万葉集その六百七十八 (奈良の桜)

( 浮御堂  奈良公園 )
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( 大仏殿の裏から二月堂にかけて桜が多い )
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( 薬師寺遠望  大池前の公園より )
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( 河俣神社前を流れる曽我川  ここから金剛葛城連山が望まれる  近鉄南大阪線坊城駅徒歩5分)
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( 耳成山   藤原京跡の近くで )
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( 美和の森 後方三輪山  山の辺の道 )
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(  長谷寺  桜が終わると牡丹 )
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万葉集その六百七十八 (奈良の桜)

奈良の桜といえば

「 いにしへの 奈良の都の八重桜
    けふ九重(ここのへ)に にほひぬるかな 」  
                 伊勢大輔(いせのたいふ) 詞花集 百人一首


と詠われた八重桜。
ところがナラヤエザクラという品種は増殖力が弱い上、管理を怠ったためか
今はほとんど見られなくなっているのは誠に残念至極です。

「 『 いにしへの 寧楽(なら)のみやこの やえざくら 』―
              ふとくちずさみ 涙うかべり  」    土岐善麿

しかしながら山桜やソメイヨシノなどは

「 あをによし 奈良の都は 咲く花の
   にほふがごとく 今盛りなり 」 
                    巻3-328 小野 老(おゆ)


と昔のまま。

又兵衛桜(大宇陀)、仏隆寺の樹齢900年の老樹、氷川神社のしだれ桜などが
よく知られていますが、名もない桜も奈良公園一帯、佐保川、吉野山、
長谷寺、平城京跡は言うに及ばず山辺の道の美和の杜、飛鳥石舞台、
郡山城跡、など旧跡名所いたるところで咲き誇り桜の都は健在です。

「見渡せば 春日の野辺に 霞立ち 
     咲きにほへるは 桜花かも 」 
                   巻10-1872 作者未詳

( 春日野に霞が一面に立つ中、輝くばかりに色美しく咲く桜は
  今真っ盛りです)

春日野は現在飛火野とよばれる奈良公園一帯です。
浮見堂、東大寺、戒壇院、二月堂周辺に咲く桜も多く、
古い寺院と調和して実に美しい。
さらに奈良県庁の屋上から眺める奈良市内は若草山、春日山、佐保丘陵など
俯瞰でき、春爛漫の景観です。

「 阿保山の 桜の花は 今日(けふ)もかも
     散り乱(まが)ふらむ  見る人なしに 」 
                          巻10-1867 作者未詳

( 阿保山の桜の花は 今日もまたいたずらに散り乱れているだろうか。
 見る人もいないままに )

作者は昨日見た桜の花びらの乱舞が目に焼き付いていたのでしょうか。

「 散る桜の美しさを愛でる人がいないのは惜しいなぁ。
  自分も見たかったのに今日も行けないのが残念だ 」

阿保山は奈良市の西北の丘稜、在原業平ゆかりの不退寺の裏山とされていますが、
その近くに光明皇后が晩年住んでいたとされる法華寺や磐姫皇后の御陵もあり
少し足をのばすと平城京跡。

ここから西の京の薬師寺、唐招提寺、秋篠寺、西大寺も近い。
薬師寺の裏側大池前の公園から桜越しに眺めると東塔,西塔、金堂が
一望でき絵になる景観です。

「 龍田山 見つつ越え来し 桜花
    散りか過ぎなむ  我が帰るとに 」 
                      巻20-4395 大伴家持

( 龍田山、 その山を越える時に眺めながらやってきた桜。
 私が帰る頃には散り果ててしまっているのではなかろうか)

兵部少輔として防人の管理をしていた作者は当時都と難波を頻繁に行き来
していたようです。
龍田山は奈良県生駒郡三郷町の生駒山連峰の一.
難波との往復によく利用されていた道です。
その麓を流れる龍田川は紅葉の名所としても有名。

数年前、佐保丘陵の山道を歩いていると三本の大きな桜が今盛りなりと
咲いていました。
あまりの見事さに下から眺めていると、突然一陣の風が吹き上がって
花を散らしはじめ、前が見えなくなるくらいの花吹雪。
次から次へと舞い上って流れてゆきます。
周りに誰もいない。
ただただ呆然としながら夢の世界に浸っていました。

「 よしさらば こよひは花の蔭にねて
        嵐の桜 ちるをだにみむ 」  小沢蘆庵 

以下は佐野藤右衛門桜守のお話です。

『 桜は全部下を向いて咲くんです。
  ですから中へ入り込んでみて、初めて桜もよろこぶんです。
  横から見てはあきませんものね。
  そやからどんな昔の絵を見ても、みんな幹のまわりで花見を
  してますやろ。
  花が覆いかぶさってくれるのやから、そこへ入ればいいんです。

  - - 桜も早よ来てくれよというて待っているんですわ。
  それを囲んで、人から離してしまうと寂しがりよる。

  わしらでも、桜を見せてもろうたときは自然にぽんぽんぽんと
  幹を叩いてやりまんな。
  そうするとやっぱり花もなびきよるものね。

  ふるふるふると笑いよる。
  その感覚はなんともいえんものがあります。 』
                           ( 桜のいのち庭のこころ 草思社 より )

 桜も「笑ろてんか」なのですね。

  「  花の寺 少女の笑ひ 二間越ゆ 」 飯田龍太


    万葉集678(奈良の桜) 完


    次回の更新は4月6日(金)の予定です。
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by uqrx74fd | 2018-03-29 20:26 | 植物

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