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万葉集その千二(美しき花々 菖蒲 花橘)

菖蒲
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菖蒲の花
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花橘
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花橘の蕾
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同上
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橘の実
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万葉集その1002美しき花々 菖蒲、花橘)


「 菖蒲の香 ほのと匂ひて 浴後なる 」  

多田 香世子


菖蒲(しょうぶ)は初夏に黄緑色の筆先のような

花を咲かせ昔は「あやめぐさ」とよびました。

今日の美しい花を咲かせる花菖蒲(アヤメ)とは

全く別種のサトイモ科の植物です。


香りが高いので邪気を払い病疫を除くと

言い伝えられ、軒に葺き、頭に挿ざし、

菖蒲湯をたて楽しみます。


「 ほととぎす 待てど来鳴かず あやめぐさ

      玉に貫く日を いまだ遠みか 」 

81490 大伴家持


(ホトトギスが来るのを待っているのだけれども

一向に来て鳴こうとしません。

 あやめぐさを薬玉(くすだま)にさし通す日が

まだ遠いからでしょうね)


「玉に貫く日」とは端午の節句をさしています。

当時、ホトトギスの美しい声を薬玉に通して

いつも身につけていたいという発想が

あったようでこの歌もこれを踏まえたものです。


薬玉は厄除けのお守りとされ二種類あります。


普通は「ショウブとヨモギ」、

あるいは「ショウブと橘の花」を束ねて作ります。

一方、「続命縷(しょくめいる)」といい、

麝香や沈香、丁子などを玉に入れて

造花で飾り、五色の糸に通して作るという

高級なものもありました。


端午の節句が男子の健康と幸せを

祝う日とされるようになったのは鎌倉時代に

「菖蒲」が「尚武」に通じるというところから、

武士の間で流鏑馬(やぶさめ=騎射)

などが盛んに行われ、

子供達は石合戦、菖蒲打ちなど男子中心の勇ましい遊びを

するようになったことに由来するようです。


さらに室町時代には兜人形、江戸時代には鯉幟が作られ、

現在のこどもの日の行事の原型が出来上がりました。


「 駿河路や花橘も茶の匂ひ 」  芭蕉

   

「たちばな」は「(神が)立つ花」即ち、

神霊が現れる花 ともいわれ、

初夏には五弁の白い花を咲かせ、

芳しい香りを漂わせます。                              

万葉集に詠われる橘は69首、

そのうち62首までが花橘。


万葉人はこの花を純潔の象徴として愛し、

冬でも枯れない常緑の葉と輝くような

大粒の実に永遠の生命力を見出していました。


「 橘のにほへる香かも ほととぎす

   鳴く夜の雨に うつろひぬらむ 」 

173916 大伴家持


( 雨の中をホトトギスが鳴いています。

都の橘は今が盛りなのに、

あの芳しい香りは

もう消え失せてしまっていることであろうか)


この歌が詠まれた当時(744)

都は久邇(京都府相楽郡加茂町)にあり、

橘が多く植えられていたようです。


作者は休暇で家族が住む奈良に戻っており、

都の橘の香りは雨に打たれて

盛りを過ぎてしまっただろうかと思いやっています。


花ではなく香りを詠った万葉集の中でも希少な一首。


「 さつき待つ花橘の香をかげば

    むかしの人の袖の香ぞする 」      

古今和歌集 読み人知らず 


 むかしの人とはかって恋を語り合い、

今は高貴な雲の上の人となった二度と会えない女性。


  花橘の純白で清純な色、高く芳しい上品な香りのよう


万葉集1002(美しき花々 菖蒲 花橘))完。



# by uqrx74fd | 2024-05-24 10:20 | 植物

万葉集その千一(新緑)

マグワの新緑
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アオギリ
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カツラ
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リンゴ
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エゴ
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柳 東大寺大仏殿
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万葉集その1001(新緑)


「 目には青葉 山ほととぎす はつ鰹 」  山口素堂


目にも鮮やかな青葉。(視覚)

山々から下りてきたホトトギスの鳴き声。(聴覚)

相模の海は初鰹がたっぷり。(味覚)

「見てよし、聞いてよし、食べてよし」の鎌倉賛歌。


日本列島いたるところで木々がいっせいに芽吹く皐月(さつき)

濃淡鮮やかな緑や紅色が入り交じり目もさめるような美しさ。

いよいよ爽やかな初夏到来です。


「 浅緑 染め懸(か)けたりと見るまでに

     春の柳は 萌えにけるかも 」  

        101847 作者未詳


( 薄緑色に糸を染めて、木に懸けたと見まがうほど 

柳が美しい緑の芽を吹き出しましたよ )


浅緑色は浅葱(あさぎ)色ともいわれ、

葱の芽出しのような黄色味を帯びた緑をいい、

句歌では「浅緑」は柳の新芽、「若緑」は松の新芽にと

使い分けられています。


「うらもなく 我が行く道に 青柳の

  萌(は)りて立てれば  物思ひ出(で)つも 」

       巻143443 作者未詳


( 我らが無心に辿ってゆくこの道。 

傍らに青柳が芽ぶいて立っているので、

ふと物思いにふけてしまった)


