万葉集その六百十四 (春菜摘む乙女)

( 万葉人の春菜    カタクリ  弘前城公園 )
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(  同上 )
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( スミレも食用でした   森野旧薬園  奈良 )
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( ニラ  山の辺の道  奈良 )
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(  同上 )
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(  ヨメナ  山の辺の道 同上 )
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(  同上 )
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( ヨモギ  同上 )
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( テレビでも放映されたヨモギ餅つき  奈良 猿沢池の近くで )
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( ヨモギ餅  長谷寺前で  奈良 )
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( ワラビ   山辺の道 )
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長い冬が過ぎ水ぬるむ頃、はだら雪が残る大地を割って顔を出す春菜は
若菜ともいいます。
早春の新芽はアクやエグ味が少なく美味。
乙女たちは暖かくなると一斉に野山に繰り出し、おしゃべりをし、歌いながら
春のピクニックを楽しみました。
摘んだ春菜はヨメナ、ヨモギ、ニラ、スミレ、カタクリ、ワラビ等々。

羹(あつもの:おひたし、汁)にして食べ、その旺盛な生命力を身に付け
健康と長寿を祈るのです。

「 國栖(くにす)らが 春菜摘むらむ 司馬(しま)の野の
     しばし君を 思ふこのころ 」 
                         巻10-1919 作者未詳

( 國栖たちが春の若菜を摘むという司馬の野。
  その野の名のように、しばしばあなたのことを思うこのごろです )

國栖ら: 奈良県吉野郡吉野町の吉野川の上流、國栖(くず)付近に住んでいた人びと。
      春の遅い山奥の住人と考えられていた
      性質が純朴で山の果実を食し、山菜など土地の産物を献上したという。

司馬の野:國栖付近なるも所在不明  「しま」の音から「しばし」を導く

 日本書紀によると

『 289年応神天皇が吉野に行幸されたとき、国栖人は酒を献上し、
歌舞を奏して歓迎した。
その地は京より東南で、山を隔てて吉野川のほとりにある。
峰は高く谷深く道は険しい。
人々は純朴で日頃は木の実を採って食べ、また、蛙を煮て上等の
食物としている 』とあり、
天皇に奉納された歌舞は、手で口を打って音を出しながら歌の拍子をとり
上を向いて笑う独特の所作をするものであったそうです。

それは、のちに「国栖奏」(くずそう)とよばれ、今もなお受け継がれています。

「 春草の 繁(しげ)き我(あ)が恋 大海(おおうみ)の
    辺に行く波の 千重(ちへ)に 積りぬ 」 
                          巻10-1920 作者未詳

( 春草が茂るように しきりにつのる私の恋
  その恋心は 大海の岸辺に寄せる波のように
  幾重にも積ってしまった )

「 おほほしく 君を相みて 菅(すが)の根の
   長き春日を 恋ひわたるかも 」 
                       巻10-1921  作者未詳

( おぼろげにあのかたをお見かけしたばっかりに、
  私は菅(すげ)の根のような この長い春の1日を ひたすら恋い焦がれながら
  過ごしています )

この三首の歌は、純情な乙女が道で見かけた男に一目惚れしたように
思われます。

春菜摘みをしながら凛々しい若者の面影を追い、大海(ここでは吉野川か)の
ほとりに佇み、波が幾重にも重なり合いながら流れているさまと、
自ら気持ちを重ねあわせる。
花咲く野をひねもす散策しながら、傍らの菅の地面深く張る根に、長い春日を想い、
終日の恋焦がれの歓びを詠う。

初恋のやるせなさと喜びが感じられる歌群です。

庶民の行事であった春菜摘みは次第に上流階級の人々の間に普及して儀礼化され
平安時代になると朝廷の行事となり、醍醐天皇延喜年間(901~914)には、
正月最初の子の日(のち七日)に天皇に若菜を奉る公式儀式に制定されます。

民間で羹(あつもの:汁物)として食べられていた若菜は、その後、
七種粥(ななくさがゆ)としてその心意が伝えられ、今もなお新春七日の行事として
脈々と受け継がれているのです。

  「 母許(ははがり)や 春七草の 籠下げて 」     星野 立子

                    (母がり:母のもとへ )




        万葉集614(春菜摘む乙女) 完


       次回の更新は1月13日の予定です。
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# by uqrx74fd | 2017-01-05 18:12 | 生活

万葉集その六百十三 ( 新年の歌: 酉 )

