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万葉集その百十二(貌鳥:かほどり)

貎鳥とはかわせみ(翡翠)のことでヒスイ、ショウビンともよばれています。

「かわせみ」の名の由来はその鳴き声が蝉に似ているところからきているといわれ、
「虫の蝉」と区別して「川の蝉」というわけです。

雄を「翡」、雌は「翠」といい、背中は光沢のあるコバルトブル-、腹面がオレンジ、
嘴は赤(雌)の美しい鳥で「空飛ぶ宝石」と讃えられています。

鉱物の翡翠(ヒスイ)はこの鳥の羽色から名付けられたもので、
宝石の名前を鳥にあてたのではなかったのです。

「 朝ゐでに 来鳴く貎鳥 汝(な)れ だにも
    君に恋ふれや 時 終(を)へず 鳴く 」 
            巻10-1823 作者未詳


( 朝早くから水汲み場にきて、ひっきりなしに鳴いている貎鳥さんよ。 
  お前までも わが君に恋こがれて鳴いているのですか? )

 「ゐで」(井堤):水汲み場として川の流れを塞き止めたところ

翡翠はキョロキョロロと声を震わせるように鳴きます。
翡翠の雄は雌に魚を贈って求愛し、つがいで崖に穴を掘って巣を作るそうです。

「 貎鳥の 間なく しば鳴く 春の野の
        草根の繁き 恋もするかも 」 
            巻10-1898 作者未詳


( 貎鳥がしきりに鳴いている春の野。その野には草がびっしりと深く茂っています。
  私もその草のように深く、そして貌鳥の鳴き声のように絶え間なくあなたを
  恋い慕い続けております)

男性を慕っている女性の歌と思われ、鋭い声でしきりに鳴く貌鳥によせて
恋人への想いを訴えています。

「貎鳥(カホトリ)」は万葉集に登場する鳥の中でも種類を特定するのが極めて
難解なものとされています。

万葉学者で動物に詳しい、東 光治氏は

『 「貎鳥(カホトリ)」とはその鳴き声によって名付けられたともいわれ、
 恐らく最初はカッコウに対して呼ばれたらしいが、後に美しい姿の鳥、
 即ち、「カヲヨドリ」までもカホドリと呼ぶようになりカワセミや雉なども
 カホドリの仲間入りをした。そのため、とうとう何を指したのか
 不可解な鳥名となった』  と述べられています。(万葉動物考)

郭公、アオバト、カハカラス、トラツグミ、ヒバリ、フクロウ、キジ、
ヨタカオシドリ、など諸説あり定まっておりませんが、
ここでは翡翠説に従いました。

 「 翡翠は 川の宝石 光り飛ぶ 」 竹葉 英一

by uqrx74fd | 2009-03-08 11:31 | 動物

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