2024年 03月 25日
万葉集その九百九十二(美しき花々 スミレ カタクリ)
万葉集その九百九十二(美しき花々 スミレ カタクリ)
春到来、花の季節です。
野山にスミレやレンゲが咲き乱れ、まるで紫の絨毯のよう。
そのような美しい景色の中で昼寝しているうちに
夜が明けて目をさました万葉歌人がいます。
「親愛のあまりそこから離れたくない」
という気持の意。
「 片栗の 花の紫うすかりき 」 高濱虚子
冬が去り大地を覆っていた雪が消えるとカタクリの花が
いち早く地上に芽を出し可憐なオペラ色の花を咲かせます。
晴れた日に朝日を受けて開き、花片を極端に反り返らせ、
さながらイナバウァ-のよう。
夕暮れにはその花を閉じ、雨や曇りの日には
開かないお天気次第の気難し屋でもあります。
「 もののふの
八十娘子(やそおとめ)らが 汲み乱(まが)ふ
寺井の上の 堅香子の花 」
巻19-4143 大伴家持
もののふの
宮中に仕える文武百官の人々
多くの氏族がいたので八十(やそ 多くの意)に
かかる枕詞とされている
堅香子(かたかご)
カタクリの古名。
汲み乱ふ
入り乱れて
寺井の上
寺の境内にある湧水の泉
( 泉のほとりへ美しい乙女たちが三々五々、
水桶を携えて集まってきます。
そのかたわらにカタクリの花が咲き乱れて--
何と美しいことよ )
長い冬からようやく待望の春を迎え、
その喜びに溢れんばかり。
こんこんと湧く清泉、入り乱れる乙女、群生する美しい花。
今にも乙女たちの笑い声が聞こえてくるようです。
「 日中を 風通りつつ 時折に
むらさきそよぐ 堅香子の花 」 宮 柊ニ
万葉集992(美しき花々 スミレ カタクリ)完
# by uqrx74fd | 2024-03-25 08:50 | 植物