万葉集その四百九十九 (白露)

( 白露  学友N.Fさん提供 )
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( 露草  山の辺の道  奈良 )
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( 同上 )
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( 薔薇の新葉に置く露 )
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( 千畳敷カールで  中央アルプス )
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(  同上 )
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( 同上 )
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(テルリコフスカ著 しずくのぼうけん :一粒の雫が旅に出て、雲や雨になり
 川となって流れ、つららになって春を待つお話です )
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「あさ つゆをみると むねが ふるえる 」    ( 八木重吉 詩稿 ことば)

深まりゆく秋の早朝、野原の草花の上に置かれた露は太陽の光を受けて
小粒のダイヤモンドを撒き散らしたようにキラキラと輝きます。
思わず「ワァー」と歓声を上げたくなるような美しさ。
花の露ともよばれる雫は、植物や昆虫など生きとし生けるものに用意された
自然の飲み物であり、彼らが美しい色に変化するのは虹色に光る玉を飲んで
育ったからなのでしょうか。

古代の人々はこのような美しい玉水を白露とよび、木の葉を染めて
紅葉させるものと考えていました。

「 秋されば 置く白露に わが門(かど)の
      浅茅が末葉(うらば) 色づきにけり 」 
                         巻10-2186 作者未詳

( 秋がやってまいりましたね。
  我が家の茅(ちがや)の葉先も置く露のために美しく色づいてきましたよ )

 
「我が門(かど)」は男女が逢い別れるところをさし(伊藤博)ここでは宴席のようです。
庭先で行く秋の紅葉を楽しんでいる男女、虫の音も涼やかに響いていたことでしょう。
浅茅は丈の低い茅(ちがや)、末葉は葉の先。 

「 妹が袖  巻来(まきき)の山の 朝露に
     にほふ黄葉(もみち)の 散らまく惜しも 」
                            巻10-2187 作者未詳

( いとしい子の袖を巻くという巻来(まきき)の山の 朝露に色づいた黄葉が散るのが
 今から惜しまれることです )


前の歌の男女の出会いの場「門」から「妹が袖を巻く」(共寝する)を連想させる
「巻来(まきき)の山」という枕詞を用いています。(所在未詳)

今は盛りの黄葉が散るのを惜しんだ歌ですが、女性との一夜が早く終わってしまうのが
惜しいという気持ちが籠っているのかも知れません。

「 さを鹿の 朝立つ野辺(のへ)の 秋萩に
     玉と見るまで 置ける白露 」 
                       巻8-1598 大伴家持

( 雄鹿が朝佇んでいる野辺の秋萩
 その上に玉と見まごうばかりに置いている白露よ。)


牡鹿は萩が咲く頃妻を求めて鳴くので「萩は鹿の花妻」といわれます。
鹿が妻問したあとの後朝(きぬぎぬ)の別れ。
白露は別れの涙でしょうか。

霧の帳(とばり)がかかる明け方の野原。
咲き乱れる萩に置く露。
悲しげにミユーンと鳴く鹿。
優美かつ哀韻響く一首です。

「 玉に貫(ぬ)き 消たず賜(たば)らむ 秋萩の
    末(うれ)わくらばに 置ける白露 」
                             巻8-1618 湯原王

( 秋萩の枝先にとりわけ際立って見事に宿っている白露。
それを白玉として糸に貫き、消さないままで戴きたいものです)

 
ある乙女に贈った歌。
もとより出来ないことを所望した戯れですが、優雅な求愛ともとれる一首です。
「末(うれ)」 : 枝先
「わくらば」は「別くらば」で「他と区別できるほど際立って美しい」

万葉集に見える露は115首余。
豊かにして繊細な日本人の感受性は月の雫(露の異名)、朝露、暁露(あかときつゆ)、
露霜(つゆじも)、露の身、露の命などの美しい言葉を生み出し、今もなお秋を代表する
季語として詠われ続けているのです。

 「 露の玉 つまんでみたる わらは哉 」 一茶 (おらが春)

                     「わらは」 童子
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by uqrx74fd | 2014-10-23 17:54 | 自然

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