万葉集その四百七十七(能登の国の歌:酒屋)

( 越中五箇山菅沼集落 )
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( 同上、食事処 )
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( 輪島 白米千枚田 )
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( 輪島朝市 )
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( 同上 )
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( よしが浦温泉 下の建物はランプの宿 )
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( 能登の酒 )
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( 同上 )
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「 粕湯酒(かすゆざけ) わづかに体あたためて
       まだ六十(むつとせ)に ならぬ憶良か 」   土屋文明

古代の庶民の酒といえば粕湯酒、即ち酒の粕を湯で薄めたものでした。
山上憶良の貧窮問答歌(巻5-892) にも冬の寒い日、「粕湯酒うちすすろひて」
体を温めていたことが詠われていますが、アルコール分は近年の清酒粕(平均8%)から
推定すると湯で割って1%位でしょうか。
とても酒とは言えない代物ですが、貴族や官人、金持ちが愛飲していた濁り酒や
清酒(すみ酒)は高価で庶民には高根の花。
とりわけ清酒は濁り酒を絹布で何度も漉したものですから、さしづめ現在の
超高級大吟醸といったところか。
濁り酒や酒粕は金さえあれば容易に手に入れることが出来たようですが、
都から遠く離れた能登の片田舎にも酒屋があったようです。
どのような酒を売っていたのか不明ですが、次の歌は酒を盗もうとして
とっ捕まり,怒鳴られているドジな男を周りの者が囃したてているというものです。

(長歌訓み下し文)

「 はしたて  熊木酒屋に      
  真罵(まぬ)らる 奴(やっこ)    
  わし                
  誘(さす)ひ立て           
  率(ゐ)て来(き)なましを      
  真罵(まぬ)らる 奴(やっこ)   
  わし 」             
                   巻16-3879 能登の国の歌

(訳文)

    ( はしたて 熊来の酒蔵で 
      どやされている どじな奴(やつ)
     わっしょい
     引っ張り出して
     連れてきてやりたいんだけどなぁ。
     もたもたして、まだ怒鳴られている間抜けな奴 ) 
     わっしょい 
                              巻16-3879 能登の国の歌
(一行ごとの訓み下しと語句解釈)

「 はしたて 」 
  「はし立て」の「はし」は榊や杉、檜など霊力があるとされた木の枝のことで、
  土地の境界に立てると邪神の侵入を遮ると信じられていた一種のお呪(まじな)いです。
  当時土地の境界を「隈(くま)」といったので「熊木(くまき)」に掛かる枕詞と
  されています。

「 熊木酒屋に 」

  「熊来」は能登湾西岸の石川県鹿島郡中島町あたり
  「酒屋」は酒蔵 ここでは酒造りをしている店

「 真罵(まぬ)らる 奴(やっこ) 」

    「まぬらる」 罵(ののし)ると関係がある言葉といわれ「怒鳴り倒されている」
    「奴」   どじな奴(やつ)

「 わし 」         囃言葉   (わっしょい)


「誘(さす)ひ立て」       こちらへ来るように誘い 
   
「率(ゐ)て来(き)なましを」 
   
   「率(ゐ)て」は連れてくる
   連れてきてやりたいんだけどなぁ。

「真罵(まぬ)らる 奴(やっこ) 」  

   もたもたして、まだ怒鳴られている間抜けな奴よ

「 わし 」         わっしょい 

何人かの若者がふざけて酒を盗みに入り、店番に見つかった。
一人だけ逃げ遅れて捕まったが、店番は女だったか。
女に捕まるようではますますドジ。
と仲間で囃しています。

「 実際は仲間の若者たちが平謝りに謝って連れ出したあとの騒ぎの中での歌で
  あるかもしれない。
  昔はこの種の行為には寛大であったらしい。」( 伊藤博 万葉集釋注) 」

万葉唯一の酒屋という言葉。
当時、能登半島一帯は朝鮮と密接な関係があったので大陸の進んだ酒造技術も
伝わっていたと思われ、村人も折りにつけ酒を飲むことがあったのでしょう。

この歌は囃言葉の合いの手が二度も入り、陽気なお祭り騒ぎ。
能登に伝わる民謡だったのかもしれません。

「 いさざ網 積みて船出る 熊木川 」 南恵子

               「いざさ」はシロウオ、踊り喰いが有名
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by uqrx74fd | 2014-05-23 07:10 | 生活

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