万葉集その七百七 (雲よ!)

( 畝傍山  飛鳥甘樫の丘から  奈良 )
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( 飛鳥稲渕の棚田 )
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( 浅芽が原  奈良公園 )
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( 薬師寺   後方若草山 御蓋山   奈良 )
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万葉集その七百七 (雲よ!)

「 春日にある 御笠(みかさ)の山に  居る雲を
    出(い)でみるごとに 君をしぞ思ふ 」
               巻12-3209  作者未詳

( 春日の御笠の山にかかっている雲
 その雲をみるごとに旅先にいるあの方のことが
 思われてなりません )

万葉集には雲の歌が200首以上見られますが、その大半が恋の歌です。
当時の人は雲に魂が宿ると信じており、眺め続けることにより
その人と意思が通じ合えると思っていました。
そして、朝に夕べに「あなた!」「お前さんよ!」と呼びかけていたのです。

「 白雲の 五百重(いほへ)に隠り 遠くとも
    宵さらず見む  妹があたりは 」 
                    巻10-2026  作者未詳

( 白雲の幾重にも重なる彼方に隠れて、こうして隔たっていても
 毎晩毎晩欠かさずに見ていよう。
 あの子がいるあたりを。)

     五百重(いほへ) :幾重にも重なり
     宵さらず見む: 「宵」は日没から夜中までの時間帯を漠然とさす
         「さらず」は ~ごとに
     妹あたりは: 「妹あたりをば」の意

 一連の七夕歌の中に見える、彦星が織姫を慕う1首ですが、
遠くに旅する男が、故郷の恋人を想って詠ったものとも解釈できます。

「 ひさかたの 天飛ぶ雲に ありてしか
      君を相見む  おつる日なしに 」 
                         巻11-2676 作者未詳

( 天空を飛び通う雲になりたい。
 そうすれば、欠ける日など一日もなしに、あの方にお逢い出来ましょうに。)

    「おつ」る日なしに:「おつ」は欠ける 

雲を眺めているだけでは満足できない。
出来ることなら雲になって毎日愛する人の許へ行きたい。
恋する乙女の切ない思いです。

「 夕ぐれは 雲のはたてに ものぞ思ふ
     天つ空なる 人を恋ふとて 」 
                  よみ人しらず 古今和歌集

( 夕暮れになると 雲の果ての方を眺めて物思いにふけっています。
  私をうわの空にさせるあの人を恋しく思って。)


天空の果てまで広がる夕焼け。
愛しい人を瞼に浮かべながら、うっとりしている女性の姿を彷彿させる
洗練された美しい恋歌です。

「 天つ風 雲の通ひ路 吹き閉じよ
        をとめの姿 しばしとどめむ 」  
                    僧正遍照 古今和歌集 百人一首

( 空を吹く風よ、雲間の通路を吹き閉ざしてくれ。
    舞が終わって帰ってゆく天女たちの姿を
    もうしばらくここにとどめておきたいのだ。)

新嘗祭のあと天皇が新しい米を食し、群臣にも賜った後の宴
(豊明会:とよあかりのせちえ)での歌。

若き遍照(宗貞)は五人の美しい乙女たちが披露した「五節(ごせち)の舞」の
あでやかな姿に魅了されて、どうにもならない名残惜しさを詠った
即興名歌です。

   「ゆく秋の 大和の国の 薬師寺の
        塔の上なる  一ひらの雲 」 佐佐木信綱


       万葉集707 (雲よ!)完


    次回の更新は10月26日(金)の予定です。
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by uqrx74fd | 2018-10-18 10:45 | 自然

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