万葉集その五百五十五 (尾花)

( 朱雀門前で靡く尾花   平城宮跡  奈良 ) 
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(  同上 )
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(  正歴寺への道の途中で   奈良 )
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(  石舞台公園  飛鳥  奈良 )
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(   同上  )
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(   同上 )
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(   同上 )
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(  仙石原    箱根 )
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( 尾花に寄生するナンバンギセル  高松塚公園  飛鳥 )
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(  尾花に寄り掛かる萩  石舞台公園   飛鳥 )
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「 たけたかく 芒(すすき)はらりと 天の澄み 」 飯田蛇笏

万葉集で秋を彩る植物と云えば黄葉と秋の七草。
             (萩、尾花、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗)
中でも萩は圧倒的な人気を誇り141首も詠まれています。
ところが万葉人の中には次のように詠っている風流な御仁もいるのです。

「 人皆は 萩を秋と言ふ よし我れは
      尾花が末(すえ)を 秋とは言はむ 」 
                         巻10-2100 作者未詳(既出)


( 世の人々は 萩の花こそ秋を代表するものだという。
 なになに、俺様は尾花の穂先こそ秋の風情だと言おうではないか )

ススキの穂が波のように光りながら銀色にきらめく。
作者は日本人の心の風景とも云うべき芒が風に吹かれて靡くさまに
最高の秋らしい美観を見出しているのです。

この歌を年来の友人に紹介すると次のようなコメントをくれました。

「 実はボクも萩ではなく芒派です。
  夏の終わりごろ、まだ猛暑が続いていても芒が真新しい赤みがかった穂を
  出しているのを見かけると秋を感じます。
  写真の場合は順光で撮ることは少なく透過光による美しさを出すために
  ほとんどの場合、逆光で撮ります。 」

さすがカメラマン、穂が出たばかりの芒は赤いということも知っていました。
古代の人が「まそほ(蘇芳色)の芒」と呼んでいたものです。
因みに秋の七草で黄色は女郎花のみ。
あとはすべて紫がかった薄紅色。
万葉人の紫に対する憧れは大なるものがありました。
  
注: 紅葉は特定の木を指すものではなく、木々が色づいた様をいうので植物数は
   参考として取り扱われ136首。
   尾花35首 葛 20 撫子26 女郎花 15 藤袴1 桔梗(朝顔) 5首。

「 はだすすき 穂には咲き出ぬ 恋をぞ我がする
      玉かぎる ただ一目のみ 見し人ゆゑに 」
              巻10-2311  作者未詳 (旋頭歌)


( はだすすきがまだ穂には咲き出していないように
  私はそぶりには出さない秘めた恋をしています。
  玉がちらっと光るように ただ一目だけ見たあの人ゆえに )

「はだすすき」は「肌すすき」で穂が皮ごもりしている芒。
 8月~9月にかけて穂を出す芒は、葉鞘につかえてなかなか飛び出せません。
 やがて大きく膨らんで横から皮を破ってちぢれた花穂が恥じらうように顔を出します。

「 秋津野に 尾花刈り添へ 秋萩の
       花を葺(ふ)かさね 君が仮蘆(かりほ)に 」
                巻10-2292 作者未詳

( 秋津野の尾花を刈り添えて、秋萩の花をお葺きあそばせ。
  あなたさまの仮のお住まいに )

秋津野は持統天皇が好んだ吉野離宮があったところ。
吉野へ旅立つ男に仮の住まいに萩の花をのせて私を思い出して欲しいと
詠ったようです。
風雅な女性ですね。
男はお供の一人だったのでしょうか。
大人数で宿が足りず仮小屋に滞在した?

ここでは尾花が屋根葺きの材料に使われていたことを教えてくれています。

「 さを鹿の 入野のすすき 初尾花
    いづれの時か 妹が手まかむ 」
                           巻10-2277 作者未詳


( 雄鹿が分け入るという入野のすすきの初尾花
 その花のように初々しい子
 一体いつになったらあの子の手を枕にすることができるのだろうか)

相手はまだ少女。 
成人して結婚できる日を待ち焦がれている男。
入野は奥まった山の、実り豊かな野の共有林であることが多いそうです。

「 ほほけたる 尾花に風の 遊ぶ見ゆ
               尾花拒まず またあそぶらし 」    斎藤 史


「ほほけたる」 乱れほどけた

万葉人は芒の生態をよく観察し、穂が出ていないものを「はだすすき」
穂が旗のように靡くものを「はたすすき」、葉の細いものを「細野(しの)すすき」、
花のように見える「はなすすき」、屋根葺く材料を「草(かや)すすき」と区別していました。
「尾花」も花穂が動物の尻尾に似ているところから付けられたものです。

   「 しろがねの こがねの芒 鳴りわたる 」 平井照敏
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by uqrx74fd | 2015-11-21 05:55 | 植物

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