万葉集その六百六十一 (楽しみは)

( 大伴旅人の最大の楽しみは酒   奈良万葉列車 )
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( 梅の下で宴会   奈良万葉植物園レリーフ )
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( 屋内での宴       同上 )
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( 打毬、双六、 蹴鞠    奈良万葉文化館)
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( 貴族の歌会     同上   画面をクリックすると拡大できます )
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(  琴         同上)
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(  伎楽面で踊る   同上 )
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   万葉集その六百六十一 (楽しみは)
  
「 たのしみは 意(こころ)に かなふ  山水の
      あたりしずかに 見てありく時 」      橘 曙覧


江戸時代の歌人、橘 曙覧 (たちばな あけみ)は「独楽吟」という歌集を編み、
「たのしみは」で始まる52首の歌を残しました。
いずれも身近でささやかなことに生きる楽しみを感じているものばかりで、
上記の歌もそのうちの1首です。
曙覧は名誉栄達を望まず、生涯日々の小さな楽しみを重ねることにより、
心の平穏と大きな幸せを得たといえましょう。

万葉人が「楽しみ」を詠ったものは15首.
勿論、他に恋など楽しいことは多くあったでしょうが、本稿は「楽しみ」という
言葉を使われたものに限定してピックアップしてみました。

「 生ける者(ひと) 遂にも死ぬる ものにあれば
     この世にある間(ま)は 楽しくあらな 」 
                         巻3-349 大伴旅人

( 生ある者はいずれ死ぬもの。
せめてこの世にいる間は、楽しく過ごしたいものだ )

では何をもって楽しみとするか?
この歌は酒賛歌の中の1首で、酒好きな作者の人生の最大の楽しみは酒、
できることなら酒壺にでもなりたいと詠うほど徹底していました。
そして
「 この世にし 楽しくあらば 来む世には
        虫に鳥にも 我(わ)れはなりなむ 」 
                         巻3-348  大伴旅人

(  この世で酒を飲んで楽しく暮らせるなら、
来世は虫にでも鳥にでもなってしまってもかまわないよ。)

と詠うのです。


「 矢釣山(やつりやま) 木立も見えず 降りまがひ
     雪の騒(さわ)ける 朝(あした)楽しも 」 
                            巻3-262 柿本人麻呂

( 矢釣山の木立も見えないほどに粉々と降り乱れて
      雪のさわさわと降り積もるこの朝。
      何と楽しいことでしょうか。)

天武天皇の子、新田部皇子の何かの祝いの席で詠ったもの。
雪が降り積もると豊作、国が豊かになり幸先が良いものとされていました。
矢釣山は奈良県明日香村八釣の東北にある山。


「 かくしつつ あらくをよみぞ たまきはる
      短き命を 長く欲(ほ)りする 」  
                        巻6-975 安倍広庭 

( こうして過ごすのが楽しいからこそ 人は短い命であるのに
 長かれと皆が願うのですね )

「あらくをよみぞ」: 「ありよしぞ」(有り好しぞ)の変形で 「楽しいからこそ」
「たまきはる」:    命の枕詞 たま(命)の極限までの意 

作者は中納言(大納言の補佐役) 
親しい人たちの宴席でのもの。  
歌の通り、当時としては長命74歳まで人生を楽しんだようです。

毎日毎日が楽しければ長生きしたくなりますね。

「たのしみは 心をおかぬ友どちと
            笑ひかたりて 腹をよるとき 」           橘 曙覧


       万葉集661 (楽しみは) 完


   次回の更新は11月10日(金)の予定です。
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by uqrx74fd | 2017-11-30 10:58 | 生活

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