明けましておめでとうございます。 本年もよろしくお願いします。
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( 今年は鶏の年と声高に   尾長鶏  石上神宮  奈良 )
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(  色、姿とも美しく神鳥にふさわしい   同上 )
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(  この堂々たる風格   同上 )
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( 木にもいっぱい止まっています  同上 )
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(  矮鶏:チャボ  同上 )
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(  烏骨鶏 :うこっけい 卵は高級品  同上 )
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(  深大寺で  東京 )
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( 山の辺の道で  奈良 )
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(  千駄木で  東京 )
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( 酉の字は口の細い壺を表した象形文字 )
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「 昨日(きのふ)こそ 年は果てしか 春霞
      春日の山に 早や立ちにけり 」 
                          巻10-1843 作者未詳

( つい昨日、年は暮れたばかりだというのに。
 春日の山に春霞が早くも棚引きはじめたことよ。 )

「年が果て」1年が終わって、今日は新年。
ふと春日山をみると霞が棚引いている。
文字通り春山に春到来の二重の歓び。
「さぁ、気持ちも新たにして今年も頑張るぞ」と
気力みなぎる万葉人です。

「 今し いま年の来ると ひむがしの 
     八百(やほ)うづ潮に 茜(あかね)かがよふ 」    斎藤茂吉

新年到来と同時に海上を茜色に染めながら昇る太陽。
海も空も赤一色、荘厳かつ雄大な光景。

「 庭の面(も)を ゆきかふ鶏の しだり尾に
     ふれてはうごく 花すみれかな 」      落合直文

本年は酉(とり)年。
酉という字は酒を成熟させるための口の細い壺を表した
象形文字とされています。

何故、鶏と結び付けられたかは全く不明ですが、
酒が成熟して「壺から溢れんばかり」の豊穣と、鶏(とり)の「音」から
「とり込む」を連想させるので、家運隆盛、商売繁盛の目出度い年です。

年の瀬に各地で立てられる酉の市。
縁起物で飾られた賑やかな「熊手」は冬の風物詩。
中でも浅草の鷲神社(おおとりじんじゃ)は由緒あり、

   「 春を待つ ことのはじめや  酉の市 」  其角

などと詠まれています。

鶏は今から7000年前、東南アジアの赤色野鶏(セキショクヤケイ)が
家畜化されたもので、中國、朝鮮を経て我国に伝わりました。

我国文献での初出は古事記。
天の岩戸にこもられた太陽神、天照大神に洞窟から出てもらうため
「常世の長鳴鶏を集めて鳴かせ」とあり、鶏が祭祀ないし神事で
大きな役割を果たしたことを窺わせています。

良く響く声で時刻を正確に告げた鶏は、人に良く慣れた上、
卵を産むので家でも大切に飼われました。

「にわとり」とよばれるのは「庭で飼われた鶏」の意で、
古名「かけ」は鳴き声(カケコッコ-)によるもの。
また雄略天皇7年(462)に闘鶏の記録もみえます。

万葉集での鶏は16首、すべて鳴く鶏として詠われています。

「 遠妻と 手枕(たまくら)交(か)へて 寝たる夜は
      鶏がね な鳴き  明けば明けぬとも 」 
                          巻10-2021 作者未詳

( いつも遠くに離れている妻。
 やっと手枕を交わして一緒に寝ることが出来た。
 鶏よ! 朝が来たと そう鳴きたてるな。
 帰り支度する時間だが、えぇーい、かまうものか。
 お前! もう一度寝ようよ。 )

「鶏がね」: 雁がね と同じ使用法

「な鳴き」 鳴くな ( な:否定の命令形 「な○○そ」 と使われることが多い)

「明けば 明けぬとも 」: 夜が明ければ明けてしまおうと かまうものか。
                 通い婚の時代、男は夜になってから訪れ、
                 夜明け前に帰るのが習い。

「 寝遅れて 初鶏聞くや 拍子ぬけ 」 内藤鳴雪

酉年生まれの人は、
「 鋭い観察力、決断力、行動力、社交性があり、
さらに親切面倒見が良いので出世する人が多いとされていますが、
多才のため八方美人的に事に当たる傾向があり、移り気にご用心」

だそうです。

「 初鶏や 大仏前の 古き家 」  松瀬青々

           (元旦の朝に聞く鶏の声は特別に「初鶏」といわれ新年の季語 )


    万葉集613 (新年の歌: 酉) 完



    次回の更新は1月6日(金)の予定です。
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# by uqrx74fd | 2017-01-01 00:00 | 生活

万葉集遊楽掲載作品項目別分類表

万葉集遊楽 掲載作品項目別分類表    
                  (番号は掲載番号)

