

「 岩つなの またをちかへり あをによし
     奈良の都を またも見むかも 」
                    巻6-1046 作者未詳

( また若返って 大いに栄えたあの奈良の都を再びこの目で見ることが
  出来るのであろうか。
  いやいやそんなことはありえないことだ )

「岩つな」は蔓性の植物で蔓が這い上がりまた元のところに戻ってくる習性があるので
「またをちかへり」の枕詞となっています。 

「 人間若返ることなど出来っこない。
  都を元に戻すことも同じこと。
  あり得ない、あり得ない。」
と諦めの気持ちが強くこもります。

ところが、現実にはあり得たのです。
無計画に事を急いだため資金と人員が不足し、1年経過した後も大極殿はおろか
宮垣すら完成させることが出来ず、ついに744年、恭仁京の造営を中止。
翌745年再び奈良の都に戻ることになりました。

740年に伊勢、美濃など彷徨の旅にはじまり、恭仁、紫香楽、難波とさまよい続けた5年間。
天皇の自律神経失調のため、あるいは父、天武の壬申の乱の足跡を辿り、
新しい生命力を得ようとした、など色々な憶測がなされていますが、
その行動は未だに謎とされています。

そして752年、人力と財物の限りを尽くした大仏開眼。
壮大な文化の華が開き、悲願を果たした聖武天皇は孝謙女帝に譲位(756年)。
僧、道鏡が実権を握った政治は乱れに乱れました。
それでも28年間、平城京は存続しましたが、遂に桓武天皇の時代の784年に長岡京、
続いて794年平安京遷都となり再び奈良に都が戻ることがありませんでした。
それから1220年を経た現在、平城京の復元工事が続けられておりますが、
大極殿、朱雀門、宮内省のみ完成。
都全体を復元するには途方もない年月と資金が必要なようです。

   「 揚雲雀(あげひばり) 折しも平城宮址かな 」 勝又一透
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by uqrx74fd | 2014-05-09 07:43 | 生活

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