万葉集その五百二十七 (長谷路 )

( 日本一美しいといわれる登廊  開門一番乗り   長谷寺)
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( 牡丹満開  後方 長谷寺本堂 )
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(  豪華絢爛の桜景色  同上 )
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( 紅葉の五重塔  本堂から )
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(  こもりくの泊瀬秋景色 )
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( 本坊玄関のおもてなし )
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( 朝の修業を終えた僧の後片づけ )
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( 桜、木蓮、サンシュ   登廊から )
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( 長谷路の民家 )
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( 昔ながらの酒屋に地酒が並ぶ )
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( つきたてのヨモギ餅 )
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何時の頃からでしょうか。
昔「隠国(こもりく))の泊瀬」とよばれた この地にかくまで魅せられたのは。
今では年に6回も訪れるほどの惚れ込みようです。
55年前、亡き母と共に歩いた思い出の道。
今年も辿りにやって参りました。

近鉄大阪線長谷寺駅を下車。
長い石段を下り、初瀬川を渡って右折すると往古の名残を残す参道。
昔の花街の賑わいは見るべくもありませんが、道の両側に並ぶ割烹旅館、
薬草、野菜、葛、お茶、三輪素麺、蓬餅などを商う店。
そして、清流の涼しげな音や家の前に飾られた季節の花々が私たちを
温かく迎えてくれます。

1㎞ばかり歩くとやがて長谷寺の入り口。
上を見上げると周囲を木々で埋め尽くされた初瀬山の中腹に堂々たる伽藍が聳え立つ。
春の桜、木蓮、新緑の頃の牡丹、躑躅、秋紅葉。
冬の枯木もまた趣があり、雪でも降れば言う事なし。

遠い昔、岩の上に建立された観音様に憧れた人々は、都から三日、四日の徒歩の旅を
ものともせず、あえぎあえぎながら上った険しい坂道は今や399段の登廊(のぼりろう)。
それでも上まで辿りつくのは一苦労ですから、古の人たちの難儀さは想像を絶する
ものがあります。

「 つのさはふ 磐余(いはれ)も過ぎず 泊瀬山(はつせやま)
    いつかも越えむ 夜は更けにつつ 」   
                                 巻3-282 春日老(おゆ)

( 磐余もまだ通り過ぎていない。
 この分では泊瀬山、あの山はいつ越えることが出来ようか。
 もう夜も更けてしまったのに )

磐余は現在のJR桜井駅近く、東方の泊瀬まで約7㎞。
「つのさはふ」「蔦(つの)さ這ふ」で蔦が岩を這うことから磐余(いわれ)に掛かる
枕詞とされています。
当時、近くに海石榴市(つばいち)という賑やかなところがあり、多くの人は
そこで宿をとっていたようですが、この作者は野宿するつもりなのでしょうか。

それでも恋人がいれば話は別。
険しい山道や岩がごつごつした悪路も何のその。

「 こもりくの 泊瀬小国(はつせをぐに) 妻しあれば
    石は踏めども なほし来にけり 」
                             巻13-3311  作者未詳

( 隠れ処の泊瀬小国には妻がいるので 石踏む険しい道であるけれど
 私は何とかやってきましたよ )

山深い泊瀬は独立した小国とみなされていたのでしょうか。
この近くの朝倉に雄略天皇の宮があったとも伝えられています。

そして、ようやく愛する人が住む家の門前に到着。

「 泊瀬川 夕渡り来て 我妹子(わぎもこ)が
    家のかな門(と)に 近づきにけり 」 
                          巻9-1775 柿本人麻呂歌集

( 泊瀬川を夕方に渡ってきて、ようやく愛しい人の家に近づいてきた )

「かな門」は「金門」で鉄や金具を打ちつけた「堅牢な門」 

心を弾ませて門をたたく。
あなたぁ!と抱き合う二人。
あとは想像にお任せいたしましょう。

この歌の恋人を長谷寺に置き換えると今の私の心境にぴったり。
新幹線を乗り継ぎようやく目的の地に着いたのです。
        
 「 恋猫の つきくる初瀬詣かな 」 堀文子

登廊中腹辺りの月輪院で一休み。
裏山を借景にした庭園で戴く抹茶が疲れを癒してくれます。
桜、牡丹、紅葉をかたどった落雁、牡丹絵柄茶碗の心憎いおもてなし。

再び石段を登りはじめます。
左右にその数7千株といわれる色とりどりの牡丹が満開。
この豪華絢爛にして雄大な牡丹園はもと薬草園だったらしく、移植されたのは
元禄時代からだそうです。

「 香に酔へり 牡丹三千の花の中 」  水原秋櫻子

やがて、木造としては我国最大、高さ10mもある十一面観音が鎮座まします本堂に到着。
右手に錫杖、左手に華瓶(けびょう)を持ち、現生利益(りやく)と極楽浄土の先導を
されるといわれる有難い御本尊です。

本堂前の懸崖の大舞台から眺める景色は雄大そのもの。
たたなづく青垣が連なる山々。
点在する堂塔伽藍。
自然と一体となった美しい調和が素晴らしい。

本堂から坂道を上り五重の塔へ向かいます。
この辺りは楓が多く、秋の紅葉が特に映える場所です。
塔から奥の道は墓地、観光客はここで一服してから帰り道へ。
下りの石段の両側にも躑躅や卯の花が咲き乱れ、牡丹園も続いています。

やがて本坊。
前庭にも牡丹が一杯。
振り返ると、あっと驚く雄大なパノラマ。
山を背景にして五重の塔、本堂が左右に立ち並ぶ。
特に桜、紅葉の頃は絶景です。

この風景を心置きなく楽しむために朝の開門と同時に入場。
人一人いない広大な花の寺を独り占めしたような気分になれます。
有難い観音様、心安らかにしてくれる堂塔伽藍、そして美しい花々。
初夏の長谷路を満喫したあと、門前で搗きたての「ヨモギ餅」を頬張りながら
飛鳥へ向かいました。

「草餅の 色の濃ゆきは 鄙(ひな)めきて 」 高濱年尾
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by uqrx74fd | 2015-05-07 21:35 | 万葉の旅

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