①自然を詠う

   1.日本の美しさ  7.初夏の風と香り   8.天の海
   18.秋の風吹く   19.立てる白雲     29. 月の桂
   35.十二月(しはす)  39.富士       43.立春

   47.東風吹く    49.雪解け       53.国のはたてに
   67.鳴神       71. 夕立      72.虹

   73.潮騒       74. 秋風      75.仲秋の名月
   80.浜の真砂     81.豊旗雲      85.時雨
   100.雪月花     117.立山   121.よせる波 かえす波

   122.星の祭典    123.雲三態      126.風立ちぬ
   129.花野      133.後の月    136.木綿の山

   144.松風      146.安達太良山  149.氷から薄氷へ
   152.淡雪春の雪   157.花吹雪    161.みどり
   165.こだま、山彦  170.夏野     171.山清水

   172.夏山      174.夏影     199.冬籠り春さりくれば
   205.春雨   211.たたなづく青垣  217.泉、清水
   223.山川   224.海山は死にますか   226.弓張月

   228.瀧もとどろに  251.万葉の立山は剣岳か
   259.時は今・春   268.光いろいろ
   277.立つ波、騒く波   279.初秋風

   296.神風  302.冬野、冬木立  303.武蔵野
   310.象山:きさやま   344.夕影

   364. 川の音    392. 飛鳥川
   393. 春日山    405. 富士山

   417.うち靡く春    451.朝霧 山霧
   452.山粧う       468. 春霞

   493.月読み:つくよみ    499.白露
   501. 山 色づきぬ      505. 泊瀬川

   506.吉城川      508.松原
   515. 宇治川     545.草の露白し

   552.秋の夜半     559.光と影
   564. み雪降りたり   571.霞立つ春

   584.雲流れゆく     588. 浜辺の歌
   590. 青雲・白雲     594. 海神:わたつみ

   597.松籟、爽籟、秋の風    605. 雲によせて
   607. 十月時雨          608  朝露

   617.落葉道とカワセミ       618.三日月

② 植物 

   3.花のメドレー   14.さ百合にかける恋   22.秋の香
   25. 秋の七草   26.いちし   30. 薔薇:うまら
   31. もみじ   38.ゆずるは   40.芹:春の七草

   44. 翁草   45. 梅は母の木   46.つらつら椿
   48. 柳は緑   50. 桃李    51.さわらび

   52. 花は櫻木    55. すみれ摘み  56.馬酔木
   60.うつぎ:卯の花 62藤は日本酒がお好き 63.あじさい
   65. 合歓の花    68. 紅       69.浜木綿

   77. 撫子      83. 紅葉狩     90.ほよ:宿り木
   94. あをな     103. 梅から櫻へ  104.堅香子の花

   108. 菖蒲      109. つつじ    110. かきつばた
   111.麦の秋      113. 朴      115.カサブランカ
   116.じゅんさい    118. 蓮      119.麻

   120.つきくさ     131.花妻      135.韓藍
   153.川楊       155. 三枝      158.山吹の花

   162.黄楊の櫛     167.花橘      168. 苔
   169.ぬばたま     175.桃       176.荻(オギ)の風
   177.おみなへし   178.萩      181.葛 
      
   183.粟(あわ)   184.栗     185.葦       202.梅の香り 
   203.椿は照葉樹林の代表     208.馬酔木は神と聖女の花

   209.すみれの花さく頃  216. 棟(あふち)  218. 梅の実、梅干
   221.紅花    225.萓草:カンゾウ=忘れ草   227.桔梗(キキョウ)
   234.芋:うも   235.かえで  238.百代草は菊?
 
   240.杉のいろいろ    245.檜:ひのき     248.松と門松
   253.栲:たく=楮:こうぞ  255.つらつら椿つらつらに
   264.蓬(よもぎ)    267.エゴの花   269.橘の花


   281.かほばな=昼顔   283.粟は五穀の王
   284.むろの木=ネズ   287.木綿(ゆふ)
   290. 梨        291. ちちの木は銀杏

   294・葎:むぐら   298.竹のいろいろ  
   305.探梅     307.つぎね: ヒトリシズカ
   309.はねず:ニワウメ  313.つまま=タブの木