うらもなく


   無心に

     裏は裏心、 心配事


萌(は)りて立てれば


    新芽を吹いて立っている


       萌(は)る  

ふくらむ


 物思ひ出(で)つも


     今まで忘れていた故郷に残してきた

     家族を思い出した


作者は旅の途中柳が芽吹いているのを見て、

故郷を思い出し、感慨にふけっています。


懐かしい家の前にも柳が植えてあったのでしょう。


柳は生命力が強く、春一番に芽を吹くことから

我が国では古くから長寿や繁栄の象徴とされ、

その頼もしい生命力と共に

悪い妖気を払う守護神として屋敷の周辺や水辺を

取り巻くように植えられました。


 古来「柳」という字は葉が細かくて枝か柔らかく垂れる

「シダレヤナギ」に用い、

「楊」の方は葉に丸みがあり枝が堅く上向くヤナギ つまり

「ネコヤナギ」に用います。


ネコヤナギは芽が銀色に光り柔らかく

猫の毛に見えるのでその名があり

二~三月頃に芽吹き、

二ヶ月くらい後にシダレヤナギの花が咲きます。


「 不二ひとつ うづみ残して わかばかな 」蕪村


    広い裾野は若葉で埋め尽くされている。

    その中で聳え立つ霊峰富士山。


万葉集1001(新緑)完



# by uqrx74fd | 2024-05-18 10:19 | 植物

万葉集その千(湖上の宴)

藤 亀戸天神 東京
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同上
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同上

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藤  山の辺の道 奈良
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笠間 茨城県

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万葉集その千(湖上の宴)


7485月上旬のことです。

越中国司、大伴家持は都から左大臣橘諸兄の使者、

田辺史福麻呂(たなべのふびと さきまろ)を迎えました。


橘諸兄は家持にとって最大の後ろ盾。

大喜びで歓待し、舟遊びに誘います。


「 垂姫(たるひめ)の 浦を漕ぎつつ 今日の日は

    楽しく遊べ  言い継ぎにせむ 」  

184047 遊行女婦 土師

(うかれめ はにし)


( この垂姫の浦を漕ぎめぐって、

 今日一日楽しく遊んでください。

 後々まで今日の楽しさを言い伝えてまいりましょう。)


「垂姫」

布勢の水海 

富山県氷見市の湖。


作者は高い教養を持つ遊女で歌舞管弦、歌もお手のもの。

上手に座を取り持ち、酒宴を盛り上げます。


舟は屋形船だったのでしょうか。

笛や太鼓、三味線の賑やかな酒宴、

湖上に目をやると藤が真っ盛り。

都ではお目にかかれない風景に客人も

大満足だったようです。


「 神さぶる 垂姫(たるひめ)の崎 漕ぎめぐり

   見れど飽かず いかに我れせむ 」 

         184046 田辺福麻呂


( 何とも神々しい垂姫の崎、 

この崎を漕ぎめぐって、

見ても見ても飽きることがありません。 

あぁ! 私は言葉もなく感激しております。)


舟を漕ぎ巡っていく先々で藤が満開。

大きな木に絡んで幾重にも房を垂らしている。

水面に紫の色が映り込み、この世のものとも思えない美しさ。

都からの使者も大いに満足したようです。


「 めづらしき 君が来まさば 鳴けと言ひし

    山ほととぎす 何か来鳴かぬ 」  

184050 久米広縄(ひろつな)


「珍しいお方がお出でになったら鳴け」

  と云いつけておいたのに

  山時鳥よ、どうして今来て鳴かないのか。 


作者は世話係をしていたのか、

藤の花にそえてホトトギスの声を聞かせようとしたようですが

うまくいかなかったのでボヤキつつ、詫びていますが。

客人は風光明媚な光景に感嘆し、

「まぁまぁ、お気になさらないで下さい」との心遣い。


この上もなく素晴らしい景色と詠われた布勢の水海()は、

江戸時代に干拓され見る影もなくなってしまいました。

今は一条の水路を残すのみで地元では十二町潟と

呼ばれているそうです。


  「 藤垂れて 今宵の船も 波なけん 」 高濱虚子


万葉集1000(船上の宴)完

万葉植物園
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# by uqrx74fd | 2024-05-11 07:11 | 生活

万葉集その九百九十九(こどもの日)

鯉のぼり 古河 茨城県
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こどもたち 六義園 東京
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恵比寿 東京
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傘さす子 春日大社 奈良
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こどもたち  曽我梅林

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スタジオジブリ コピーフリ―

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万葉集その九百九十九(こどもの日)


55日はこどもの日。

子どもたちが元気に育ち大きくなったことを祝います。


もともと病気や災いを避けるため、菖蒲(しょうぶ)を

使った端午の節句といわれる行事であったそうな。


その日に鯉のぼりを飾るのは、

流れが速く強い川でも元気に泳ぎ、滝をも上ってしまうことに

あやかっているそうです。


「 瓜食めば 子ども思ほゆ 

栗食めば まして偲はゆ

いづくより 来たりしものぞ

まなかひに もとなかかりて

安寐(やすい)し 寝さぬ 」  

5802 山上憶良

   

