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万葉集その九百三十二(梅花の宴)

曾我梅林 小田原市
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同上 枝垂梅
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同上

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青梅梅林 東京都
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同上
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浜離宮庭園 東京都
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皇居東御苑

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同上

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同上
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雪の梅 皇居東御苑
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同上
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八重咲きの八房梅(ヤツブサウメ) 奈良万葉植物園
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万葉集その九百三十二(梅花の宴)


73028日、初春の佳き日、太宰府長官大伴旅人邸で

観梅の宴が開催されました。


総勢32名がそれぞれ1首づつ披露する大歌会です。


旅人によると

「 当日は新春の佳き日で、空気は澄み渡り

風がやわらかくそよいでいる。

梅は佳人の白粉のように咲き、蘭のかぐわしい香りが

漂っている。

明け方の峰には雲が行き来し、松は雲の薄絹を

まとった葢(きぬがさ)のようである。

鳥が林をとびかい,庭には蝶がひらひらと舞い、

空には秋来た雁が南へ帰って行く。

  そんな素晴らしい日に一同楽しそうに

盃を巡らせ恍惚として語り、そして歌を詠んだ。」

とあります。


なお、この序文の冒頭


「 時に、初春の令月(れいげつ)にして、

気淑()く風和(やわら)ぐ」


の中の文字「令和」から採られたのが新元号。

「令」は「清らかで美しい」、あるいは神のお告げ、

さらに「令室」「令息」など相手の人の「妻、兄弟姉妹」を

尊ぶ言葉としても用いられ、

「和」は「平和」「調和」さらに大和(日本国)を表わす

素晴らしい組み合わせです。


「 正月(むつき)立ち 春の来たらば かくしこそ

   梅を招(を)きつつ 楽しき終へめ 」

       巻5815 紀 卿(きの まへつきみ)


( 正月になり春がやってきたら毎年このように

  梅の花を迎えて 楽しみのかぎりを

つくしたいものです)


 「 梅の花 手折りかざして 遊べども

    飽きたらぬ日は 今日にしありけり」

      巻5836  磯氏法麻呂(きじの のりまろ)


( 梅の花を 皆さんそれぞれ手折りかざして

  いくら遊んでも遊び足りないと

  感じるのは今日のような日であったのですね )


「 梅の花 散りまがひたる 岡びには

    うぐいす鳴くも 春かたまけて 」

     巻5838 榎氏 鉢麻呂(かじの はちまろ)


(梅の花が 入り乱れて散る岡のあたりで

 鶯がしきりに鳴いている。

 今はすっかり春の季節。 )


散りまがひたる  散り乱れる


岡辺(おかび)  岡のあたり


春かたまけて   春が近づく

         かたまけて「待ち受ける」の意が

転じて「その時になる」


「 我が園に 梅の花散る ひさかたの

     天(あめ)より雪の 流れ来るかも 」

        巻5822 大伴旅人


( この我らの園に梅の花がしきりに舞い落ちている。

  これは遥か彼方の天空から雪が流れて

  きているのであろうか )


「 霞立つ 長き春日を かざせれど

    いやなつかしき  梅の花かも 」

     巻5846 小野氏淡理(をのうじの たもり)


(霞立つ長い春の日、こうして1日中梅の花を髪に挿して

いるけれども ますます離し難い気持ちです。

あぁ、名残惜しい )


このように余韻をもって宴は終わり、

各々満足そうに三々五々散っていったのです。

かくして我国和歌史上記念すべき32首の歌集が編まれ、

しかも主催者大伴旅人の序文が現在の元号に採用されたとは

旅人さんもさぞかしビックリ、ポンでありましょう。


清楚で気品が高く、早春百花に先駆けて咲く梅は呼び名も多く、 

好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)、

匂草(においぐさ)、風待草(かぜまちぐさ)、

初名草(はつなぐさ)、さらに、花の兄()とも。


「花の兄()」とは室町前期の連歌師、浅山梵燈(ぼんとう)の

「よろづの草木の先に花開くがゆゑに、花の兄と申すなり」

(袖下集:そでしたしゅう)に由来するそうな。


「 ほのぼのと 明けゆく庭に 天雲ぞ

   流れきたれる しら梅散るも 」 石川啄木


  万葉集932(梅花の宴)完



# by uqrx74fd | 2023-02-06 09:53 | 生活

万葉集その九百三十一(霰た走る)