   314.茜(あかね)  315.紫草:ムラサキ
   317.竹の秋    321.槻:ツキ=ケヤキ

   323.若布:わかめ   326.なのりそ=ホンダワラ
   327.豆色々      330. かずらかげ=ヒカゲノカズラ

   334. さ百合      335.柘(つみ)=山桑
   339.橡: つるばみ    340. まゆみ

   343.思ひ草=ナンバンギセル  347.榛;はり=ハンノキ
   351.うけら=おけら     354.笹

   356.山橘=藪柑子    358.山菅=龍の髭
   360. 山たづ=ニワトコ   362.梅と蘭

   366.桜と蘭蕙     367.枳殻:カラタチ
   370.岩つつじ     371.白つつじ

   372.藤      373.藤波
   381、 山ぢさ=岩タバコ 389. なでしこ=常夏

   390.土針=メハジキ   396.藤袴
   397.秋萩          398.芒:ススキ

   402.葛いろいろ    406.杉の文化
   408.苔むす      414. 雪中梅

   415.梅を訪ねて:曽我梅林   420.カタクリの花
   422..馬酔木の花        423..山吹
   
   427.菖蒲と杜若     428. 蓴菜の花咲く
   429.あさざ        430.紅花栄う

   434.ねむの木      437.クソカズラ
   441. 露草        442. 秋の七草 2.

   443. 韮(ニラ)      447. 曼珠沙華
   449. 水葱(なぎ)     459. 松は緑

   460. 結び松      461.梅の初花
   463. 寒梅        464. 恋の松

   469.三椏(みつまた)   471.すみれ
   479.卯の花         481. 紫陽花いろいろ

   482.茅:チガヤ    483.古代蓮
   489.檜扇:ひおうぎ    494.女郎花

   497. 野辺の秋萩      498.瓜:うり
   511. 橘いろいろ     513.茜(あかね)さす

   514.初梅      518.ネコヤナギ
   520. 春柳     525. 散る桜

   529.山吹いろいろ     532.豆の花咲く
   533.杜若。燕子花?    537.合歓の花咲く社

   539.河原撫子        540.檜扇 今盛りなり
   541.朝顔、昼顔、夕顔   542. 葵

   543.ノキシノブ     547.山藍:やまあい
   548. にこ草       551.芝草

   554  黄葉        555.尾花
   560. 十両:ヤブコウジ   562.玉箒(たまばはき)

   566.玉藻と海苔       568.梅いろいろ
   570. 春菜美味し      574. 虫麻呂の桜

   575.瀬戸の縄海苔     577.竹は木か草か?
   579.春の萩と藤       586.小楢:こなら

   592.麻いろいろ1      593. 麻いろいろ2
   596.姫押:をみなへし    603. さねかずら

   604. 真弓        606. アケビ
   609. 欅:けやき     612. 梓:あずさ

   615. 梅よ春よ      616.梅.椿.寒桜
   620. 月夜の梅      624.柳の道

   627. 桜の歌       628. あだ桜
   629. 八重桜

 ③ 動物 

   4.初夏の鳥      20.ひぐらし     21.河鹿
   23.虫のシンフォニー  27. 雁が音    28.やたがらす
   33.鹿鳴く       42.夜の鶴     54.櫻鯛

   57.飛燕        58.鵜飼      59.ホトトギス
   64.鮎子さ走る     66.磯の鮑の片思い 70.蝉時雨
   78.鱸(すずき)     79.蜻蛉      86.夕波千鳥

   88.都鳥        93.勇魚(鯨)    95.庭つ鳥
   97.初音        99.鷲と鷹     105.蜆
   106.蚕飼ひ      112.かほどり(貌鳥)    114.蛍

   130.天高く馬肥ゆる  134.こほろぎ    142.鶴鳴きわたる
   145.鴛鴦       147.荒熊      148.鮪(シビ)
   156.鮒        160.蜷(ミナ)     163. 雲雀

   189.鴫(シギ)   191.白鷺の力士舞  200.龍馬(想像上の動物)
   214.孤愁の鳥:ホトトギス    222. ムササビ  233.愛犬
   239.馬の涙    242.貝の色々   246.虎

   249.氷魚(ひを)  252. 鶯     258.鶚:みさご
   266.初鰹    276.鰻の祖先は深海魚
   295.鶉:うずら  297.鵲(カササギ)の渡せる橋

   299.兎   306.鷹    308.雉:きぎす
   324.しただみのレシピ    325.鮎
   352.鶴の舞     353.亀鳴く

   355.鴨      361. 猿
   368.谷ぐく=ヒキガエル   391.「べこ」は「ムゥ」と鳴く

   394. 恋する鹿     456.馬と駒
   457.新年 馬の歌     465. 鶯鳴くも

   476.桃、藤、ホトトギス   480.年魚:あゆ
   495.こほろぎ鳴くも      519. 狐

   622. 千鳥          623.ちんちん千鳥



④ 心象を詠う

   2.万葉老人乙女を口説く    6.万葉恋の面白歌 
   11.聖徳太子とマザーテレサ   15. 海ゆかば
   32.部下の恋狂い        34.好きなのはあなただけ

