万葉集その五百三十六 (雨に唄えば)

( 雨の日の薔薇 )
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( 同上 )
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( 同上 )
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( 紫陽花 )
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( 海棠桜 )
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( 牡丹 )
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( 露草 )
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( 室生寺にて   奈良 )
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( 歌川広重 名所江戸百景 大はし あたけ(安宅)の夕立 )
               安宅 :幕府の御用船安宅丸の船着き場があった
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( 雨に唄えば  ポスター )
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「雨に唄えば」といえば年配の方なら、すぐに思い出される不滅のミュージカル。
土砂降りの雨の中、ジーン・ケリーが主題歌を唄いながらタップダンスを踊る場面は
映画史に残る名場面とされています。
競演のデビー・レイノルズの可愛かったこと。

 わが八木重吉は「雨の日」という3行詩で

 「 雨がすきか
   わたしは すきだ
   うたを  うたわう 」
                    うたわう:唄おう

と書いていますが、万葉人も雨がお好き。
なんと125首も雨の歌を詠っているのです。

その中から4首連作の短劇、二人の恋の物語をどうぞ。

( 場面1 )

 今日は、恋人が訪ねてくる夜。
女は朝から いそいそと部屋を掃除し恋人が好きな御馳走を作って
用意万端を整えています。
夕闇が迫り、いよいよ男が訪れる時間が近づいてきました。
ところが、あぁ! 好天が一転かき曇り、土砂降りに。
男が女のもとに通うのは月が出ている夜と言うのが当時の習い。
「 あぁ、やっと逢えると思ったのに」と溜息をつく女。

「 我が背子が 使いを待つと 笠も着ず
     出(い)でつつぞ見し 雨の降らなくに 」 
                           巻12-3121 作者未詳


( いとしい貴方のお使いが待ちどうしくて。
 雨がしきりに降っているのに、笠もかぶらず
 何度も外に出て、まだかまだかと見ていました。)
「 笠も着ず」は 「待ちどうしさに笠もかぶり忘れて」
「雨の降らなくに」は 降るの逆接用法で「雨が降っているのに」

男は予め使いを遣り、訪れる日時を連絡していたようです。
雨が降り出し「あぁ今夜はダメだ」と思いつつ、
雨具も羽織らないで いつまでも外で待つ。
そんなにしてまで逢いたいのに。
うらめしい雨。

場面2.

 そのころ男は
 「さぁ、久しぶりに逢えるぞ」と喜び勇んで出発しようとした矢先の雨です。

「 心なき 雨にもあるか 人目守(も)り
         乏(とも)しき妹に 今日(けふ)だに 逢はむを 」
                               巻12-3122 作者未詳

( まぁ なんと非情な雨であることか。
 普段は人目をはばかりめったに逢ってくれない彼女。
 せめて人目につかない今日だけでも逢いたいのに )

暗闇の雨の中、岩がごろごろしている山道を駆けて行くのは危険です。
土砂降りの雨を恨めしげに見ながらとうとう諦めて床に就く。
眼を閉じても浮かぶのはあの可愛い顔、しなやかな体。
どうにも寝付けません。

突然「ええーい! ままよ 」と飛び起き、寝間着のまま外へ飛び出してしまいした。
降りしきる雨の中を韋駄天のごとく掛け走る。
険しい山道、ぬかるみ、なんのその。
明け方近く、ようやく、息も絶え絶えになりながら女の許に辿りつく。
烈しく戸を叩く音に驚く女。

「 ただひとり 寝(ぬ)れど 寝(ね)かねて 白袴(しろたへ)の
    袖を笠に着(き)  濡れつつぞ来(こ)し 」
               巻12-3123 作者未詳

( たった一人で寝てはみたが 恋しくて恋しくて寝られない。
 とうとう袖を笠代わりにかざして ずぶ濡れになつてやってきたよ)

場面3.

男の顔を見て狂喜する女。
全身ずぶ濡れの男は疲れ切って動けません。
先ずは酒を飲んで体を温めます。

濡れた衣服は部屋に干され、女の着物をまとっている男。
着いたのがあまりに遅かったので間もなく夜が明けていきそうです。

当時お互いに着ていた衣を敷いて共寝するのが決まり事。
「 俺の衣は濡れている、一目逢えたし今夜はそのまま帰ろうか 」
と迷う男。
その気配を察した女がたまりかねて詠う。

「 雨も降る 夜も更けにけり 今さらに
    君去(い)なめやも 紐解き設(ま)めな 」 
                    巻12-3124  作者未詳


( 雨も降るし夜も更けてしまっているのです。
 それを今さらあなた! 
 お帰りになるなんていうことはないでしょうね。
 さぁ、さぁ、紐を解いて共寝の支度をいたしましょう )

しきたりなんて関係ない、あなたが着ている私の衣を脱ぎ
裸になって早くいらっしゃいと誘う女。
何のためにここまで来たのかと気を取り直す男。
いざいざ。
―――。
めでたく合体。

万葉版「雨に唄えば」でありました。

ご参考:

ジ-ン・ケリ-の「雨に唄えば」の歌詞和訳

「 僕は雨の中で唄っている
ただ雨の中で唄っているだけさ
なんて素敵な気分なんだろう
また幸せになれたんだ
僕は雨雲に笑いかける
空は暗く曇っているけれど
僕の心にはお日様が照ってる
新しい恋にはぴったりだ

嵐はそのまま吹かせよう
みんなはあわてて逃げている
けれど雨が降っても
僕は笑顔を浮かべている
道をずっと歩きながら
口から出るのは楽しいメロディ
僕はただ雨の中で唄っているだけさ

雨の中で踊っている
ラララ・・・
また幸せになれたんだ
僕は雨の中で唄ったり、踊ったりしてるのさ
僕は雨の中で踊ったり,唄ったりしているのさ 」

                      おわり
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by uqrx74fd | 2015-07-09 07:06 | 生活

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