万葉集その六百八十一 (楽しみは2)

( 楽しみは 親しき友と うち集い 桜の山を めぐり歩くとき  筆者 奈良山辺の道)
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( うま酒  大神神社  奈良 )
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( 大伴家持が絶賛した立山連峰  雨晴海岸 富山県 )
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(  若草山焼き    奈良  委細は本文で )
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万葉集その六百八十一 (楽しみは2)

「 たのしみは 庭にうゑたる春秋の
         花のさかりに あへる時々 」  橘 曙覧

四季の移り変わりが美しい日本列島。
春は花、夏、青葉、ホトギス、秋は月、紅葉、そして冬の雪。

娯楽施設など余りなかった昔、貴族、官人たちの何よりの楽しみは宴会。
親しきものたちが四季折々打ち集い、自然の風物を愛でつつ
盃を酌み交わしながら歌を披露する。
庶民たちは歌垣や祭りなどで踊り、詠い、そして恋をする。
いずれも楽しげな歌ばかりです。

「 しなざかる 越の君らと かくしこそ
     柳かづらき  楽しく遊ばめ 」 
                    巻18-4071 大伴家持

( 山野層々として、都から遠く隔たったこの越の国の方々、
      これからもこのように柳を蘰にして、楽しく遊びましょうや。)

越中国司として赴任した作者が郡司の子弟多数と宴をした時の歌。

「級放(しなざか)る」は「階段状に山野、坂が重畳して遠い」の意で(伊藤博)
家持の造語。

 遥々山を越え都から越中に赴任した作者は海越に聳え立つ
立山連峰や、鳥鳴き花咲く野の美しさに感激し、鄙びた風情ながら
越の国は神秘にして佳き国と感じたようです。

希望と期待に満ち、喜びがあふれるような一首で、作歌活動も
充実した日が始まります。

柳かずらき: 柳を蘰(かづら:髪飾り)にして
         柳は生命力が強く、身に付けてあやかろうとしたもの。


庶民にとっての楽しみは祭や歌垣、そして逢い引き。

「 春日野は 今日はな焼きそ  若草の
      つまもこもれり 我もこもれり 」 
                          古今和歌集 よみ人しらず

( 春日野は今日だけは特別に焼かないで!
  愛しい人も、おれも草の中に隠れているのだから )

背丈の高い草むらで睦み合う二人。
そんなことを知らない農夫が恒例の野焼きを始めた。
「オーイ! ここは焼くな、焼くな!
 二人で楽しんでいる最中だ。
 折角逢えたのに、今日だけは勘弁してよ。」
 と叫ぶ男。

「な○○そ」は禁止をあらわす用語で「な焼きそ」は「焼くな」と
強い調子で叫んでいる様。

この歌は次の歌を本歌取りしたものです。

「 おもしろき 野をば な焼きそ 古草に
    新草(にひくさ)交じり 生(お)ひば 生ふるがに 」
                        巻14-3452 作者未詳

( 楽しい思い出が一杯つまっているこの野原をそんなに急いで焼かないでくれ。
  それに新芽もまだ出かかったばかりで可哀想ではないか。
  若草になるまで伸びるだけ伸ばしてやろうよ )

「おもしろき」は「見ていて楽しい」の意で作者は古草を見ながら、
かって若草のもとでの逢引きを思い出しているのでしょうか。

「生ふるがに」は「生ふるがね」が訛ったもので、
「新草が生い茂りたいと思っているのなら、その通りにしてやってほしい」の意。

野焼き作業をしている人に向かって呼びかけた形ですが、草木に対する愛情と、
思い出の場所を焼いてくれるなという淡い恋心が籠ります。

「 玉敷きて 待たましよりは  たけそかに
      来る今夜(こよひ)し 楽しく思ほゆ 」

                   巻6-1015 榎井王(えのゐの おほきみ)


( 玉を敷いて今か今かと待っているよりも、だしぬけに伺ったほうが
     楽しかったのではありますまいか )

            「玉敷きて」: 庭などを掃き清め万端の準備をして
            「たけそかに」:「猛そかに」 無遠慮に

737年正月、門部王(長皇子の孫 天武天皇曾孫)の屋敷に
橘 佐為 (左大臣 諸兄の弟) 以下貴族の子弟が予告もなしに突然押しかけ、
わいわい大騒ぎした折の歌。

作者の榎井王は天智天皇の孫(父、志貴皇子)で、親しい者同士の無礼講、
主人、門部王は友人達の突然の来訪に驚きながらも、
さぞ嬉しかったことでしょう。

親しき友は昔も今も人生の宝物です。

   「 たのしみは とぼしきままに 人集め
            酒飲め 物を食へといふとき 」    橘 曙覧


           万葉集681 (楽しみは2)  完


             次回の更新は4月27日(金)の予定です。
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by uqrx74fd | 2018-04-19 16:58 | 生活

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