   84.後朝(きぬぎぬ)  87.モーツアルトのト短調は万葉のかなし
   91.王者の求婚         96.女が男を誘う時

   101.名を立てる        102.月は上がりぬ
   125.人妻           138. 玉響(たまゆら)
   139 巌            141. たまきはる

   151.源実朝          164. さらさら
   179.恋は秘密に        180.いさよふ

   193.強きものその名は-    194.ますらを
   197.万葉翡翠 1       198.万葉翡翠 2
   201 君が代のルーツ      204 空騒ぎ

   206.千の風になって      207 にほふ
   230.夢で逢いましょう      231.たわやめ
   254.荒ぶる    256.ふふむ

   263.面影  272.但馬皇女;不滅の恋
   286.天皇のよばひ  293.とかくに人の世は
   300.やまと、倭、日本  316.あかねさす紫野

   320.磐姫皇后の謎  322.浦島伝説
   331.きけ わだつみのこえ   332.夏の夜の夢

   337. 朝影    346. 筑波山に登る
   350. もののあはれ   369. つつじ花 にほえ乙女

   424.藤の恋歌     436.はまゆふ 人麻呂恋歌
   438.家持の百合と撫子   462.我が心焼く

   510.我が心は燃ゆる富士    522.恋桜
   549. 野の花 恋の花      550.稲によせる恋

   553. 秋の恋歌    557.君という言葉
   572. 春の恋歌:相聞   573.恋のおもしろ歌 2

   578.夏の恋歌1.    580.老いらくの恋 1
   581.. 老いらくの恋 2      583.常滑:とこなめ

   587. 飛鳥慕情      589.夏の恋歌2.
   595. 萩の恋歌      601. 秋の恋歌2.

   602. 秋の恋歌3.

⑤ 人と生活 

5.万葉人はお酒がお好き    9.ぼやきの一つも言いたくなるさ
10.すまじきものは宮仕え   12.万葉人は掛け算がお得意
13.七夕祭り         16. 鰻めしませ