    まくわうり 塩や味噌をつけて食した

   栗

     当時栗は貴重品であったらしく

1升分の値段に匹敵した

まなかひ

    目交(まなかひ)

    眼の前

   

もとなかかりて

    元無(もとな)

 わけもなく


  安寐(やすい)し 寝さぬ

    安寝(やすい)

 一人寝の熟睡


( 瓜を食べると 子どものことが思われる

  栗を食べると それにもまして偲ばれる

  こんなに可愛い子どもというものは

  いったいどういうご縁で我が子として

  生まれてきたのだろう。

  いつも眼前にちらついて

  安眠させてくれないよ )


「 銀(しろがね)も 金(くがね)も玉も 何せむに

       勝れる宝 子に及(しか)めやも 」 

5803  山上憶良


( 銀も金も珠も なんの価値があろうか。

  子どもにまさる宝はないのだ )


子に対する愛情を詠い今なお多くの人の胸を打つ名歌です。


万葉集では生まれたばかりの子や3歳位の幼児をみどり子と

よばれています。

「みどり」という言葉は本来、

「木々の新芽のように瑞々しく生命力に溢れている」

の意とされ、

「瑞々」の「みず」から「みどり」に転訛し、

後に色名になったものです。


「 みどり子の ためこそ乳母(おも)は 求むと言え

     乳()飲めや君が  乳母(おも)求むらむ 」 


            122925 作者未詳


(  乳母は赤子のためにこそ探し求めるものと云います。

  それなのにあなたはいい年をして

私の様な乳母を求めるのですか。)


女が年下の男から求婚され、はねつけた歌のようです。

「 いい年をして私のお乳が欲しいの? 

赤子でもないのに。」


からかいながらやんわりと拒絶。

自身を婆さんに見立てて相手を思いやっている

ユーモアたっぷりの一首です。


「万緑の 中や吾子の歯 生え初むる 」中村草田男


    緑と白い歯の対比が鮮やかな名句。


      万葉集999 こどもの日 完



# by uqrx74fd | 2024-05-04 07:24 | 生活

万葉集その九百九十八(大藤)

大藤 足利フラワーパーク 栃木県
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同上 

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藤棚 同上
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臥竜の藤 奈良万葉植物園

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野生の藤 春日大社境内 奈良

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白藤 同上

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万葉集その九百九十八(大藤)


 栃木県足利フラワーパークの「奇跡の大藤」を

見学してきました。


樹齢160年、600畳敷きの藤棚が二つ並び 日本一の大きさ。

棚から垂れ下がる房は120㎝位まで伸び、まことに美しい。


上品な紫色のほか白藤、薄紅藤と色とりどり、中でも

30mもあろうかと思う高所から垂れ下がる藤棚は圧巻です。


「 大藤の むらさき妙なり 五月晴 」 筆者


奈良は藤の都。


春日山山麓は奈良公園をはじめとして

春日大社周辺、春日山原始林、万葉植物園は藤一色。


都は紫に染まり、大木に巻き付いた房が薫風に吹かれて

ゆらゆら靡くさまはまさに幻想の世界です。


野性のものが多く、杉,檜、松などの

大木に絡みつき高い所から房が垂れ下がっています。


風に吹かれると右に左に揺れて、遠くから見ると

紫の衣が木に掛かっているよう。


「 藤波の 花は盛りになりにけり

        奈良の都を 思ほすや君 」  

3330 大伴四綱 

 

( 藤の花が真っ盛りになりました。

    見事なものでございますなぁ。

    そういえば奈良の都の藤も目に浮かびます。

    あなたさまも懐かしく思われていることでしょうね。)


藤波: 藤の花房が風に吹かれて揺れているさまを

波に譬えた万葉人の雅やかな造語


 九州、太宰府長官の大伴旅人に対して部下の四綱が

「 故郷が恋しいでしょう」と思いやったもの。


「 藤波の 咲きゆく見れば ほととぎす

    鳴くべき時に 近づにけり 」 

184042 田辺福麻呂


( 藤の花房が次々と咲いてゆくのを見ると

  ほととぎすが鳴きだす季節に近づいてきたのですね)


春日山原始林は遠い昔から

春日神社の鎮守の森として維持されてきた

照葉樹林の宝庫です。


新緑の頃、木々の若葉が芽吹いた森は淡い緑に彩られ、

老樹の大木の梢には薄紫色や白い藤がまとわりつき、

花房がいかにも心地よげに風にゆらめいているのです。


右も左も藤、藤、藤。

春日野一帯は藤原氏のゆかりの地ゆえ

藤はシンボルとして大切に保護されてきたのでしょう。


「 藤の花 這うていみじき 樹齢かな」  阿波野青畝


万葉植物園のイチイガシの巨木に絡みつく

臥龍の藤は見事。


万葉集998(大藤)完


# by uqrx74fd | 2024-04-27 13:40 | 植物