万葉集その五百六十四 (み雪降りたり)

( 万葉人にとって松と雪は繁栄のしるし )
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( 大雪の日 )
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( 筑波山の雪 )
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( 同 紅梅白梅)
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( 同 紅梅 )
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( 老桜の雪 )
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(  桜の蕾も寒そう )
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( 笹雪 )
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( サザンカ:山茶花 )
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(  樹氷 朝になるとキラキラ光るでしょう )
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山々に囲まれた盆地の大和国原。
冬は厳寒にもかかわらず、雪は滅多に降りません。
それでも万葉集で150首余の雪歌が登場するのです。
なぜ、こんなにも多く詠われたのでしょうか?

古の人々は土地の精霊が豊年のしるしとして雪を降らせるのだと考え、
雪を稲の花の象徴だと信じていました。
大雪ともなれば大豊作。
農耕に関係のない都人にとっても五穀豊穣は国土繁栄の吉兆、み雪と崇め
天皇以下こぞって寿いだのです。

「 池の辺(へ)の 松の末葉(うらば)に 降る雪は
        五百重(いほへ)降りしけ 明日さへも見む 」
                        巻8-1650  作者未詳

( 池のほとりの松の枝先の葉に降る雪よ、幾重々々にも降り積もれ。
 明日も重ねて見ように )

聖武天皇が平城京、西の池で催された豊明(とよのあかり:宮中の宴会)で
安倍虫麻呂(大伴坂上郎女の従弟)が、古歌として披露したもの。
常緑の松に降り敷く雪は国土と天皇の繁栄を寿ぐにふさわしく、
宴席も賑々しく華やかなものになったことでしょう。

「 大殿の この廻(もとほ)りの 
  雪な踏みそね
  しばしばも 降らぬ雪ぞ
  山のみに 降りし雪ぞ
  ゆめ寄るな 人や 
  な踏みそね 雪は 」   
                      巻19-4227 三方沙弥(みかたのさみ)

( 大殿の この周りの
 雪を 踏み荒らすなよ
 めったに降らない雪なのだ
 山だけに降った雪なのだ
 ゆめ近寄るなよ
 そこの人 踏むなよ 雪を )     巻19-2227 

この歌は藤原不比等の子、藤原房前が降る雪を見ながら、歌を詠めと
臣下に命じ、作者が応じたもの。
大殿は天皇をさすのが習いなので、非公式の宴席での戯れ歌と思われます。

山でしか降らないものだと思っていた雪が降っている。
「ワァーイ!雪やコンコン 」と子供のように大はしゃぎ。
飛び跳ねるような調子が面白く、お上も笑い転げられたことでありましょう。


「 夜を寒み 朝戸を開き 出(い)で見れば
     庭も はだらに み雪降りたり 」
                     巻10-2318 作者未詳


( 夜通し寒かったので、朝、戸を開けて外へ出て見ると
 なんと、庭中うっすらと雪が降り積もっているではないか )

自然現象の中で唯一「み」という接頭美称語で飾られている雪。
万葉人の雪に対する思いが好ましいものであったことが窺われる一首です。

夜中に寒さを感じ、早朝、戸を開けて見ると庭一面白くなっている。
「 おぉ! 雪だ。」と歓声を上げる作者。
「はだら」は「うっすら積もる」

「 梅の花 枝にか散ると 見るまでに
    風に乱れて 雪ぞ降り来る 」 
                    巻8-1647 忌部黒麻呂(いむべの くろまろ)


( 梅の花が枝に散りかかるのかと,見まごうばかりに
  風に吹き乱れて雪が降ってくるよ )

万葉時代、花と云えば梅。 
それも白梅です。
寒さ厳しい中、庭の梅の木を眺めながら開花を待ち望んでいる。
折から一陣の風と共に、雪が流れこんできた。
一瞬、梅の花びらかと錯覚した作者。

古くから信仰の対象とされた雪は次第に冬の美を讃える文学、詩的なもの
変化してゆき、平安時代以降、数えきれないほどの歌が詠い継がれて
ゆくようになりました。

山本健吉氏は
「 雪の信仰が古くからあって日本人は雪をよろこび 雪見などといって
  それを観賞する態度が導き出されてくる。
 雪は今でも私たちを童心にかえらせる何物かがある。
 雪は思郷、回想をさそう種である 」と述べておられます。
                           ( ことばの歳時記 文芸春秋社より)

「 故郷は いかにふりつむ けふならん
    奈良の飛鳥の 寺の初雪 」       上田秋成

             ふりつむ: 降り積む 
                 けふ:今日

















                                    
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by uqrx74fd | 2016-01-22 06:51 | 自然

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