17.良寛の歌の手本は万葉集  24. 漱石の草枕
36.歌垣           37.駅伝

41.バックギャモン      61.時の記念日
76.天覧相撲         82.一夜妻
89.商売のはじまり「市」   92.野焼き山焼き

98.綿の衣          107. 田植
124.雨乞いの歌       127. 稲刈り

128.信濃路         132. 酒を醸む
137.新嘗祭         140. 鎌倉
143.新年の歌        150.現人神の登場

154.藻塩焼く        159.千曲川
166.絵を描く万葉人     173.古代の船

182.遊行女婦        186.対馬
187.埴生の宿        188.秋の夜長
190.嘆きの霧        192.百人一首の「これはこの」

195.雪が降る        196.若菜摘み
210.結ぶ           212.住吉の神様は現人神

213. お母さん        215. 隼人
219.  植樹          220.娘の結婚  

232.美女と僧侶    237.倭琴(やまとごと)
241.いい湯だなぁ!  243.高いなぁ!税金

247.若水    250.橘 曙覧
257. 天平のマリリン・モンロー  261.夜桜

270.とき   273.真珠は六月の誕生石
275.万葉仮名の謎(義之。大王)  278.天の川ロマンス

280.防人(さきもり)  285.平城遷都
288.澪標(みをつくし)  289.しがらみ   

292、山越え:生駒と龍田     301、大仏開眼   
311.鎮魂     312.関:せき

318.よき人よく見  319.桐の琴をお贈りします
333.薬の神様    338.花嫁の父

345.御蓋山 :みかさやま  348. 采女
349. 年内立春     357.乞食人(ほかひひと)の歌:鹿

359. 雪の梅    363. 祈りと供花    
365.春の夜の夢   386.大和三山妻争い

395. 白毫寺と志貴皇子   400.藤原鎌足
403.華麗なる送別の辞    404. 宇智の大野

407.東人の富士    410.早春の火祭り
412.孝謙女帝      416. 梅の里

425.藤衣    431.長屋王   432.長屋王2
433. 商い 返品あり    435. 天の川

448.大伴旅人の萩    450.万葉のオフィーリア
453.秋田刈る       454.秋山我れは

455.鏡王女       458.春菜摘む
467. 酒ほがひ     470. あをによし 奈良

472.桜、すみれ、乙女   474.恭仁京(くにきょう)
475. 荒れたる都      477.能登の国の歌:酒屋

478.能登の国の歌2    484.天の川伝説
485.月夜の船出       488. 憶良の天の川

490. 住吉  500.遣唐使と鑑真
502. 熟田津の船乗り   503.晩年の額田王

507.万葉イルミ      509.新しき年
517. 人麻呂歌塚     521. 花咲かば

526. 藤原広嗣の恋桜   528.湖上の藤見
530. 大津皇子 1       531. 大津皇子 2

534.ゆり祭り     535.紅の衣
536.雨に唄えば    544.滝のほとりで

546.故郷:ふるさと   558.万葉人のトイレ
561.新年の歌:申    563.鷹狩

565.おもてなし     567.光明皇后
569.梅愛づる人     576.常盤

591. 家持の百合と撫子   598. 萩の遊び
599. 実りの秋         600. 藤原京

610. 結婚しまーす      611.橘諸兄邸の宴
613. 新年の歌:酉      614. 春菜摘む乙女

619. 眉美人         621. ノックが合図よ
625. 剣太刀

⑥ 万葉の旅

229.敏馬(みぬめ:清き浜辺)   236.斑鳩(いかるが)散歩 
244.香椎潟(かしひがた)    260.佐保路、佐保姫   

262.弥彦山(やひこさん)   265.鞆の浦
271.吉備の国    274.六義園は紀の国の箱庭

282.明石海峡   304.国栖の里 
328.夏美=菜摘の里  329. 伊香保

336.高円山   341.歌姫街道 
342. 明日香:南淵山   374. こもりくの泊瀬
 
375. 明日香:橘の寺   376.山辺の道(海石榴市:つばいち)
377. 山の辺の道: 敷島の大和  378.山の辺の道:三輪山

379. 山の辺の道 檜原へ   380.山辺の道 :巻向、穴師
382. 室生の里          383.明日香:川原寺、飛鳥寺

384. 明日香:甘橿の丘から   385.明日香:剣池
387. 吉野紀行1:吉野山奥千本へ   388.吉野紀行2.

399.聖林寺から多武峰へ     401.馬来田:まくた
409.巨椋池              411. 菅原の里

413.哭沢の杜      418.五條
418.天の香具山     421. 万葉花紀行

426.石上神宮       439.生駒山
440. 生駒山:暗峠    444. 葛城古道:高天原

445. 葛城古道:朝妻    446.葛城山春秋
466. 梅紀行:山の辺の道  473.雲梯の杜

486.真土山:まつちやま   487.雷丘:いかずちのおか
491. 夢のわだ         492.秋津

496.秋の明日香路     504.巨勢路
512. 有馬          516.墨坂

523.花紀行 (曽我川、藤原京跡 )   524. 奈良の飛鳥散歩
527. 長谷路            538. 鎌倉花散歩

556.我が心の佐保       582.風薫る道
585.東御苑花散歩       625. 早春の奈良
 










  
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# by uqrx74fd | 2016-12-31 23:45 | 掲載作品項目別分類表

万葉集その六百十二 ( 梓:あずさ )

( 梓 現代名 水芽:ミズメ  赤塚植物園  東京 )
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( 同上 )
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( 梓の紅葉  同上 )
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( 梓弓複製  東京国立博物館 )
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(  古代の弓猟   橿原考古学研究所  奈良)
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(  埴輪 弓を持つ男   同上 )
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(  縄文晩期の弓  同上 )
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(  縄文晩期の矢のひじり  同上 )
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( 弥生前期の弓  同上 )
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(  同 復元された矢   同上 )
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梓(あずさ)はカバノキ科の落葉高木で本州岩手県以南、鹿児島県以北に
分布する我国固有の植物です。
山地に自生し高さ15~20m、幹の直径は30~70㎝、桜に似た横長の
皮目があります。
秋の葉の彩りが美しいため庭木でも栽培され、現代名は「水芽(ミズメ)」。
樹皮に傷を付けると樹液が水のように流れるのでその名があり、
枝を折るとサロメチールのような匂いがツンと鼻を刺激します。

古くは弓材、器具,家具などに用いられ、奈良時代の梓弓が正倉院に、
複製が東京国立博物館に収蔵されており素朴な面影を伝えてくれています。

万葉集での梓は50首。
植物そのものを詠ったものはなく、ほとんどが枕詞としての梓弓、
しかも恋歌です。

「 梓弓 末(すゑ)の はら野に 鳥狩(とがり)する
    君が弓弦の 絶えむと思へや 」 
                          巻11-2638 作者未詳

