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万葉集その五百十四 (初梅)

( 早くも満開の梅  皇居東御苑 )
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( メジロ  同上 )
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( 同上 )
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( 白梅の開花は数輪  同上 )
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立春を過ぎると気持ちが華やぎ「梅はまだかいな」とそわそわいたします。
冬枯れの中に春の兆しを探り、花に出会えなくても「それはそれでよろしい」と
心得るのが探梅の心馳せだそうですが、「せめて一輪なりとも」と期待するのが凡夫の悲しさ。

寒風吹きすさぶ中、皇居東御苑に出かけました。
数日前に雪が降り、日射しの当たらない石垣の下には斑模様の白い塊が残っています。
緑鮮やかな松、黄金色の実をたわわに付けた橘の他は寂寥とした冬景色。
裸の桜並木はいかにも寒そうです。
近づいて枝の先をよく見ると小さな蕾がほんの少しだけ頭を出し「何時出ようかな」と思案気のよう。

「さぁて 梅は 」と見渡すと白梅が一輪また一輪、紅梅は七分咲。
先ずは満足しながら「もう十日も経てば見頃かな」思いながらゆっくりと
坂道を下って行きました。
すると、何と! 満開の梅が枝を大きく広げているではありませんか。
しかも艶やかなピンク色です。

「 霜雪も いまだ過ぎねば 思はぬに
       春日の里に 梅の花見つ 」 
                            巻8-1434 大伴宿禰三林(既出)

( 霜も雪もまだ消えやらぬのに 思いもかけず春日の里で 梅の花を見たことよ )

「春日の里に」を「御苑の庭に」と置き換えると我が心境にぴったり。
さらに幸運にもメジロが花を啄んでいるのです。
飛び交う度に枝花が揺れますが、散ることもなく静かに晴れやかに咲き続けています。

「 わがやどの 梅の下枝(しづえ)に 遊びつつ
    うぐひす鳴くも  散らまく惜しみ 」
                      巻5-842 高氏海人(かうじ あま)

( この我らが庭の梅の下枝を飛びかいながら鶯が鳴き立てている。
  花の散るのをいとおしんで )

メジロは鳴きませんでしたが、美しい羽色を存分に見せてくれました。
海外からの客さんも大喜び。
次から次へと記念撮影です。

「 梅の花 咲けるがなかに ふふめるは
     恋か隠れる 雪を待つとか 」 
                 巻19-4283 茨田 王(まむたの おほきみ)


( 梅の花 この花が咲いている中に まだ蕾のままのものがあるのは
  訪れて来る人を待つ思いをこめてのことでしょうか
  それとも、雪を待ってのことなのでしょうか )

古代、歌の世界では白梅と雪、鶯との取り合わせが好まれました。
散る花びらを雪のようだと詠い、美しい鳴き声にうっとりと聴き惚れ
春の訪れを寿いだのです。

梅の一角から離れるとまだ冬の世界ですが、大手門の近くに黄色い花。
近づくと馥郁とした香りが漂ってきました。
先駆けの花、蝋梅です。

これからは三寒四温の日々。
本格的な春の訪れも近いことでしょう。

     「 探梅や 枝の先なる 梅の花 」    高野素十

by uqrx74fd | 2015-02-05 17:52 | 植物

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