万葉集その五百八十四 (雲流れゆく)

( 飛鳥 石舞台   奈良)
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( ドーナツ雲  飛鳥 後方はミハ山   )
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( 三輪山   奈良 )
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( 金剛葛城山脈   奈良 )
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(  飛鳥  後方 多武峰  )
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(  万葉ゆかりの安達太良山:後方  福島 )
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( 天橋立 京都 )
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( 南アルプスの夜明け )
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(  夕焼け雲  奈良で )
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(  大鵬飛翔  )
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晴れた日に芝生の上に寝転がって空を眺めていると雲が流れている。
むくむくと湧き上がって龍や鳳(おおとり)などさまざまな動物の形になり、
時には母や懐かしい人々の顔となって微笑みかけてくれる。
終日見続けていても飽きることがなく人を引き付けてやまない雲。

俳聖芭蕉も雲に誘われ、旅に出て不朽の名作を残しました。

「 日々は百代の過客にして,行きかふ年もまた旅人なり。
舟の上に生涯を浮かべ、馬の口をとらへて老いを迎ふる者は、
日々旅にして、旅を栖(すみか)とす。
古人も多く旅に死せるあり。
予もいづれの年よりか、片雲(へんうん)の風に誘はれて
漂泊の思ひやまず 」         ( 芭蕉 奥の細道 序の一部)

( 月日は永遠の旅客、行き交う年もまた、旅人である。
 舟の上に生涯をおくる舟子も、馬のくつわをとって老いを迎える馬子も、
 その日その日が旅であり、旅を栖(すみか)としている。
 古人も旅に死んだ者が多い。
 私もまた何時の年からか、ちぎれ雲のように風にまかせて
 漂泊の思いが止まず )


雲に魅せられた万葉人も200首余の歌を詠っています。
その表現も、豊旗雲、青雲、天雲、白雲、布雲,八雲、出雲、雲居、
雲の波、山雲、風雲、横雲、雲隠り、雲の衣、雲間など、
その語彙の豊かさ、造語の妙。
しかも、現在でも使われている言葉が大半なのです。

「 ここにして 家もやいづち 白雲の
      たなびく山を 越えて来(き)にけり 」 
                     巻3-287 石上卿(伝未詳)

( ここからだと我が家はどの方向になるのだろう。
 思えば白雲のたなびく山、あの山々を越えてはるばるやってきたものだ)
前注に近江で詠われたとあり、719年元正天皇美濃行幸の折のものと
推定されています。
大和から近江までそれ程遠いとは思われませんが、早くも故郷が
恋しくなったのでしょうか。

「ここにして」 は「ここにありて」の意
「家もや いづち」 「家」:「妻子の住む家」 
「いづち」:「何処(いずこ)」

なお、遠くまできたことを「雲の余所(よそ)」ともいいます。

「 青山の 嶺の白雲 朝に日(け)に
      常に見れども めづらし我が君 」 
                    巻3-377 湯原王

( 青い山の嶺にかかる白雲、その雲のように朝夕いつもあなたさまに
お逢いしていますが、少しも見飽きることがありませんねぇ )

宴での客人歓迎の挨拶歌。
相手は親しい間柄なのでしょうが詳細は不明です。
作者は志貴皇子の子、天智天皇の孫。
父同様、歌の名手でした。

「めづらし」は「愛づらし」で「心ひかれる」の意。

「 こもりくの 泊瀬(はつせ)の山の 山の際(ま)に
         いさよふ雲は 妹にかあるらむ 」
                    巻3-428 柿本人麻呂

( こもりくの初瀬 この初瀬の山あいに 行きもやらずに たゆとう白雲、
 あれはわがいとしい人なのであろうか )

後宮に仕える土形(ひじかた)娘子(伝未詳)が亡くなった折(自殺?)、
火葬された煙を見ながら悼んだ一首。
火葬は700年、僧道照に始まり、皇族では持統太上天皇が初(702年)。
煙を雲に見立て亡き人の魂とみる挽歌。

以下は伊藤博氏の解説です。

『 「いさよふ雲」までたたみかけるように詠って押さえ、最後の
「妹にかあるらむ」と悼む対象を重く据えたうたいぶりにも魅力がある。
哀感が湧き出るような歌で、やはり人麻呂の歌はいい。』 (万葉集釋注2)

禁断の恋(?)の噂を耳にし、自身の愛人に仕立てて詠ったものと思われ、
挽歌を文学的表現に昇華させた見事な一首です。

「 白雲の蒲団(ふとん)の中につゝまれて 
              ならんで寝たり 女体男体 」    正岡子規

万葉人は筑波山で行われた歌垣で自由な性を謳歌しました。
双峰の男体山、女体山の名にかけて戯れに詠ったもの。


         万葉集584 (雲流れゆく) 完

      次回の更新は 6月17日の予定です。
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by uqrx74fd | 2016-06-10 07:07 | 自然

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