2009年 03月 08日
万葉集その二十一(河鹿:かじか)
雄のみが「フィフィフィフィフィフィ、フィーフィー」と鳴き雌を求めます。
古代の人達もこの美しい声を楽しみながら詠いました。
当時「かはづ」といえばすべて河鹿蛙のことで、平安初期から他の種類の蛙と
混同し始めいつの間にか蛙全般を指すようになりました。
「 神(かむ)なびの 山下響(とよ)み 行く水の
かはづ鳴くなり 秋と言はむとや 」
巻10の2162 作者未詳
河鹿は晩春から鳴き出して初秋には鳴きやみます。
「神なび」とは神の籠るところで奈良の三輪山、川は飛鳥川と推定されています。
( 神なびの山下も鳴り響くほどに流れ行く水の中で河鹿がしきりに鳴いている。
もう秋だと言おうとしているのかなぁ )
「上(かみ)つ瀬に かはづ妻呼ぶ 夕されば
衣手(ころもで)寒み 妻まかむとか 」
巻10の2165作者未詳
万葉人も河鹿がなくのは雄だけと知っていたようです。
作者はただ1人いる淋しさを河鹿に託して詠っています。
「まかむ」は枕にする意で共寝の事です。
( 上の瀬で河鹿がしきりに妻を呼んでいる。
夕方になると衣の袖のあたりが寒いので
妻と共寝しょうというのであろうか )
「 佐保川の清き川原(かわら)に鳴く千鳥
かわづと二つ忘れかねつも 」
巻7の1123 作者未詳
( 佐保川の清らかな川原で鳴く千鳥と河鹿。忘れようにも忘れられないなぁ。
早く旅を終えて家に帰りたいよ )
佐保川は春日山に発し、奈良市を西南に流れる川で千鳥と河鹿が名物と
されていました。
今は千鳥も河鹿も姿を消し、桜並木と柳が往時をしのばせてくれています。
by uqrx74fd | 2009-03-08 10:00 | 動物