2009年 03月 08日
万葉集その十二(万葉人は掛け算がお得意)
この計算に習熟していたことが明らかにされています。
今回は万葉仮名のお話です。まずは歌をご紹介します。
「 若草の 新手枕(にひたまくら)を まきそめて
夜をや隔てむ にくくあらなくに 」
巻11の2542 作者未詳
どこか遠くへ旅する新婚早々の男の心境を表した歌で
( 若草のような新妻の手枕 その手枕を折角まきはじめたのに
これから幾夜も会えないというのであろうか。
可愛いくって仕方がないのに )
さて掛け算ですが この歌の結句「にくくあらなくに」 の「にくく」 は原文で
「二八十一」 となっています。 「二」 は 「に」
「八十一」は九九=八十一で 「くく」 を表すのです。
万葉集の原文はすべて漢字で書かれています。
当時平仮名や片仮名はまだ発明されておらず、
万葉人は漢字の意味や音、訓をあれこれ工夫して
日本語に表記しました。
猪 (しし) は 十六=四四(しし)
平仮名の「し」は「二二」 または「重二」、「とを」は「二五」 と
掛け算を楽しんで使用して様子が窺われます。
又、擬声語として、例えば 「いぶせし」=(うっとうしい)の「いぶ」を示すのに
馬音蜂音と書き「いぶ」と読ませます。
これは万葉人が馬音を「イーン」、蜂音を「ブーン」と聞いたようです。
その他、丸雪(あられ) 未通女(をとめ) 去家(たび) 暖(はる)
寒(ふゆ) 往来(かよう) など手をたたきたくなるような上手な表現が
多数あります。
一風変わったところでは 「義之」 を手師(てし)と読ませ
上手に字を書く人を表し中国の王義之の存在を知っていたものと
思われます。
歌の中には難解なものも多くあり後代の人達はその解読に
難渋を極めました。
遂に951年、村上天皇の勅命で万葉集に読み仮名をつける
訓点作業プロジエクトチームが発足し
現代の読み仮名へのスタートを切りました。
その後現在に至るまで専門家による解読、研究がなされていますが、
未だに読み仮名が確定しない歌もいくつか残されています。
by uqrx74fd | 2009-03-08 09:51 | 生活