( 末の原野で鷹狩をする我が君の弓弦が切れることがないように
 わたしたち二人の仲が切れるなど、とても思えません )

末の原野の「末」は大阪府南部の和泉の陶邑(すえむら)とする説が
ありますが、詳細は不明。
鷹狩をする男は地方の豪族の若君でしょうか?
相思相愛と信じていても内心不安な女性です。

「 梓弓 引きてゆるさず あらませば
   かかる恋には あはざらましを 」 
                      巻11-2505 作者未詳

( 梓弓を引きしぼって緩めないように、心を許しさえしなかったら
 こんなに切ない恋に出くわさずにすんだのに )

相手は身分が違う、あるいは他に恋人がいる男か。
決して愛すまいと心に固く誓ったのに。
ついつい誘惑され体を許してしまい好きになってしまった。
どうしょう、私。

「 引きてゆるさず 」:「相手に気をゆるさない」(隙をみせない)

「 梓弓 引きて緩へぬ ますらをや
    恋といふものを 忍びかねてむ  」 
                       12-2987 作者未詳

( 梓弓を引き絞って緩めることがない、張りつめた心の堂々たる大丈夫。
 そんな男たるものでも恋と云うやつにかかっては
こらえきれないものなのか )

こちらは自ら「ますらを」と自負する男。

「恋など決してするものか」と広言したが、突如目の前に現れた美女にメロメロ。
 人様が何といおうがもう知るか! と見栄も外聞もかなぐり捨てた。

「 いまさらに 何をか思はむ 梓弓
    引きみ緩へみ 寄りにしものを 」 
                         巻12-2989 作者未詳

( 今さら何を思い悩もうか。
  梓弓を引いたり緩めたりするように、あれこれ思案した挙句に
  あの方に心を寄せてしまったの。)

こちらは女。
覚悟を決めた。
もう迷わない、あの人一筋に愛そう。

「 かくだにも 我(あ)れは恋ひなむ 玉梓(たまづさ)の
    君が使(つかひ)を 待ちやかねてむ 」 
                         巻11-2548 作者未詳

(これほどまでに切ない気持ち。
これからもずっと私はあの方を恋い慕っていくことでありましょう。
しかし、それにしても、あの方の言伝ての使いすら待ちかねて
我慢できないのです。 )

玉梓は美称の玉+梓。 
古代、男女の逢い引きの連絡は使い人が受け持っていました。
正式な使いの目印として梓の枝を折り、そこに文や歌を付けたのです。
そのようなことから玉梓(たまづさ)という言葉が生まれ、使いに掛かる
枕詞になっています。

玉梓は万葉で7例見え、平安時代になると消息、手紙の意味に変わります。

梓は古来、霊力や呪力がある木とされていました。
弓材に使われたのも、木の質が固いという事だけではなく、呪力があると
信じられていたためです。
信濃国が産地として知られ、続日本紀によると、文武天皇大宝2年、1020張が
大宰府の用に、さらに甲斐の国からも500張献上されたそうです。

梓はその後、版木としても用いられ、このことから、
書物の出版を「上梓(じょうし)」と云うようになったそうな。

「 おく山に 未だ残れる 一むらの
              梓の紅葉 雲に匂へり 」     伊藤左千夫


        万葉集612 (梓:あずさ) 完



       次回の更新は1月1日(日)の予定です
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# by uqrx74fd | 2016-12-22 17:38 | 植物

万葉集その六百十一 (橘諸兄邸の宴)

( 橘諸兄 前賢故実:江戸~明治時代に刊行された伝記集 菊池容斉筆 )
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(  赤塚不二夫の万葉集  学研 )   画面をクリックすると拡大できます
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( あたしたちの古典 万葉集  学校図書 )
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( 橘の花  山の辺の道  奈良 )
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( 橘の小さな実  同上 )
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( 右近の橘  興福寺南円堂前  奈良 )
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( 春日大社若宮   奈良 )
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( 橘諸兄が愛した山吹  山辺の道 奈良 )
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天平の頃 左大臣 橘 諸兄(もろえ)は山城の国,井手の里、玉川のほとりに
山荘を営み、遣水した庭園を中心に山吹を植え、川の両岸を埋め尽くしたそうです。
740年、その見事さを耳にした聖武天皇がわざわざ行幸されたことにより、
天下に喧伝され「井手の玉川」は山吹の名所として詩歌に数えきれないほど
詠われるようになります。

それから12年後の752年、退位された聖武太上天皇は井手の橘諸兄宅へ
再び行幸され、肆宴(とよのあかり)を催されました。
肆宴とは天皇、上皇が催す酒宴のことですが、臣下の屋敷を訪問されて
一席を設けるというのは破格のこと。
長年の忠誠に対する労をねぎらわれたものと思われます。

