万葉集その六百十三 ( 新年の歌: 酉 )

明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いします。
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( 今年は鶏の年と声高に   尾長鶏  石上神宮  奈良 )
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(  色、姿とも美しく神鳥にふさわしい   同上 )
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(  この堂々たる風格   同上 )
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( 木にもいっぱい止まっています  同上 )
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(  矮鶏:チャボ  同上 )
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(  烏骨鶏 :うこっけい 卵は高級品  同上 )
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(  深大寺で  東京 )
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( 山の辺の道で  奈良 )
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(  千駄木で  東京 )
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( 酉の字は口の細い壺を表した象形文字 )
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「 昨日(きのふ)こそ 年は果てしか 春霞
      春日の山に 早や立ちにけり 」 
                          巻10-1843 作者未詳

( つい昨日、年は暮れたばかりだというのに。
 春日の山に春霞が早くも棚引きはじめたことよ。 )

「年が果て」1年が終わって、今日は新年。
ふと春日山をみると霞が棚引いている。
文字通り春山に春到来の二重の歓び。
「さぁ、気持ちも新たにして今年も頑張るぞ」と
気力みなぎる万葉人です。

「 今し いま年の来ると ひむがしの 
     八百(やほ)うづ潮に 茜(あかね)かがよふ 」    斎藤茂吉

新年到来と同時に海上を茜色に染めながら昇る太陽。
海も空も赤一色、荘厳かつ雄大な光景。

「 庭の面(も)を ゆきかふ鶏の しだり尾に
     ふれてはうごく 花すみれかな 」      落合直文

本年は酉(とり)年。
酉という字は酒を成熟させるための口の細い壺を表した
象形文字とされています。

何故、鶏と結び付けられたかは全く不明ですが、
酒が成熟して「壺から溢れんばかり」の豊穣と、鶏(とり)の「音」から
「とり込む」を連想させるので、家運隆盛、商売繁盛の目出度い年です。

年の瀬に各地で立てられる酉の市。
縁起物で飾られた賑やかな「熊手」は冬の風物詩。
中でも浅草の鷲神社(おおとりじんじゃ)は由緒あり、

   「 春を待つ ことのはじめや  酉の市 」  其角

などと詠まれています。

鶏は今から7000年前、東南アジアの赤色野鶏(セキショクヤケイ)が
家畜化されたもので、中國、朝鮮を経て我国に伝わりました。

我国文献での初出は古事記。
天の岩戸にこもられた太陽神、天照大神に洞窟から出てもらうため
「常世の長鳴鶏を集めて鳴かせ」とあり、鶏が祭祀ないし神事で
大きな役割を果たしたことを窺わせています。

良く響く声で時刻を正確に告げた鶏は、人に良く慣れた上、
卵を産むので家でも大切に飼われました。

「にわとり」とよばれるのは「庭で飼われた鶏」の意で、
古名「かけ」は鳴き声(カケコッコ-)によるもの。
また雄略天皇7年(462)に闘鶏の記録もみえます。

万葉集での鶏は16首、すべて鳴く鶏として詠われています。

「 遠妻と 手枕(たまくら)交(か)へて 寝たる夜は
      鶏がね な鳴き  明けば明けぬとも 」 
                          巻10-2021 作者未詳

( いつも遠くに離れている妻。
 やっと手枕を交わして一緒に寝ることが出来た。
 鶏よ! 朝が来たと そう鳴きたてるな。
 帰り支度する時間だが、えぇーい、かまうものか。
 お前! もう一度寝ようよ。 )

「鶏がね」: 雁がね と同じ使用法

「な鳴き」 鳴くな ( な:否定の命令形 「な○○そ」 と使われることが多い)

「明けば 明けぬとも 」: 夜が明ければ明けてしまおうと かまうものか。
                 通い婚の時代、男は夜になってから訪れ、
                 夜明け前に帰るのが習い。

「 寝遅れて 初鶏聞くや 拍子ぬけ 」 内藤鳴雪

酉年生まれの人は、
「 鋭い観察力、決断力、行動力、社交性があり、
さらに親切面倒見が良いので出世する人が多いとされていますが、
多才のため八方美人的に事に当たる傾向があり、移り気にご用心」

だそうです。

「 初鶏や 大仏前の 古き家 」  松瀬青々

           (元旦の朝に聞く鶏の声は特別に「初鶏」といわれ新年の季語 )


    万葉集613 (新年の歌: 酉) 完



    次回の更新は1月6日(金)の予定です。
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by uqrx74fd | 2017-01-01 00:00 | 生活

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