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万葉集その十二(万葉人は掛け算がお得意)

私達が小学校で習う掛け算の9×9。千三百年前の人たちは
この計算に習熟していたことが明らかにされています。

今回は万葉仮名のお話です。まずは歌をご紹介します。

 「 若草の 新手枕(にひたまくら)を まきそめて

    夜をや隔てむ にくくあらなくに 」 

                巻11の2542  作者未詳


 どこか遠くへ旅する新婚早々の男の心境を表した歌で

 ( 若草のような新妻の手枕 その手枕を折角まきはじめたのに
 これから幾夜も会えないというのであろうか。
 可愛いくって仕方がないのに )

 さて掛け算ですが この歌の結句「にくくあらなくに」 の「にくく」 は原文で
 「二八十一」 となっています。 「二」 は 「に」 
 「八十一」は九九=八十一で 「くく」 を表すのです。

 万葉集の原文はすべて漢字で書かれています。
 当時平仮名や片仮名はまだ発明されておらず、
 万葉人は漢字の意味や音、訓をあれこれ工夫して
 日本語に表記しました。

 猪 (しし) は 十六=四四(しし) 
 平仮名の「し」は「二二」 または「重二」、「とを」は「二五」 と
 掛け算を楽しんで使用して様子が窺われます。

 又、擬声語として、例えば 「いぶせし」=(うっとうしい)の「いぶ」を示すのに
 馬音蜂音と書き「いぶ」と読ませます。
 これは万葉人が馬音を「イーン」、蜂音を「ブーン」と聞いたようです。

 その他、丸雪(あられ) 未通女(をとめ) 去家(たび) 暖(はる)
 寒(ふゆ) 往来(かよう) など手をたたきたくなるような上手な表現が
 多数あります。

 一風変わったところでは 「義之」 を手師(てし)と読ませ
 上手に字を書く人を表し中国の王義之の存在を知っていたものと
 思われます。

 歌の中には難解なものも多くあり後代の人達はその解読に
 難渋を極めました。
 遂に951年、村上天皇の勅命で万葉集に読み仮名をつける
 訓点作業プロジエクトチームが発足し
 現代の読み仮名へのスタートを切りました。

 その後現在に至るまで専門家による解読、研究がなされていますが、
 未だに読み仮名が確定しない歌もいくつか残されています。

by uqrx74fd | 2009-03-08 09:51 | 生活

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