桜の切り株の霰
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高千穂神社の縁側

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自宅の屋根瓦
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山茶花の葉
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芝桜
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高千穂神社境内
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同上
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同上

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万葉集その九百三十一(霰た走る)


「 たちまちに 小粒になりし 霰かな 」 高濱虚子


雪になる一歩手前の気象現象に

「霰(あられ)、雹(ひよう)、霙(みぞれ)」があります。


漢字を分解すると「雨+散」は 「あられ」(霰)


「雨+包む」は「ひよう」(雹)


「雨+英」が「みぞれ」(霙)で英」は花を意味し

雨と雪が混じり花びらに見えることに由来するとか。


天から突然音高く落ちてくる霰(あられ)、

激しく地面をたたきつけて

弾んで転がり、飛び散ってあっという間に消えてしまう。


万葉人はそのような光景に魅かれ「霰打つ」「霰た走り」

などと詠いました。


「 我が袖に 霰た走る 巻き隠し

    消(け)たずてあらむ  妹が見むため 」

        巻102312 柿本人麻呂歌集


( 私の袖に霰がパラパラと飛び跳ねる。

  つつみ隠して消さないでおこう。

あの子に見せるために )

   

人麻呂の若い頃の作か。

霰に心躍らせている躍動感がある1首。


霰た走る 霰が勢いよく飛び跳ねるの意で

表現が秀逸。


消たずてあらむ  消さないようにしておこう


妹が見むため  妹に見せるために


「 霰降り 鹿島の崎を波高み

    過ぎてや行かむ  恋しきものを 」

       巻71174 作者未詳


( 鹿島の崎は波が高く打ち寄せているので、

  素通りしていくことになるのであろうか。

  こんなに心惹かれているのに )


    霰降り 鹿島の枕詞 

霰が降ってかしましいの意


鹿島の崎 茨城県鹿嶋郡(現神栖市)


 鹿島の崎景勝の土地褒めの通過儀礼。

 旅人はその土地の地霊に祈りを捧げ、

ほめることによって 旅の安全を願ったのです。


「 霰(あられ)降り いたも風吹き 寒き夜や

    旗野に今夜(こよひ)我(あ)がひとり寝む 」 

            巻102338 作者未詳


( 霰が降り ひどく風が吹いている寒い夜、

  こんな夜に ここ旗野で俺はたった一人で

寝なければならないのか)


     いたも風吹き  風が強く吹く


旗野   奈良県高市郡高取町

あるいは明日香村か


   周囲は一面原野、野宿覚悟の辛い旅。

  「どこか風をしのぐ場所はないものか」と

   途方にくれている旅人です。

 

 「 椿葉に 霰た走り 跳ねて消ゆ 」筆者


万葉集931(霰た走る)完



# by uqrx74fd | 2023-01-30 16:43 | 自然

万葉集その九百三十(初雪)

皇居東御苑
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同上 白梅

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同上 紅梅

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 雪の梅蕾  高千穂神社
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雪ツリー 同上
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雪帽子  同上
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雪桜  同上
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雪椿  同上
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雪松 同上

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箱根
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筑波山
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筑波山
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万葉集その九百三十(初雪)


大和の都、平城京は低い山々に囲まれた盆地にあり、

冬は厳寒ながら雪は滅多に降りません。


数年に一度の大雪ともなれば天皇から庶民に至るまで大喜び。

雪の歌が何と150余首も残されているのです。


万葉人はなぜ雪をこんなにも歓迎したのでしょうか。

それは、雪は白米とみなされ大雪は豊作、さらに

雪解け水は農作物をうるおすので、五穀豊穣、

国土繁栄の吉兆とされていたからです。


「 池の辺()の 松の末葉(うらば)に 降る雪は

   五百重(いほへ)降りしけ 明日さへも見む 」

            巻81650  作者未詳


( 池のほとりの松の枝先の葉に降る雪よ、

 重々々にも降り積もれ。

 明日も重ねて見ように )


松の末葉(うらば) 松の枝先の葉

            松は長寿を象徴する

めでたい木とされた

   

聖武天皇が平城宮内の西の池で催された

豊明(とよのあかり:宮中の宴会)

安倍虫麻呂(大伴坂上郎女の従弟)が、古歌として披露したもの。


常緑の松に降り敷く雪は国土と天皇の繁栄を寿ぐにふさわしく、

宴席も賑々しく華やかなものだったことでしょう。


「 初雪は 千重(ちへ)に降りしけ 恋しくの

   多かる我れは 見つつ偲はむ 」

    巻204475 大原 真人今城(まひといまき)


