万葉集その七百十七 ( 新年の歌:亥)

( 謹賀新年 本年もよろしくお願いします。  富士の夜明け 精進湖 )
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 ご来光 南アルプス連峰 )
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( 新年能  翁  春日大社 奈良 )
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( 平城京跡大極殿 壁画  奈良 )
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( 鳥獣戯画  高山寺  京都 )
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( 新しき年の初めの初春の 今日降る雪のいや重け吉事 大伴家持  亥 谷中で) 
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万葉集その七百十七 (新年の歌 亥)

「 正月(むつき)立つ 春の初めに かくしつつ 
                   相(あひ)し笑みてば 時じけめやも  
                           巻18-4137 大伴家持
( 正月、めでたい春の初めに 
      このようにお互いに笑みを交わしているのは
      まことに時宜をえた結構なことでありますなぁ。)

           時じけめやも: 時宜を得た

越中、久米広縄の館で催された新年賀宴での一首。
当時正月に笑うことは邪気を払い、繁栄、幸いをもたらすものと
考えられていました。
まさに「笑う門には福来る」です。

ここでの笑いは大口を開けてではなく微笑み。
一同、にこやかに笑みを交わしながら酒杯を傾け、楽しく語らいあっています。

 「あたらしき 年のはじめは 楽しかり
           わがたましひを 養ひゆかむ 」  斎藤茂吉

本年の干支は亥。
「加藤迪男著 干支の話題辞典」によると 

『 「亥」という字はイノシシまたは豚の骨格をたてに書いた象形文字で
  骨組みが出来上がっている意味を持ち、動物では猪があてられている。

  この年生まれの人の一代運勢は忍耐強く、向上心に富み若年期に
  成功する人が多いが、頑固一徹で融通がきかず柔軟性に欠けるため
  折角の成功も保てないことがあるので、晩年の良運を逃がさぬよう
  心がけることが肝要。』なのだそうです。   (東京堂出版より要約)

万葉集での猪は15首、「鹿猪」「鹿」などと表記されており、
すべて「しし」と訓みます。
そのうちの1首、恋歌です。

「 安達太良の嶺(ね)に伏す鹿猪(しし)の ありつつも
     我(あ)れは至らむ 寝処(ねど)な去りそね 」 
                          巻14-3428 作者未詳

( 安達太良山の鹿や猪はいつも決まった寝床に帰って休むという。
 俺もお前のところへ通い続けるから、いつでも共寝できるように
 待っていてくれよな。)

佐々木幸綱著 万葉集東歌によると
「 二人の間に何かトラブルでもあって、女が“もう通ってこないで!”
  などとすねてしまった。
  そんな場面を思い浮かべればこの歌の意味が理解しやすい」(東京新聞出版局)とのこと。

原始性豊かな山麓の中で鹿や猪と一体になって生活している人々の様子が窺われ、
もともとは山野で働く人達が歌った民謡であったようです。

なお、猪は「猪突猛進」「猪武者」などの諺で知られていますが、実際には
どんなに早く走っていても前方に障害物を見つけたり、身辺に危険を感じると
実に見事に停止し、くるりと向きを変える運動神経敏捷で賢い動物です。

雑食性で小動物から木の根、木の実などの植物を広範囲に食するため、
生命力繁殖力が強く、太古の時代から狩猟、家畜の対象として
人と共に生きてきました。

    「 猪の ねに行(ゆく)かたや 明けの月 」 去来

  本年は新天皇即位の年、希望に満ちた明るい時代となりますように。

「 年のはじめの 例(ためし)とて
  終(おわ)りなき世の めでたさを
  松竹(まつたけ)たてて 門(かど)ごとに
  祝う今日こそ たのしけれ 」 
                小学唱歌 (一月一日:いちげつ いちじつ
                        作曲 上 眞行:うえ さねみち
                        作詞  千家 尊富: せんげ たかとみ)

                          例(ためし)とて: 決まりごとの風習


             万葉集717(新年の歌:亥) 完

             次回の更新は1月4日(金)の予定です。

by uqrx74fd | 2019-01-01 00:00 | 生活

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