万葉集その四百九十六 (秋の明日香路)

( 国営飛鳥歴史公園 萩の群生 )
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( 同上 すすきの穂も美しく靡く )
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( 明日香川 )
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( 明日香 稲渕の棚田 )
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( 同上 彼岸花 )
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( 同上 案山子 鯉のぼり)
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( 同上  月が出た 出た )
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( 同上  村の子供たち )
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( 同上 巨大な金太郎)
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( 同上  村の鍛冶屋 )
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(  同上  竹トンボ )
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今日は9月23日、秋分の日。
近鉄吉野線飛鳥駅に降り立つと何処からともなく金木犀の香りが漂ってきました。
秋晴れのもと、心地よいハイキング。
まずは国営飛鳥歴史公園をめざします。
多武峰の山々を背景にした石舞台。
周囲に群生する萩と薄が見頃なのです。
明日香川の流れの音も耳に心地よく響いて参ります。

「 明日香川 行(ゆ)き廻(み)る岡の 秋萩は
    今日(けふ)降る雨に 散りか過ぎなむ 」
               巻8-1557 丹比真人国人(たぢひの まひと くにひと)

( 明日香川が巡り流れている丘の秋萩は、今日降るこの雨で
  散り果ててしまうのではなかろうか。
  まだまだ楽しみたいのに惜しいことです )

この歌には註があり「(甘樫の丘の麓) 豊浦寺を訪れ、尼僧の私房で宴した時の歌」
とあります。
明日香から平城京に遷都してから幾年月。
作者は、かって住み慣れていた地を久しぶりに訪れ、昔馴染みの尼達の歓待を
受けたようです。
この辺りは広々とした野原。
萩の群生が見事だったことでしょう。
花見を満喫しながら、やがて散る萩を惜しんだものですが、尼達との楽しい宴が
終わりに近づき、別れの時が来るのが寂しいという気持ちが籠ります。

「 めづらしき 君が家なる 花すすき
    穂に出づる秋の 過ぐらく惜しも 」
                       巻8-1601 石川広成

( 懐かしいあなたのお家の花すすきが一斉に穂を出している秋
 この秋が過ぎて行くのが何とも惜しまれてなりません )

「花すすき」は薄の穂を花に譬えたもので万葉集唯一の表現です。
作者は大伴家持の同僚。
「めづらしき」は「めったにお目にかかることがない」の意です。

月光のもと薄が一面に靡く。
行く秋を惜しみながら一献、また一献。

「 秋の田の 穂向きに寄れる 片寄りに
   我れは物思ふ つれなきものを 」 
                       巻10-2247 作者未詳

( 秋の田の稲穂が一方に靡き垂れているその片寄りさながらに
 私はただひたむきに物思いに耽っております。
 あなたはまるでつれないのに )

間もなく収穫を迎える稲の穂はいかにも重たげに垂れています。
恋に悩み、うなだれている乙女。
片想い? あるいは訪れがない恋人に可愛くすねているのか。

「 曼珠沙華 落暉(らっき)も蘂(しべ)を ひろげけり 」 中村草田男

「曼珠沙華」は梵語でマンジュサカといい天上の花を意味しています。
 落暉すなわち夕日を花に見立てた雄大な一句

つぎは明日香の奥、稲渕の棚田を目指します。
石舞台からゆっくり歩いて約20分。
お目当ては彼岸花とたわわに実った稲穂。
赤、黄、緑が彩る夢の世界で様々な案山子が迎えてくれるのです。

「 道の辺(へ)の 壱師(いちし)の花の いちしろく
      人皆(ひとみな)知りぬ 我(あ)が 恋妻は 」
             巻11-2480 柿本人麻呂歌集(既出)

( 道のほとりに咲く彼岸花
その花が目立つように我が恋妻のことを とうとう世間様に知られてしまった。
ずっと心のうちにしまっておいたのに )

「いちしろく」の原文は「灼然」で「著しくはっきり」 。

作者は燃えるような恋心を抑えかねて女性のもとに度々通ったのか、あるいは
人前で手を振るようなしぐさをしたのでしょうか。
当時の恋のルールは「夜、女性のもとに通い、明け方、人がまだ寝ている間に帰る」、
そして「人に知られないよう密やかに」というのが習いでした。
何故ならば、人の口に自分達の名前が上ると、その言葉に霊力が付いて
魂が他人に移ってしまい、お互いの恋は破綻すると信じられていたのです。

そのような歌を口ずさみながら、やがて棚田の下へ。
今年の案山子祭りのテーマは「童謡、唱歌、わらべ歌、ものがたり」。
子供達やお年寄りのグループが丹精を込めて作った傑作が心打ち、幼い頃の
楽しかった思い出が蘇ります。

明日香川が流れる脇道から朝風峠の頂上まで延々と続く彼岸花の赤。
今年も豊作ですよと語りかける稲穂。
様々な表情をした魅力的な案山子たち。
明日香の秋を十二分に堪能した一日でした。

「 明日香村 大字飛鳥 稲架日和 」 堀井より子 

       注: 「明日香」は地名、自治体名に用いられ
          「飛鳥」は時代、地域他に使われている
        この句の「明日香村大字飛鳥」は現存する地名















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by uqrx74fd | 2014-10-03 07:54 | 万葉の旅

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