万葉集その五百七 (万葉イルミ)

( 鹿の親子  春日大社神苑 万葉植物園 奈良市 )
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( 青の世界  同上 )
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( 御所車    同上 )
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( お花畑 ?  同上 )
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( 稲架:はさ   同上)
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( 大宮びと あるいは 彦星と織女?  同上 )
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( 飛火野のよう   同上 )
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( 藤   同上 )
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( 藤棚  同上 )
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(  中央は奈良のマスコットキャラクター せんとくん )
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我国最古の万葉植物園「春日大社神苑」は昭和7年、昭和天皇の御下賜金によって
開園され、約9000坪の敷地に300種余の草木が植栽されています。

山野の植物になるべく人的な手を加えず、自然のままに生かすという考えのもと、
万葉園、五穀の里、椿園、藤の園と4つのテーマーによってエリアが分けられ、
四季折々の植物の生態を鑑賞することが出来ますが、なんといっても見どころは
200本、20種類の藤。
巨大な木に蔓が絡み合い、高い梢の上から見事な房を風に靡かせている様は
遠い古を思い起こさせます。

春日大社は古代藤原家の氏神であり、神域とされる御蓋山周辺には野生の藤が多く
存在していました。
藤原一族は家紋でもある藤を代々大切に保護したので、社の内外いたるところに
驚くほど多くの老巨木が残され、花の季節になると圧倒的な存在感を誇っています。

さて、その植物園で今年から奇想天外な試みが始まりました。
客足が少なくなる夏と冬にLED(発光ダイオード)100万個を使用して
夜の万葉イルミネーションの世界を現出させようというのです。

早速、夜の帳が降りるころに参上。
まず春日大社、一の鳥居から進みます。
漆黒の闇の中、植物園への道筋をしめす二条の光が鮮やかです。
歩くこと10分足らずで会場に到着。
まずは奈良のシンボル、鹿さんが出迎えてくれました。

「 夜を長み 寐(い)の寝(ね)らえぬに あしひきの
      山彦響(とよ)め さを鹿鳴くも 」 
                         巻15-3680 作者未詳

( 秋の夜長なのに 寝もやらずにいる折も折、山を響かせて妻呼ぶ雄鹿が
 鳴き立てているよ )

こちらの鹿さんは親子4頭。
鳴きもせず静かにイルミの草を食んでいます。
園内に10頭おかれているとか。

広大な敷地一面色鮮やかな幻想の世界に驚嘆しながら歩いてゆくと
やがて刈り上げられた稲穂が架けられていました。
こちらは本物。
粳米(うるちまい)ですが現代の稲穂に比べてかなり長い。
まわりに光の玉が輝いています。

古代の人達は干した稲穂で蘰(かづら:頭飾り)を作りその生命力を
身に付けようとしていました。

「 我が蒔ける 早稲田(わさだ)の穂立 作りたる
   かづらぞ見つつ 偲はせ我が背 」 
                       巻8-1624 大伴大嬢(おほいらつめ)

( 私が蒔いた早稲田の穂立、立ち揃ったその稲穂でこしらえた蘰です。
  これをご覧になりながら私のことを偲んでくださいませね )

作者は大伴坂上郎女の娘で17歳位、従兄妹の家持と婚約中。
花嫁修業のため明日香、耳成山の麓,竹田の庄へ母の稲の収穫作業の手伝いに
行っていたようです。
当時の貴族は使用人に手伝わせながら自らも農作業に携わっていたことを窺わせる
一首で、作者は自ら蒔いた稲を刈り取り、その穂を干して蘰に編み家持に贈ったもの。
「鬘を私と思って下さいね」と甘えています。

少し高台を上ってゆくと光の衣装で飾られた男と女の人形。
後背から星がきらめきながら流れ落ちてゆきます。
このきらびやかな衣装から想像できるのは都大路を歩く大宮人と女官。
そして天の川。

「 ももしきの 大宮人は さはにあれど
     心に乗りて 思ほゆる妹 」  巻4-691 大伴家持

( 大宮仕えの女官はたくさんいるけれども、私の心にしっかり乗りかかっている人
     それはあなたですよ )

名も知らない高貴な美人女官に憧れた作者の青春時代の恋歌です。
その女性は想像上の人かもしれません。

「織女(たなばた)の 五百機(いほはた)立てて 織る布の
    秋さり衣 誰(た)れか取り見む 」
                               巻10-2034 作者未詳

( 織姫がたくさんの機(はた)を据えて織っている布、
   その布で仕立てる初秋の着物はいったいどなたが取り上げて見るのでしょうか)

「秋さり衣」は秋になって着る着物、
ここでは七夕の夜牽牛が初めて袖を通す晴れ着のことです。
1年ぶりに出会い、後朝の別れに着せて帰らせたいという思いで
織っているのでしょう。

「 彦星以外に着る人はいないんだ。
  早く行ってやればよいのに。
  だがなぁ、天の定めでままならずかぁ」

と詠っているところをみると、七夕前の歌でしょうか。
天を仰ぎながらやきもきしている地上の男です。

光の世界を巡りながら見えてきたのは豪華絢爛の藤の棚。
足許には蓄光石が撒かれており、道もキラキラ光ります。

「 藤波の 花は盛りになりにけり
     奈良の都を 思ほすや君 」 
                  巻3-330 大伴四綱 (既出)

( ここ大宰府では藤の花が真っ盛りになりました。
 奈良の都、 あの都の藤が懐かしく思われませんか あなた様 )

大宰府長官 大伴旅人宅での歌。
盛りの藤を見ながら、故郷の藤を思い出し望郷の念に駆られた一首です。

こちらは晩秋イルミの藤、皓々と輝いています。
藤棚の下を行きつ戻りつしながらその美しさに嘆声しきり。

遠くを見渡すと赤白の世界。
お花畑のイメージなのでしょうか。
広大な敷地一面、光で彩られている万葉夢の世界でありました。

    「 万灯籠 うしろの闇に 鹿うごく 」 西脇妙子
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by uqrx74fd | 2014-12-18 17:32 | 生活

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