   恋しくの   恋しさが(つのる)の意


(初雪よ 幾重にも幾重にも降り積もれ。

 何かにつけて人恋しさがつのる私は

 よくよく見ながら あの人を偲ぼう)


756年の冬、大伴池主宅で宴が行われた時の1首で、

作者が主人池主に対する深い敬慕の念を恋歌仕立てで

述べ、あわせて池主の繁栄を予祝したもの。


なお、万葉集中「初雪」の語はこの1首のみです。


「 白雪の 降り敷く山を 越え行かむ

     君をぞもとな 息の緒に思ふ 」

         巻194281 大伴家持


( 白雪の降り敷く山 その山を越えて行かれるあなた

  そんなあなた様を息が絶えるばかり無性に

  思っております )


752年 橘奈良麻呂が但馬,因幡、伯耆、出雲、石見の

国司の行政を監察する役目,按察使に任じられた時、

林 王(はやしのおほきみ)宅で送別の宴が催され、

列席していた作者が詠ったもの。


  もとな いたずらに ここでは無性に


 息の緒に思ふ 命がけで思う 

息の緒は命の極限を表す


橘奈良麻呂に対する敬慕の念と、旅の安全を切に祈る

情愛がこもった一首です。


「 故郷は いかにふりつむ けふならん

奈良の飛鳥の 寺の初雪 」 上田秋成


 ふりつむ: 降り積む 

      けふ:今日


万葉集930初雪 完



# by uqrx74fd | 2023-01-23 10:35 | 自然

万葉集その九百二十九(富士の高嶺)

吾妻山公園 神奈川県二宮市
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三保の松原 静岡県

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曽我梅林 神奈川県
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稲村ケ崎 鎌倉市
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忍野八海 山梨県
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富士の裾野
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精進湖 山梨県
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三国峠 神奈川県
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三島駅より
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富士5合目
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同上
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ご来光 富士山頂 筆者次男撮影
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万葉集その九百二十九(富士の高嶺)


万葉時代、富士山は噴火を繰り返した活火山でした。

斜面を転がり落ちる溶岩、火と雪を巻き上げた噴煙、

奔流をなして流れる富士川。


万葉人はそのような情景を恋歌仕立てで詠っています。


「 さ寝らくは 玉の緒ばかり 恋ふらくは

    富士の高嶺の 鳴沢のごと 」 

143358 作者未詳


( 共寝するのは玉の緒のような短い時間。

  逢いたくて仕方がない思いは、富士の高嶺の

  鳴沢のように大きくて )


玉の緒ばかり 

玉をつないだ紐のように細く短く


恋ふらくは 

  「さ寝らくは」の肉体的に対し精神的な対句


 鳴沢のごと

高く音を立てる渓谷

  富士山には西部の大沢など岩石が音を立てて

  崩れ落ちる沢が多い。

  その音のとどろきの凄まじさを恋の激しさ

  苦しみに譬えたもの


 現在の富士山にも山が崩落した跡がくっきりと残り

 その凄まじさを伝えてくれています

「我妹子(わぎもこ)に 

   逢ふよしをなみ 駿河なる

    富士の高嶺の 燃えつつかあらむ 」

       巻112695  作者未詳


( いとしいあの子に逢う手だてがなくて

  あの駿河の富士の高嶺のように

  私の胸はひっきりなしに燃え続けるのであろうか )


   逢ふよしをなみ 逢う手だてがなくて

           「よし」の原文は「縁」


活火山で盛んに噴火している様子を

燃えるような恋に譬えた雄大な1首。


「霞居る 富士の山びに 我()が来なば

    いづち向きてか 妹が嘆かむ 」 

       143357 作者未詳


( 霞が立ちこめている富士の山裾に

 私が入り込んでしまったら

 どちらの方向を向いてあの子は溜息をつくことだろうか)


 山び 山裾 山のほとり


 いづち向きてか 方角が分からず所在を確かめられないさま


富士山を西に臨む土地の人が 妻を置いて旅に出るときの感慨。

男は防人に徴集されたのでしょうか。


広い富士の裾野を別れの悲しみに耐えながら歩いて行く。

見送る妻は次第に遠ざかる姿を点になるまで見つめている。

突然霞が立ちこめて、周りが見えなくなった。


「あぁ、妻はどちらの方に向かって手を振ったら

 よいのかわからなくなっただろうな 」


「 日の本の 大和の国の 

   鎮めとも います神かも  

宝とも なれる山かも 

  駿河なる 富士の高嶺は 

   見れど飽かぬかも 」

    3319 高橋虫麻呂歌集(長歌の一部)


