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万葉集その八百五十九(月の光)

中秋の名月
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唐招提寺観月讃仏会 奈良

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月からの使者 N.F 君撮影
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        たぬきばやし 藤城清二 

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森のこびと   同上 光のメルヘン展 銀座
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月のでんしんばしら 宮沢賢治 同上

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光のプレリュード 同上
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月光の響  同上
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角笛と少年 同上
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3つのオレンジ 同上 展覧会のすべての作品は撮影フリーでした
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万葉集その八百五十八(月の光)


「 渚なる白波見えて 良夜かな 」 高濱虚子


    註: 「良夜」 秋の月がくまなく照らす夜。

いまではもっぱら名月の夜をいう


今日は中秋の名月(921日)。


ドビユッシ-の「月の光」、ベートーベンの「月光」聴きながら

澄み切った夜空を仰ぐ


心地よく響くピアノ。

光を音で表現するとは素晴らしい。


ふと、「万葉人は月の光をどう表現したのだろう」と

歌集を紐解く。


「 水底(みなそこ)の 玉さへ さやに 見つべくも

    照る月夜(つくよ)かも 夜の更けゆけば 」

              巻71082 作者未詳


( 水底の玉まではっきり見られるほどに、清らかに照る月夜

  夜が次第に更けていくにつれて、ますます美しくなってきた )


これは凄い!

月の光が川底の石を宝石のようにキラキラと光らせている

と詠った。

「 お見事、お見事 」


「 我が背子が かざしの萩に 置く露を

    さやかに見よと 月は照るらし 」

                巻102225  作者未詳


( あなた様が挿頭(かざし)にしておられる萩に置く露、

  この露の輝きを はっきり見なさいと、お月様が

  こんなにも明るく照っていますね。)


     さやかに見よと:「明るく清らかだからよく見よ」と

お月様が言っている


恋人と仲睦まじく月見。

いとおしそうに顔をまじまじ眺める。


月の光が愛しい人の顔を照らしている。


あれ!頭の上がキラキラ光って。

あぁ!萩の花の上に置く露だ。


なんという幻想的な場面なのでしょう。


「 月読の 光は清く 照らせれど

惑へる心 思ひあへなくに 」   

4671 作者未詳


( お月様の光は清らかにそそいでいますが、

私のあなたを想う気持ちは千々に乱れる心の闇。

先が見えなくなって、踏ん切りがつきかねているのです )


「 惑へる心 」  恋に分別をなくした私の心

 

「思ひあえなくに」 思いを定めかねている 

「あふ」は 「~出来る」で反語を伴う


月の光に対して心の闇を配した、明と暗の対比、技巧の歌です。


「月読み」とは元々、古事記や日本書紀に登場する夜を支配する神、

月読命(つくよみのみこと)を指すものとされています。


古代の人は刻々と形を変え一定の期間を置いてまた復活する月に

生命の永遠性を感じ、神と崇めていました。


「読む」は「数える」を意味し、月の形で日数を数えることにより

時の推移と潮の満ち欠けを把握していたのです。


「 月読神(つくよみの かみ)にと 供(そな)ふ 小机に

      茹で栗 団子 菊添ふ すすき 」    窪田空穂


         万葉集859(月の光)完


   次回の更新は10月1日(金)の予定です。



by uqrx74fd | 2021-09-22 08:12 | 自然

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