出席者は上皇を入れて4人。
気心が知れた人ばかりの内々の酒席です。
時は12月中旬、まだ晩秋の気配が漂う時期。
美酒と松茸、桃、栗、梨、山海の珍味がふんだんに供され、
選りすぐりの美女が大勢侍(はべ)って座をとりもったことでしょう。
かた苦しい宮中では味わえない雰囲気、上機嫌の上皇はまず挨拶歌を
詠われます。

「 よそのみに 見ればありしを 今日(けふ)見ては
    年に忘れず 思ほえむかも 」  
                        巻19-4269 太上天皇(聖武)

( 外ながら見るだけであった以前ならともかく、今日こうして見たからには
 もう毎年忘れずに思いだされることであろうな )

12年前の行幸は山吹見物だけだったのでしょうか。
ようやく邸(やしき)を訪れることができたと詠われています。
続いて恐縮した橘諸兄のお迎えの歌。

「 葎(むぐら)延(は)ふ 賤(いや)しきやども 大君の
    座(ま)さむと知らば  玉敷かましを 」 
                                巻19-4270 橘諸兄

( 葎の生い茂るむさくるしい我家、こんなところに大君がお出ましいただけると
 存じておりましたら、前もって玉を敷きつめておくのでしたのに )

勿論、事前にお達しがあったでしょうが、謙遜しながらの感謝と歓迎の辞。

「 松陰の 清き浜辺(はまへ)に 玉敷かば
    君来まさむか  清き浜辺に 」 
                      巻19-4271 藤原八束

( このお庭の松の木陰の清らかな浜辺に、玉を敷いてお待ちしたなら
 大君はまたお出まし下さるでしょうか。
 この清き浜辺に )

庭の砂、松の木、借景の川を海に見たて、松に待つの意を響かせ、
再度の行幸を願っています。
作者と諸兄は伯父、甥の関係。
家持とも親しい間柄です

「 天地に 足(た)らはし照りて 我が大君
     敷きませばかも 楽しき小里(をさと) 」 
                    巻19-4272 大伴家持

( 天地にあまねく照り輝いておられるわが大君。
その大君が国をお治めになっておられますゆえ、
この里も楽しくてしかたがない所でございます。)

橘邸周囲全体が楽しく、賑わっていると太上天皇の治世をたたえたもの。
もっともこの歌は予め用意したが披露されなかったとの注記があります。
席が盛り上がっている最中の結びの歌だけに、出しそびれたのかもしれません。

さて、聖武天皇の寵臣、橘諸兄とはどういう人物だったのでしょうか?

諸兄は敏達天皇の後裔で父は大宰府帥、美努王(みぬのおほきみ)、母は縣犬養三千代。
三千代は後に藤原不比等に嫁し、光明皇后を生む。
従って光明皇后は諸兄の異父妹という間柄。
元々は王族で、葛城王と称していましたが自ら臣籍降下を請い、
許されて母の姓、橘を名のりました。

737年天然痘の流行によって朝廷の中枢、藤原4兄弟が病死したことにより
一躍、右大臣に任じられて国政の中心になり、吉備真備、玄昉をブレーンとして
聖武天皇を終生補佐し続けます。

然しながら孝謙天皇が即位すると、藤原仲麻呂の発言力が強大になり、
755年酒席で不敬の言ありと讒言され、756年、辞職を申し出て引退。
強力な支持者を失った大伴家は諸兄の政敵仲麻呂に疎まれ次第に衰退し、
遂に因幡、多賀城へ左遷されました。

この聖武太上天皇による宴の時期が、橘諸兄、大伴家持の絶頂期で
あったと言えましょう。

「 橘と 家持編(あ)みし よろづ葉の歌 」 筆者

特筆されることは、橘諸兄は万葉集1~2巻の編者とも推定され、
その後を家持に託したことです。
引き継がれた万葉集の編纂は、多くの人たちの超人的な努力、協力により、
遂に20巻4516首をもって完結します。
天皇から庶民、老若男女を網羅する歌集は世界でも類がなく、
我国文学界に燦然たる光を放ち、いまなお褪せることなく輝き続けているのです。

「 家橘(いえきつ)が 植えし万葉 年を経て
     日本(やまと)の大樹に なりにけるかも 」 筆者


        万葉集611 (橘諸兄邸の宴) 完



        次回の更新は12月23日(金)の予定です。
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# by uqrx74fd | 2016-12-16 05:57 | 生活