 ( 富士は日本の鎮めの神の山、国の宝

   何度見ても飽きないことよ )


万葉集929(富士の高嶺) 完



# by uqrx74fd | 2023-01-16 08:16 | 自然

万葉集その九百二十八(蜻蛉島)

天の香具山 後方
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畝傍山

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耳成山
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耳成山の春
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平城京朱雀門 後方 若草山 春日山 右
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金剛葛城山脈
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青垣 吉野山から
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春日山 とんど焼き
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若草山焼き
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生駒山の夕焼け
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万葉集その九百二十八(蜻蛉島)


今から約千三百年前のことです。

第三十四代舒明天皇が国見をされました。


「国見」とは春の初めに聖なる山に登り、

国土を俯瞰(ふかん)しながら、そのにぎわいを褒めることにより

豊かな秋の実りを予祝し土地の繁栄を祈る儀式です。


香具山の頂に立った天皇は、厳かに、力強く、

朗々と詠いだされます。


「 大和には 群山(むらやま)あれど 

とりよろふ 天(あめ)の香具山


  登り立ち 国見をすれば 

国原は けぶり立ち立つ 

海原(うなはら)は かまめ立ち立つ


  うまし国ぞ 蜻蛉島(あきづ しま)

大和の国は 」 

巻1-2 舒明天皇

語句解釈


 「群山(むらやま)」 多くの山


 「とりよろふ」 とりわけ神々しい


 「国原」 広々とした大地


「けぶり立ち立つ」 炊煙の煙が立ちに立っている


「海原」 湖を海に見立てたもの

 

「かまめ」白い鳥を海のカモメに見なしたもの


「うまし国」美味いの意から転じて美しい国


「蜻蛉島」(あきづしま) 

秋津島とも書き日本国をさす (後述)

「意訳」


( 大和には多くの山々があるけれども、その中でも

木々も豊かに生い茂り、美しく装っている香具山。


また、神話の時代に天から舞い降りたと伝えられる

天の香具山。


その頂に登り立って国見をすると、

国土には盛んに炊煙の煙が立っている。


民の竈(かまど)は豊かなようだ。


海原(広い池)には、かもめ(ゆりかもめ)が盛んに飛んでいる。

 海の幸も豊かなのであろう。


この上もなく美しい国よ。

豊穣をもたらすという蜻蛉が盛んに飛び交う

わが日本の国よ  ) 

「蜻蛉」は「あきづ」と読み、「とんぼ」の古名で、

その語源は「秋に多くいづる」が略されたもの。


古代、蜻蛉は実りをもたらす田の聖霊と考えられており、

収穫前に群れ飛ぶのは「豊作の吉兆」。


文献での蜻蛉島の初見は日本書紀、神武天皇の期と古く

天皇が国見をして

「蜻蛉(あきづ)の臀呫(となめ)の如くにあるかな」と

言われたところから「アキズシマ」の名が起こったと

伝えられています。


「臀呫」(となめ)とは「とんぼ」の雄雌が尾をくわえ合い、

輪を作って交尾をする様子。


山々に囲まれた美しい国の地形と豊饒をもたらす

蜻蛉を重ねてイメージされたものと思われますが、

古代の天皇も面白い表現をされたものです。


「国原はけぶり立ち立つ 

海原はかまめ立ちたつ」の対句は


土と水が共に生気に満ちて躍っていることを述べた表現で、

国土の原核であり農耕に必須の媒材である

「土」と「水」とが充実しているということは、

国土の繁栄、一年(ひととせ)の五穀豊穣が確約されたことを

意味しています。


なお、この歌の冒頭の大和は天皇が立つ大和(奈良)であるが、

最後の句の大和は映像を大きく広げて国全体を意味する

ヤマト(日本)に変貌しています。


よって、この歌は国土の美しさを褒め称えたものであると

同時に、国土の繁栄を祈念した、万葉集の初まりを飾るのに

相応しい秀歌といえましょう。


「 大海に 浮く蜻蛉島  強くあれ  

謙虚であれ 波高くとも 」 筆者   


万葉集928(蜻蛉島)完



# by uqrx74fd | 2023-01-11 08:59 | 自然